『あと30人』
100人まで、あと30人…
時間がかかると思ったが、思いの外バカが多くて助かる。
このペースなら、今度の連休中に達成できる。
妹をバンパイアにするのに、あと30人
アイツに食事を届けるのに、あと30人
ことの発端は、俺の妹に対する暴力だった。
両親とも医師で、俺も医師を目指していた。
勉強は苦手だったが、なんとか両親の思いに報いるために努力した。
しかし、俺は医師試験に2度落ちてしまった。
プレッシャーが襲いかかる。
その捌け口を妹に暴力という形で発散させていた。
妹は、何も言わずに ただ黙って耐えていた。
ある日、気が立っていた俺は、いつも以上に妹に暴力をふるい、突き飛ばした。
ドカ、ガタン! 勢いよく倒れた先に大型のテレビラックに妹は頭を打ち付けた。
「おい!起きろ!芝居なんてやめろ!いつもの事だろ!」
しかし、妹は起きなかった。
俺は、その場に座り込み ただ妹を見ていた。
直に母親が帰ってきた。
…何を言っているのか まったく聞こえなかった。
母親は、電話をかけると妹を連れてどこかへ行ってしまった。
何時間かたっただろうか、両親が戻ってきた。
妹は意識不明の重体で、もしかしたら ずっと目を覚まさないかもしれないとのことだった。
世間体を恐れた両親は、自分たちの病院のスタッフに金を渡し妹の事を黙っているように伝えたのだと言う。
俺は?
普段通りに勉強に励めとの事だった。
あー、愛されていないと思った俺は、その場で両親を動けなくした。
あんなに、プレッシャーを感じていて、絶対的な存在に両親が簡単に動けなくなるなんて…
「素晴らしい!」
俺は、ビックリして声の方向に顔を向けた。
27階のベランダの窓に 見知らぬ人らしき姿をしたモノがいた。
「まったく、素晴らしい。いいよ。その自己中心的な暴力」
「な、なんだ!お前は?」
「ん?通りすがりのバンパイアだ。窓が開いていて血の匂いと混沌の渦が見えたのでな…」
バンパイア? 頭おかしいのか?
そう言おうと思った時、彼?彼女?の瞳は、真実を語っていた。
「入ってもいいかい?」
「ど、どうぞ…」
「ありがとう。君のその、混沌を教えてくれないか?」
俺は、バンパイアと言うモノに俺の混沌となるものを話した。
「ふーん。思っていたより普通だね。」
「な、何だって!」
「君は、僕に話してしまったことと、家族が動かなくなってしまったことで安堵して薄くなったかな…いや、まだあるね。紺碧の奥底にある混沌が。」
「……………」
「…そうか、それが君の混沌だね。大丈夫、僕なら君の願いを叶えられるよ。…でも。」
「でも?」
「普通に叶えるだけじゃつまらない。…そうだな。僕に食事を提供して。」
「食事…血?」
「血も、いいけど、100人分ね。肉でも、いいよ。僕は大食いなんだ。」
「100人生け贄にしろと?」
「そうだよ。それで、君の願いが叶うのだから簡単でしょ? あ、そうだ。サービスで 今動けなくなっている両親を入れてあげるよ。これで、あと98人だね。100人食べさせてくれたら、望み通り君の妹を僕の仲間バンパイアにしてあげるよ。ははは。」
そう言うと、アイツは両親を貪り床に落ちた血の一滴さえも体内に取り込んでしまった。
今思い出しても、吐き気がする。
「どうしたんだい? ボケッとして、今日の食事は、まだ?」
「あぁ、ゴメン。もうじき、来るよ。今日のメインディッシュ」
ピンポーン
ほら、来た。
バカなヤツだ。少し、医者の知識とこのマンションで一人暮らしをしてるとSNSで上げれば、神待ちの子や、金欲しさですぐに ひょいひょい来やがる。
待っていろよ。俺が必ず眠りから覚まさせてやるからな。
そして、お前の最初の食事が俺だ…
俺がお前を叩いている時の その俺を哀れみる目が大嫌いだったんだ。
読んで頂き誠にありがとうございます。
今日のTwitterトレンド『あと30人』と『バンパイア』です。
最近、トレンドを選ぶのが大変ですw
それでは、またお会いいたしましょう。m(._.)m