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転生魔王と転生勇者の冒険録  作者: 文月(フミヅキ)
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第九話:新しい武器

 

「ルナ、あんまり騒動になるようなことは……」


「わかってるわよ。だから穏便に吹っ飛ばすだけね」


「それが穏便じゃないんだが……」


 魔人族と人族は常識が違うのだろうか。いや、あそこまで言い寄られて何もするなというのも酷か。


「いいのよ。どうせこの街からはすぐ出るんだし」


「それも、そうだな」


 多少のいざこざは数日経てばなかったことになっているだろう。それが冒険者という生き物だからな。


「次は武器屋か、良い剣があればいいんだが」


「そうね」


 そろそろ買い替えたいと思っていた剣。ルナに頼めば魔道具作成の能力で魔法剣にしてくれるだろう。そういう意味でも楽しみだ。


 武器屋に着いた俺たちは一通り剣を見るが、特にこれと言ったものはなかった。今の俺の剣よりは質がいいのだが、己の命を預けるものと考えると購入は少し躊躇われたのだ。


「すまない。武器はここにあるものですべてか?」


 俺は武器屋の主人に尋ねる。もしかしたら聞けばいいものが眠っているかもしれない。ちなみにルナは魔法専用の武器や防具を見ているのでここにはいない。


「少し値が張るが、良い剣はある。ただそれは売れ残りでな……」


 どうやら当てはあったらしい。だが良い剣が売れ残るとはどういうことだろう。業物が高いのは当然のことだ。多少高くてもいい剣が欲しい者はいくらでもいるだろうに。

 奥に引っ込んだ武器屋の主人が横長の木の箱を抱えて戻ってくる。慎重に保管していることから随分な物のようだ。


「これだ。刀という武器でな」


「ああ、なるほど……」


 刀という武器は初見で、だからこそ珍しい武器なんだろう。俺もそうだが、使い慣れた武器を変えてわざわざ珍しい武器にする理由もない。使い慣れるまでは時間が掛かるし、自分に合っているかもわからない。危険を冒して武器を変える冒険者は居なかったということだ。


 その刀は少し沿った刀身に美しい波紋を描いていた。これは相当な技量の人物が鍛えた業物だろうな。


「値は十万グレス。このレベルの業物にしては安いほうだが、どうだ?」


 俺は少し悩む。先ほどの通り、武器を変えるとなると相応の危険がある。だがこれから強くなる俺にとって武器を変えるなら今だ。片手剣の剣術を刀に応用できるかだが……。


「済まないが、少し試し切りさせてもらっても?」


「もちろん。こっちに専用の場所がある」


 一度試してから購入するかどうかは決めることにした。


 連れられてやってきたのは鍛冶場のすぐ横にある裏庭のような場所。ここで試し切りさせてもらえるのだろう。

 店主から刀を受けとり、鞘から抜く。


「おぉ……思ったより手に馴染むな」


 今のところ、俺に合った武器のように感じる。それも長年付き合っていた片手剣以上のものだ。

 早速、的に向かって剣を振ってみた。すると想像以上に斬れる斬れる。……これは決まりだな。


「決めた。これにしよう」


「……いいの?」


 するとルナが急に声を掛けて来る。どうやらこっそり俺の後を付けてきたようだ。ルナの心配は急に武器を変えて問題ないかというところらしい。

 少し驚いたが平静を装って俺は答えた。


「……ああ、今の俺は片手剣でも十分に扱えるわけではないからな。どちらにしろ技術が変わらない程度なら気に入った上に業物の刀を使う方がいいだろう」


「そういうことね。なら私は何も言わないわ」


「と、いうことだ。これを購入するということで頼む」


「まいどあり。じゃあ戻るからついてきてくれや」


 店主はこれまで売れなかった在庫が売れて機嫌がいいようだ。俺たちは店主についていき、支払いを終えて俺が借りている宿に行くことにした。


「これがソルの宿ね」


「まあ、そうだ。適当に座っててくれ」


 これから旅をするにおいて必要な物がいくつかある。冒険者を始めてから二年間、王都から

 離れることは少なかったため、買うものもいくつかあるな。


「買って早速だけど、今暇だから刀に魔法付与してもいいかしら」


「いいぞ。ほら」


 鞘に入っている刀をルナに受け渡し、俺は荷物整理に集中する。するとルナから淡い紫色の光が発せられていた。刀に付与する魔法付与は既に相談して決まっている。武器の質によって付与できる数が変わるらしいが、無難な物を選んでもらった。


 一つ目が自動修復。武器や防具の傷を時間経過によって回復してくれる。

 二つ目が斬れ味強化。効果はそのままで斬れないものが斬れるようになる。

 三つ目が属性付与。使用者の技量によって魔法属性を付与できる。


 この三つが今回魔道具作成によって付与してもらう効果だ。三つ目は今の俺では使いこなせるわけはないが、旅の道中でルナに魔法を教えてもらうことで習得しようと思う。

 もう俺は昨日までの俺とは違うわけだしな……。


 剣を握れば以前より手に馴染み、発動が不完全だった風魔法も射出できるようになった。ギフトとはこういうものだ。階位が高ければ高いほど人並み外れた力に近づく。


 ……どうやらルナの魔法付与が終わったようだ。それと同時に俺の荷物整理も終わったので今日のところは宿でくつろぐことにする。


「どうだった?」


 どう、とはルナが行った魔法付与についてだ。


「成功よ。問題なく三つの魔法付与が出来たわ。まだあと七つも効果を付けることが出来るのが驚いたけど……」


「そんなにか……いい買い物をしたな」


「本当にね」


 本来なら付けられる魔法付与は最低で三つ。質が良いほどその数は増えるというが、よっぽどだったのだろう。ちなみに俺が使っていた剣に着けることが出来るのは四つだ。

 しかしそれなら斬れ味強化は当分使わないかもな。


「ルナは今日何か買ったのか?」


「特に何も。借りたお金で好き勝手するほど常識知らずではないわ」


「それは俺がルナにあげた金なんだが……」


 ルナは魔人族として暮らしていたので人族の金をもっていない。よって俺がルナに金を渡し、それをルナのものにしたつもりだったのだが。


「同じことよ。お金を貰ったという借りがあるわ。だから変な使い方は極力避けているわけ」


「ルナがそれでいいならそれでいいんだが……」


 どうにも譲れない一線があるようだ。


「それで……明日からどうするの?」


 ルナが尋ねているのは旅の方針についてだ。ルナの最終目標は恐らく邪神への報復だろう。そのために各地で情報を集めようとしている。俺の目的は家族を見つけだすことだ。出来ればその両方が出来るところが望ましいが……。


「とりあえずギルドに行こう。パーティー登録もしないといけないしな」


「……そうね。すっかり忘れていたわ」


 そうしてルナは自分用に借りている部屋に戻っていった。


 俺はというとベッドに横になり、天井を眺めながら呆然と昨日からの出来事を思い出していた。


 不思議な依頼に俺の人生を変えるであろう出会い、死を覚悟するほどの戦いの後に命を懸けた転生魔法……。

 本当にいろいろなことがあった。小さないざこざも刀との出会いも。かなり濃密な二日間だったが、これからどうするべきだろうか。


 どこに行けば妹二人と母に会える?会えたとして俺はどうすればいい?


 何年も前から考えていることだ。今急に答えが出るはずもない。だが、この流れならもしかしたら明日には……。

 永遠に回り続ける思考の中、俺は眠りに落ちていった。


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