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ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー  作者: びーぜろ


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第199話 VS万秋会①

 交番を訪れた米沢は、更屋敷太一が警察に被害届を提出した事を確認すると笑みを浮かべる。

 被害届を出したのが失踪中の更屋敷太一であった為、面倒な事が起こるかと思っていたが、警察に失踪届が出ている訳では無かった様で、意外とスムーズに被害届を出す事ができた。

 誤算があったとすれば、更屋敷太一が警察に対して『高橋翔に暴行・恐喝されました』と伝えなかった事だが、これについては問題ない。

 監視カメラを見れば犯人は一目瞭然。

 更屋敷太一の事を暴行した犯人はすぐに捕まる事だろう。


 そして……。


「……こ、これでいいですか?」

「ええ、被害届を出して頂きありがとうございます。ガード下に荷物置きっぱなしでしたよね? 折角なので、池袋まで送っていきますよ。あ、後、これは少ないですけど心付けです。ホームレス生活は大変でしょう。これで、少しでも美味しい物を食べて下さい」


 そう言って、憔悴しきった顔の更屋敷太一に一万円を握らせると、新橋のガード下に変る新たな住処、池袋駅に来るまで送ると提案する。


「……えっ? いいんですか??」

「ええ、勿論です。暴力団に追われているのでは、電車で移動するのもリスクでしょう? 最後まで責任を持ちますよ」


 臭くて堪らないので、池袋駅まで送りたくないというのが本音だがこればかりは仕方がない。まだ更屋敷太一の居場所がわからなくなる訳にはいかないからだ。

 暴力団に襲われ失踪されても困る。


「それじゃあ、荷物を纏めたら早速、池袋駅に向かいましょう」

「は、はい。ありがとうございます!」


 そう言うと、更屋敷太一は荷物を纏める為、ガード下に駆けて行く。


「ふふっ……」


 高橋翔が警察に捕まるのも時間の問題。

 そして、失踪中の更屋敷太一を発見する事に成功。

 元区議会議員と暴力団との関係を聞き出す事にも成功した。


 スクープだ。これで俺の汚点も濯がれる。

 高橋翔も不利な状況に追い込まれれば、示談に応じる他ないだろう。


「お、お待たせしました」

「ええ、それでは、行きましょうか」

「はい。お願いします」


 荷物を纏めた更屋敷太一をレンタカーの後ろに乗せると、米沢は窓を全開にして饐えた臭いが籠らないよう対策を打つと、池袋に向けてアクセルを踏んだ。


 ◇◆◇


 一方、その頃……。

 高橋翔から狭間俊介と岡田美緒が暴力団関係者である事を聞いた会田絵未は、早速、二人に話を聞きに行き、危機的な状況に陥っていた。


「……これは、何の冗談かしら?」


 目の前には、狭間俊介と岡田美緒が座っている。


「いや、冗談でも何でもないですよ。会田さんの言う通りです。俺達は、矢田と同じ組織に属しています。ねえ、岡田さん?」

「……ええ、この際だからぶっちゃけるけど、私達、この業界に入る少し前から万秋会にはお世話になっているのよ」


 狭間俊介の本職はホスト。そして、岡田美緒はそんな彼の美人局兼キャバ嬢。

 まさか、グループ立上げから所属していた二人が暴力団関係者だとは思いもしなかった。


「なるほどね。気付かなかったわ……」

「そりゃあ、そうでしょう。会田さんが気付かない様、色々と気を付けていましたから」

「そうそう。大変だったのよ? 他の暴力団との付き合いもあるし……。でも、会田さんのお蔭で楽して儲ける事が出来る様になったから、その点だけは感謝しているわ」


 恐らく、宝くじ研究会・ピースメーカーの事を言っているのだろう。

 確かに、ネットワークビジネスへ新たに人を引き込むより遥かに楽な事は確かだ。

 何せ、宝くじを購入しに行くだけで大金が稼げるのだから……。


 そして、この二人は今、私から『宝くじ研究会・ピースメーカー』を奪い取ろうとしている。まあ、私が起こした組織ではないので、いくら私を脅しても仕方がないんだけれども……。とりあえず、これだけは言っておこう。


「……そう。岡田さんが私に感謝しているというのであれば、今すぐにでも解放して欲しい所ね? と、いうよりわかってる? 今時、監禁なんて流行らないわよ?」


 準暴力団・万秋会の構成員に囲まれた状況でそう言うと、構成員達は笑った。


「面白いお嬢さんだなぁ」

「今時、監禁なんて流行らない? そんな事はない。意外と効果的なんだよ。こういった方法は……」

「そうそう。だからさ、宝くじ研究会・ピースメーカーをくれない? 当たりくじをどう見分けているのか、教えてくれるだけでもいい。そうすれば、すぐにでも解放してあげるよ?」


 どうやら、この二人は根本的に誤解しているようだ。

 確かに、表向き宝くじ研究会・ピースメーカーは私が組織している様に見えるかも知れない。しかし、その実態はまったくの逆である。

 命令権は常に高橋翔が持っており、私はそのサポートを行っているだけ。

 つまり、私はただの雑用係だ。宝くじ研究会・ピースメーカーをどうこうする権利なんか持っていない。

 仮に持っていた所で無意味だ。普通に宝くじを購入するだけの組織なんてすぐに破綻する。この組織のトップに高橋翔が存在する。その事が何よりも重要なのである。


 宝くじ研究会・ピースメーカーに加入する際、二人にはそう説明したつもりだったのだけど……。


 恐らく、宝くじ研究会・ピースメーカーという組織を動かしている私の姿。

 そして、それに伴う当選金の分配を私がやっているから誤解が生まれてしまったのだろう。

 私が行っている業務をこの二人が代わりにやってくれるなら、中間管理職みたいなこの立場、喜んで渡すのに……。

 そうすれば、あなた達に絡まれるような、そんな事にはならなかった。

 しかし、暴力団が絡んでいる以上、そんな事を言っても無駄だろう。

 と、いうより、暴力団排除条項が施行された今、まさか、こうも短絡的な行動を取るとは思ってもみなかった。


 まあ、驚異的な当選率を誇り、購入するだけで億単位の配当を受ける事が出来る。しかも、すべて宝くじの当選金なので非課税となれば、暴力団でなくても目を付けるか……。


 私は眉間に手を当てると考え込む。


 この場合、どう対応するのが正解なのだろうか?

 別に私に権利なんてあってない様なものだし、『私の立場で良ければ、喜んで譲ります』と言ってもいいけど、後が怖い。

 何せ、有名無実なのだ。


 歌が上手いと知名度がある歌手なのにも係らず、いざ生で歌声を聞いたら観客の殆どが失望したとか、実力があると噂で紹介されたから採用したのに実は何の知識も無かったみたいな例文と同じ位に有名無実。

 つまり、名ばかりなのである。


 恐らく、暴力団に『宝くじ研究会・ピースメーカー』という組織が渡ってしまった場合、高橋翔はすぐにでも脱退する。

 正直な所、彼が進んでこの組織運営をしている様には見えない。

 何となく、私達にそう説明してしまったから、とりあえず、そんな組織を作りましたと、最近、そんな気がしてならないのだ。


 確証もある。

 何故なら現在『宝くじ研究会・ピースメーカー』に所属しているのは、私の傘下にいたネットワークビジネスグループが殆ど……。

 一番初めに私にした説明とかなりの部分で食い違いがある。


 しかし、この状況でそんな事を言っても多分、意味がない。

『宝くじ研究会・ピースメーカー』を乗っ取る目的で私を監禁する位だ。

 もしかしたら、後先の事など考えていないのかも知れない。


「……会田さん。あなたはただ頷くだけでいいんです。それだけで、元の生活に戻る事ができますよ。それで、返事を聞かせて貰えますか?」

「そうね。それじゃあ……」


 そう呟くと、私は決意を固めた。


 ◇◆◇


「――はっ? 会田さんが行方不明??」


 矢田牧夫を準暴力団・万秋会から正式脱退させる為、警察署に向かわせ、その帰り道、ホームレスとなった更屋敷太一にちょっかいを出していた記者を撃退した翌日。俺の下に、一本の電話がかかってきた。


 電話の内容は、俺の代わりに宝くじ研究会・ピースメーカーを仕切っている会田さんが行方不明になってしまったというもの。電話を掛けてきたのは、狭間俊介だった。


 狭間俊介と言えば、矢田牧夫が暴力団関係者と言っていた内の一人。

 と、いうより、何故、こいつは俺の電話番号を知っているのだろうか?

 俺の電話番号を知るのは、宝くじ研究会・ピースメーカーの中では会田さん位のもの。それ以外の会員には教えていない。


『――はい。そうなんですよ。会田さんに話があると言われて家に向かったら、居なくて……。何か知りませんか? 連絡が取れなくて……』


 いや、そんなの知る訳ないだろう。

 とはいえ、心当たりがない訳ではない。

 矢田牧夫から狭間俊介と岡田美緒が暴力団関係者であると知った直後の失踪。

 間違いなく暴力団が絡んでいる(気がする)。


 と、いうより……犯人はお前じゃね? とすら考えている。


「何も知らないけど……っていうか、狭間さんさ、何で、俺のスマホの番号知ってんの? 会田さん以外の誰にも教えてないんだけど??」


 そう問いかけると、狭間俊介は動揺したのか、少し上擦った声を上げる。


『い、いや、会田さんが教えてくれたっていうか……。ま、まあ、その話はいいじゃないですか! そんな事より、会田さんを探さないと……』

「それもそうだな……」


 狭間俊介と岡田美緒が暴力団関係者である事を伝えたのは俺だ。

 会田さんが自分で説得すると言っていたとはいえ、それが原因で失踪したとあれば、流石に放っておくのは夢見が悪い。


「それじゃあ、警察には俺の方から捜索願を出しておくから狭間さんと岡田さんは……」


『警察に失踪当時の事情を説明しておいて』と言おうとすると、狭間俊介が俺の話に割り込んでくる。


『ち、ちょっと待った。一時的に連絡が取れなくなっているだけかも知れないし、警察に捜索願を出すのは時期尚早じゃないかな?』


――はっ? 何言ってんだコイツ??


「えっ? そうかな? だって、会田さんと連絡が取れなくなっちゃったんだよね? 

 だったら時期尚早って事はないんじゃない?」


 時期尚早って……こういうのは初動が大事だろ。

 普通、反対するか?

 こいつ等、もしかして本当に会田さんの事を……。


『と、とりあえず、一度会って話をしませんか? 会田さんについて知っている情報を共有しましょう!』

「うん? まあ、そこまで言うなら別にいいけど……」

『そ、そうですかっ! それじゃあ、一時間後、新橋駅の西口で待ち合わせをしましょう』

「ああ、わかった」


 狭間は伝えたい事だけを伝えると、そのまま電話を切った。


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 2022年12月26日AM7時更新となります。

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