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ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー  作者: びーぜろ


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第137話 嵌められた『ああああ』達①

 ちょっとした行き違いで司祭から助祭に降格処分が降されてしまったユルバン助祭の借金を帳消しにした俺は次に冒険者協会に向かう事にした。


 ミズガルズ聖国にある上級ダンジョン『アイスアビス』が攻略されたのであれば、冒険者協会側に動きがあってもおかしくないと考えたからだ。


「しかし、生臭助祭には悪い事をしたな……」


 まさか、ミズガルズ聖国の司教自らこの国に赴き、生臭助祭に降格処分を降すとは思いもしなかった。

 まあ、ユルバン助祭は常日頃からキャバクラに通っていた様だし?

 いずれこうなるとは思っていたけど……。


『おい、聞いたか? 冒険者協会で緊急依頼の要請があったみたいだぞ』

『なにっ? 緊急依頼?』


 そんな事を考えながら歩いていると、冒険者と思わしき風貌の男達が交わしている声が聞こえてきた。


『ああ、どうやら国から冒険者協会に要請があったみたいだ。何でも隣国と共同で上級ダンジョンの攻略をする事になったらしい』


 なるほど……。

 この国の上級ダンジョン『デザートクレードル』は部下が攻略し、ミズガルズ聖国の『アイスアビス』はユルバン助祭が攻略している。

 となると、残りはリージョン帝国の上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』を攻略するのみ、そしてその『ドラゴンクレイ』を攻略すれば、特別ダンジョン『ユミル』が現れ、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に向かう為の道が開かれる。


 元々、国は冒険者協会、そして、転移組や冷蔵庫組とタッグを組み上級ダンジョン攻略に当たっていた。

 しかし、転移組や冷蔵庫組があまりに不甲斐なく、思う様に攻略が進まない事から、転移組や冷蔵庫組以外の冒険者にも協力を募る事にした様だ。


 しかし、不思議だ……。

 隣国のリージョン帝国とこの国はそこまで仲が良くなかった筈なんだけど……。


「まあいいか……」


 国が積極的に上級ダンジョン攻略に勤しみ、新しい世界を解放してくれるというのであれば、万々歳だ。

 別に、一番最初に新しい世界に踏み込みたいと思った事もないし、俺としては全然後で構わない。

 ぶっちゃけ、何が起こるかわからないしね。

 ゲームが現実化した以上、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』にも人?が住んでいるだろうし、ちゃんとコミュニケーションできるかどうかもわからない。

 安全性についても疑問がある。

 その危険な役割すべてを国と冒険者協会がやってくれるというならそれが一番だ。


「さてと……」


 いい事も聞けたし、冒険者協会に回復薬を納品してさっさと帰るか……。

 月に一度、冒険者協会に回復薬を売り渡し、元の世界でぐーたらしていれば、その内攻略も終わるだろ……。


「――と、まあ、そんな甘い考えを持っていた時もありました」


 三週間後、様子を見る為、冒険者協会に足を運ぶと、そこはまるで野戦病院の様になっていた……。


 ――そして俺は、そこでひたすら回復薬の供給をしていた。


「――いや、なんでだよっ!」


 おかしいだろ!

 えっ? 何でこんな事になってんの?

 お前等、リージョン帝国の上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』の攻略に行ったんじゃなかったのっ!?


 ケガ人の多くは、緊急依頼に応じた冒険者で、転移組や冷蔵庫組の連中は誰もいない。これはもうアレだろう。百パーセントあれだ。


 ――転移組と冷蔵庫組の連中、国と冒険者協会が緊急依頼で集めた冒険者達を物理的に排除しやがったぁぁぁぁ!


 ……いや、まあ、そうなるだろうなとは感じていた。


 だってそうだよね。先に『上級ダンジョンを攻略するぜ!』って、国や冒険者協会と結託して意気込んでいた奴らが軒並み先を越されているんだもん。

 あいつ等、馬鹿だから焦ってそんな行動にも出るわっ!


 しかし、やってくれたな……。

 まさか、リージョン帝国の上級ダンジョンに挑戦する前に排除するとは……。

 俺の計画が……楽して新しい世界に行くという計画が完全にパーになってしまった。

 正直、転移組と冷蔵庫組の連中には何の期待もしていない。

 パチスロ『海物語』のマリンちゃんリーチ(通常)並みの期待度だ。


 そういえば、俺の部下達の姿が見えないけど、あいつ等は一体何をやっているんだろ?


 あいつ等の動向が急に気になった俺は、近くの受付嬢に話しかける。


「すいません。ちょっとお聞きしたいのですが、『ああああ』とか『かかかか』みたいな変な名前の冒険者達の事を知りませんか?」

「えっ? 『ああああ』様に『かかかか』様のみたいな変な名前の冒険者達……ですか?」

「はい。そうです」


 冗談のような名前だが、ゲーム世界において、このふざけた名前があいつ等の本名だ。真剣な表情でそう尋ねると、受付嬢が端末を操作し、調べ始める。


「えっと、お探しの『ああああ』様に『かかかか』様達ですが……兵士に逮捕され収監されている様です」

「はあっ!?」


 な、何、あいつ等逮捕されちゃったのっ!?

 収容されちゃったのっ!?


「ど、どうやら、キャバクラとホストクラブで無銭飲食してしまったらしく。通報され、逮捕という運びになったようでして……」

「な、なっ……」


 ――何やってんのぉぉぉぉ! あいつ等っ!


 キャバクラとホストクラブで無銭飲食とか馬鹿なの? 阿呆なの!?

 それとも脳みそがスカスカだったりするのっ!?

 普通、そんな所に無銭でいかねーだろっ!


「補足ですが、当人達は犯行を否認している様です。なんでも冷蔵庫組と転移組に騙されたとか、乗せられたと釈明しているみたいでして……」

「あ、あいつ等……」


 冷蔵庫組と転移組の連中、腕っぷしでは(部下共に)敵わないと見て、騙して牢屋にぶち込みやがったよっ!


「え、えっと、何とか出して上げる事はできないんですか?」


 俺がそう尋ねると、受付嬢は困った表情を浮かべる。


「そうですね……。被害者であるキャバクラとホストクラブは、利用料金さえ払ってくれるのであれば、被害を取り下げてもいいと言っているそうですが……」

「……えっ? 金で何とかなるんですか?」

「は、はい……被害金額を取り返すにも手続きと時間が必要となりますから……」

「な、なるほど……」


 中々、シビアな現実だ。

 まあ、あいつ等、呪いの装備で強くなってるけど、金はないからな……。


「もし、彼等の釈放をお望みであれば、お急ぎになった方がよろしいかと……」

「えっ? どういう事ですか?」

「はい。彼等が逮捕されてから既に二日が経過しております。そろそろ、借金奴隷として売りに出される頃かと、なんでも借金が返せず奴隷となる場合、冷蔵庫組と転移組が彼等全員を引き取る事になっていまして……」

「はっ……はあっ!?」


 な、なんだとっ……!

 それは大変だ。しかし、マフィア崩れの冷蔵庫組と転移組にあいつ等を渡す訳にはいかない。

 そんな事をされれば、折角、俺が手塩をかけて育てたのに台無しだ。


 まあ、契約書の効果(未来永劫俺に稼いだ金額の一割を払い込み続ける)から逃れる事はできなし、ほっといてもいんだけど、借金奴隷として冷蔵庫組や転移組の下についてしまえば、絶対に稼ぎは少なくなる。


「えっと、その手続きはどこですればいいんですか?」

「い、一応、ここでも手続きを受け付けていますが……本当によろしいのですか? かなりの大金ですよ?」

「はい。大丈夫です!」


 絶対にあいつ等から取り返すんで!


「そ、そうですか……それで借金の肩代わりをするのは、キャバクラとホストクラブで無銭飲食をしたこの四十六名でよろしかったでしょうか?」


 受付嬢さんがタブレット端末を置くと、氏名を確認するよう求めてくる。


「はい。この四十六名で問題ありません」


 俺がそう言って頷くと、そのままタブレットに料金を表示させた。


「それでは、四十六人分の無銭飲食代として一億コルの支払いをお願いします」

「ぶふぉあっ!?」


 い、一億コルゥゥゥゥ!?

 教会が一棟建つレベルの金額じゃねーかっ!

 何やってんのっ!? 本当に何やってんのあいつ等っ??

 どんだけ飲んで騒いだらそんな金額散財できるのっ!?


「ふっ、ふざけんじゃねぇぇぇぇ!」

「ひっ、ひぃぃぃぃ! すいません! それじゃあ、支払するのを止めますかっ!?」

「あ、すいません。今のはあなたに言ったんじゃなくて、ここまで借金を積み上げたあの馬鹿共に言ったんです。怖い思いをさせてごめんなさい」


 あまりにふざけた金額にちょっと大きな声が出てしまった。

 受付嬢さんに謝罪すると、アイテムストレージから一億コルを取り出しテーブルに並べていく。


「――それでは、一億コルをお渡ししますので、金額の確認をお願いします」

「は、はい」


 テーブルに並べられた一億コルを必死になって数える受付嬢。

 冒険者協会の受付でそんな事をしたからか、他の冒険者達の視線が痛い。


 そんな視線にめげず、受付嬢さんが一億コルを数え終わるのを待っていると、視界の端に、冒険者が慌てた表情を浮かべ冒険者協会から出て行く姿が目に映る。


「うん? あれは……」


 もしかして、転移組の副リーダー、ルートの部下か何かか?

 それとも、冷蔵庫組の部下か何かか……。

 しまったな……。


 冒険者協会に広がる冒険者達の阿鼻叫喚。

 そして、それをやったであろう主犯格の冷蔵庫組と転移組。

 そんな連中がまさか冒険者協会にいるとは思いもしなかった。

 これはちょっと、拙いかもしれない。


 こんな事なら、会議室か応接室を開けて貰い、そこで一億コルの受け渡しを行えば良かった。しかし、今更もうどうしようもない。


「はい。確かに一億コルを受領致しました。こちらが受領証となります」

「ああ、ありがとう」


 受領証をじっくり見て間違いがない事を確認すると、俺はそれをアイテムストレージにしまう。


「それで、俺はこれからどうすればいい? あいつ等を迎えに行けばいいのか?」

「はい。私から通信用のアイテムで連絡をしておきますので、カケル様は釈放された冒険者達の迎えをお願いします。こちらがその場所です」

「ああ、わかった。ありがとう」


 受付嬢から貰った地図を見てみると、部下達の収容場所は俺が経営する宿の近くみたいだ。

 丁度いい。早速、あの馬鹿共の所に向かうとするか……。


 そう言って、外に足を向けると俺は馬鹿共の待つ収容所へと向かう事にした。


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 2022年8月25日AM7時更新となります。

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