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ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー  作者: びーぜろ


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第170話 ゴミ捨て場となった王城

「あらー、凄い事になってんな……」


 民衆達が皆、暴徒になってしまった。

 マジで国そのものが終わってしまいそうな勢いである。

 いや、もう終わったも同然だろう。

 一応、国王により先に出された御布令は撤回されたものの、暴徒化した民衆の怒りは収まらない。

 当然だ。この御布令が原因で夜逃げしてしまった事業者は戻ってこない。

 職を追われた人達も沢山いる。


 王城の正門に大きく書かれた『ゴミ捨て場』の五文字。


 汚物で書かれた文字とあって、民衆の怒りの度合いがよくわかる。

 とはいえ、丁度良い。

 一応、俺の方でも、土地を確保し、ゴミ処理場を用意しておいたが、必要なさそうだ。なによりゴミ処理の手間が省ける。何せ、このゴミ捨て場に放り捨てるだけで良いのだから。

 折角だ。王城がゴミ置き場の役割を果たしてくれるのなら、貴族領を除く国中のゴミと汚物は俺の方でなんとかしよう。

 これ以上のゴミの放置は本気でヤバイ。

 俺自身、なんだかスカッとしたし、暴動を起こしてくれた民衆へ俺からのささやかなお礼だ。勿論、ゴミはゴミ捨て場(王城)に捨てる予定である。


 しかし、よくやったものだ。

 暴徒に王城前を鎮圧された揚句、王城にゴミを投げ入れられたとあっては国のメンツ丸潰れ。これだけ手酷くやられれば、当分の間、静かになるだろう。

 ゴミ・排泄物処理場は依然として壊れたままだし、色々と問題は山積みのまま放置されている訳だけど、その点は俺がフォローすればいい。


 国の税収をも上回る莫大なゲーム内通貨があればそれも可能だ。

 まったく、マイルーム様様である。


「……それじゃあ、後の事は頼んだよ」

「はい。カケル様」


 俺が片手を軽く上げると、俺の下で働く従業員が頷く。

 彼等の役目は、暴動を鎮圧しようとする兵士達から民衆を守る事。

 配下である元兵士・元低ランク冒険者に掛かれば容易い。


「それじゃあ、セントラル王国中の大掃除をしようか。勿論、貴族領は除いてね。今日の夜中に実行するから皆にも伝えておいて……ああ、当分の間、回収したゴミと汚物はすべて王城に送りつけておくように」

「はい。すぐに手配致します」


 俺の言葉に静かに頷く微睡の宿の支配人。

 セントラル王国中のゴミ・汚物の回収と言っても、やる事はとても簡単だ。


「ああ、あとエレメンタルの力を借りるのだから、毎日、ペロペロザウルスのTKGを満足するまで食べさせて上げるんだぞ」


 そう。エレメンタルの力を借りるのである。

 セントラル王国中に設けた拠点。その近くに、ゴミ処理場と銘打った建物を用意してある。ゴミ処理場と言っても、中身は何もないただのデカい箱物だ。

 その箱物にゴミと汚物を回収し、エレメンタルの力を借りて消して貰う。


 最初は、火の精霊そして風の精霊辺りに任せようかと思ったが、それだと環境に対する影響が甚大である事に気付き止めておいた。

 代わりに用意したのが、『確定エレメンタル獲得チケット』により新たに獲得した影の精霊・シャドーによる影の世界へのゴミ投棄だ。

 シャドーにより、建物内にあるゴミすべてを影の世界に引きずり込むだけのお手軽な手段である。

 この影の精霊・シャドーを獲得した配下五十人を各拠点に配置し、彼等にゴミ掃除を任せる事にした。なに、シャドーに掛かれば、国中のゴミなんて一瞬で影の世界に沈める事ができる。

 明日の朝が明ければ、民衆の暮らしは元通りだ。


 後は、そのゴミをすべて王城に解放するだけ。

 王城は、東京ドーム十個分の面積を誇る。

 ゴミを収容するのに十分な広さがあると考えて良いだろう。


 そのゴミをどうするかは、王城に住む上級国民の方々に任せるさ。


「しかし、十万人以上の人を雇うと色んな事ができるな……」


 なんでも俺の思う通りに動いてくれる。

 やはり金の力は偉大だ。


「もう少しこの状態が維持できるよう真剣に経営について考えて見ようかな……」


 如何に納める税金を少なくするか。それに主軸を置き、経営に専念する事にしよう。

 まあ殆ど、支配人に丸投げになるかも知れないけど……。


 そう呟くと、俺はゴミと汚物に塗れた王城を後にした。


 ◇◆◇


 セントラル王国の王城の一角にある王の間。

 その室内において、この国の国王であるガルズ・セントラルは頭を抱えていた。


「どうすれば良いのだ……。私はどうしたらいいっ!」


 相当不満が溜まっていたのだろう。

 御布令により暴徒と化した民衆の力は凄まじかった。

 兵士による暴徒鎮圧を跳ね除け、徴税に向かった徴税官を捕縛し、汚物塗れにして突き返してきたのだ。

 暴徒と化した民衆の怒りはそれだけに留まらなかった。


 なんと、権威ある王城に大量のゴミを不法投棄したのだ。

 その不法投棄は今も続いており、決まって夜になるとどこからともなくゴミが降ってくる。


 兵士不足が災いし、武力による民衆鎮圧もできていない。

 セントラル王国は今、完全な統治不全に陥っていた。


「カティ宰相。どうしたら……私はどうしたらいい? あの御布令は撤回した。にも拘らず、民衆の暴動は止まらないっ! 私は……私は一体、何をすればいいっ!?」


 宰相であるカティ・アドバンスドに相談を持ちかけるガルズ王。

 完全に相談をする相手を間違えているが、ガルズ王はそれに気付かない。

 カティ宰相は顔を強張らせながら進言する。


「こ、こうなれば、貴族に協力を求める他、無いかと……。貴族の養う私兵に協力を仰ぎ、暴動を起こした民衆を鎮圧する他、ありません」

「貴族にか? しかし、奴等は協力してくれるだろうか?」


 既に貴族には、多くの特権が与えられている。

 この様な状況に追いやられた我々に対し、ただで協力してくれるとは到底思えない。


「当然です。王政が無くなり困るのは貴族達そのものではありませんか」

「そ、それもそうだな。では、早速、非常時用の通路から使いの者を走らせよう」


 しかし、この時、ガルズ王やカティ宰相は失念していた。

 先の御布令で貴族も強制徴収の対象とした事を……。

 特権階級にいるにも拘らず、貴族に何の相談もなく勝手に強制徴収しようとした事を、すっかり失念していたのだった。


 ◇◆◇


 民衆が暴動を起こした翌日。

 俺は外に出て胸一杯に空気を吸い込む。


「ふぅー」


 青い空。白い雲。ゴミや汚物のない道路。

 気持ちの良い朝だ。ゴミと汚物の臭いがしない朝なんていつ振りだろうか。

 これだけ綺麗になった王都の姿を見ると、影の精霊・シャドーにゴミと汚物を王城(ゴミ処理場)に移して貰った甲斐があるというものだ。


「支配人。朝食にペロペロザウルスのTKGを百人前用意しておいて」

「はい。承知しました」


 素晴らしい。

 最近、人を多数雇い入れたからか、大抵の事はお願いすれば何でも叶えてくれる。

 これが多くの人間を雇い入れている大企業の社長の気分か……。

 中々、良いな。

 株主や銀行のご機嫌取りや、別に赤字になったとしても何も言われない。

 プレッシャーをかけられない所が特にいい。別に俺としては赤字でもまったく構わないのだ。

 この王政(税制)が続く限り、税金を支払う必要もないし、名目奴隷と冒険者を使っている俺から取れる税金もない。


 それなりに稼いでくれて、適度に掛った費用を賄ってくれればそれでいい。

 まあ、冒険者協会に支払う事で間接的に税金を支払う事になるかも知れないが、それはそれだ。


 うん?

 と、なるとアレだな。現王政に倒れられるのは困るな……。非常に困る。

 しかし、どうしよう。

 もう、この国。何だか終わっちゃいそうな勢いだし……。


 すると、突然、天啓が降りてくる。


 そうだ。契約書で王様とその側近すべてを縛ってしまえばいいのだと……。


 凄い事に気付いてしまった。諮らずとも、今の俺ならそれができてしまう。


 ……いや、いけないな。これは欲だ。それもとんでもない強欲だ。

 国を裏から支配しようだなんて……。

 とはいえ、この国の上層部は何を仕出かすかわかったものではない。

 とりあえず、一つの案として抱えて置く事にしよう。

 必要になったらそうすればいい。


 まあ、あれだけ酷い目に遭ったんだ。

 流石に変な事はしないだろ。


 そんな事を考えていると、支配人がペロペロザウルスのTKGを百人前持ってきてくれた。


「お待たせ致しました。ペロペロザウルスのTKG。百人前にございます」

「ああ、ありがとう」


 支配人がテーブルにペロペロザウルスのTKGを置くと、エレメンタル達がTKGに群がっていく。


 色をピカピカと変えて喜ぶエレメンタル達。

 そんなエレメンタル達に微笑ましい視線を向けると、テーブルに百人前のTKGが並べられた事を確認して告げる。


「食べていいよ。これからも、よろしく。エレメンタル。他にも、食べて見たい物があったらなんなりと言ってくれ。おっと、言葉はわからないからメニュー表を指差してくれると嬉しいな」


 そう言ってすぐ、ペロペロザウルスのTKGに群がるエレメンタル達。

 尊い。非常に尊いぞ、エレメンタル。


 すると、火の精霊サラマンダーが、メニュー表のデザートを指差した。


「ティラミスとモンブラン、苺のショートケーキをエレメンタル様はお望みだっ! すぐに百人前持ってきてくれ」


 丁度、そのデザートは、現実世界から仕入れてきたばかりのデザートだ。

 エレメンタルが所望するなら、提供する事にまったく問題はない。


「はい。承知致しました」

「……支配人には、いつも迷惑をかけるな」


 そう言うと、俺は支配人の手に臨時ボーナスとして、百万コルを手渡す。

 そして支配人は百万コルをアイテムストレージにしまうと、恭しく頭を下げた。


「こちらこそ、末永くよろしくお願い致します」

「ああ、こちらこそ、よろしく頼む」

「はい。それでは……」


 そう言って、バックヤードに下がっていく支配人を見て、俺は思った。

 自分の事を真に心配してくれる人のありがたさを……。


「やっぱり、大事だな……」


 俺には、決して打ち明ける事のできない隠し事が多い。

 それを察してくれる人物はとても希少だ。


 普通、エレメンタル達をホストにペロペロザウルスのTKGで持て成すなんて事をする人も少ない。

 ペロペロザウルスのTKGを美味しく食べていくエレメンタル達。

 俺は、そんなエレメンタル達に対し、なんの不満も見せず配膳する支配人を見てそう思った。


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 2022年10月30日AM7時更新となります。

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