妖精を勘違いしていた
俺は平日の公園でイライラを募らせていた。それも、最悪のイライラだ。この暑い最中、一時間経っても二時間経っても一向に相手が現れないとくれば誰だってこうなる。電話しても呼び出し音が聞こえるだけで酷く虚しくなって仕方がなかった。。
「何だあいつ。バッカじゃねえの?もう知らん、帰ろ」
俺は出口に向かって細い散歩道を歩き始めた。
もう、午後三時を過ぎている。せっかく休みを取ったのに、この時間じゃもう何もする気なんか起きやしない。
「くそっ」
俺は吐き捨てるように言いながら、それでも出来るだけゆっくりと歩いた。途中、何度も何度も振り返りながらね。
30メートル程歩いただろうか。
「助けてください。見逃して下さい〜」という声が聞こえた。
このか細さからすると声の主は若い女性、または、女の子。どちらも余り変わりはなさそうだが、だいたいそんなところだろう。
「えっ?」
俺はそれとなく辺りを見廻した。
流石に平日の昼間だ。それにこの暑さ。人の姿なんてまるで見当たらない。俺は散歩道に沿ったツツジの木から顔を覗かせるようにして下の狭い広場に視線を落とした。するとそこには中学生ぐらいの男子が四人固まって何かしている。一応念の為に再び左右を見たり振り返ったりしたが他に人は見当たらなかった。待ち合わせ場所にも、だ。
するとまた、「やめて下さい」と聞こえた。今度はさっきよりハッキリと聞こえた。
もう、決定だ。怪しいのはあいつら以外に考えられない。どうせ通り道だ。状況を確認して、見過ごし出来ないようなら声を掛けてみよう