ⅩⅥ 万能少女雫さん
「………」
知らない天井だ。
いや、言ってみただけである。普通に知ってる自宅の天井なのだ。知らないわけが無い。
というか身体中が痛てぇ……
あの後、テロリスト達は警察に逮捕され、無事事件は収束した。けが人もいない……いや、1人だけいるのだが……
もちろんわかる通り俺だ。あんなことやって無傷なわけが無い。先生方にしっかり怒られたあと、反省と安静を兼ねて今日は休みとなっている。
ぶっちゃけそこまで怪我は無いので病院送りにはならなくてよかったと思っている。
ただひとつ言えるとしたら……
「筋肉痛つれぇ……」
体の節々が痛み、まともに動けない。あんな動きしたらそれはそうなるだろう。はっきりいって死にそう……
安静にとは言われたけど何も出来ないのはほんとに……
「んじゃなんか作ろっか?」
…………俺は何も聞こえなかったキコエナカッタ。
一応念の為隣を見てみる。
金髪が見える。
焼き鳥食ってる……
「……何でいるんだよ……雫……」
「暇だったから」
……暇ってお前……
「学生だよな?」
「お陰様で休校中です」
マジか……というよりあんな事件があって休みにならないうちの学校がおかしいのか?
「てか作ろうかってお前、何作るんだよ……」
「なんか適当に料理?」
「は?お前、料理作れんの?」
「冷蔵庫漁るねー」
「えっ……ちょま!」
行っちまった……あいつ、不法侵入だけでなく何気に窃盗もしてるよな?
十数分後
「とりあえずこれ」
今目の前に出されたものは恐らく昨日の残り物だろう。一応早めに食べておきたいと思っていたから使ってくれるのはありがたいのだが……
「お前!!これどうやったらこんなんなるんだよ!」
さて、このセリフで誤解が招かれそうだから言っておくが、別に見た目が不味そうとかでは無い。逆だ。
どこの高級料理店だよと思いたくなるくらいの物が今目の前にあった。
「フッ……さっさと食え」
このドヤ顔がうぜぇ……ただ料理は見た目だけじゃない。アジもたいせ……
「うんまぁァァァァ!!!!??何コレ!?くそうめぇ!」
はっきりいって異常なくらい美味い。一体あんな材料でどうやって作ったのか、一人暮らしの身としてはぜひ知りたいものである。
とりあえず隣で「我、勝利もぎ取ったり」など言ってる奴は無視だ無視、今はとりあえず目の前の料理を貪るように食う。
そして完食。
「……美味かった」
「ん」
そう一言言うとそのまま食器を持ってまたキッチンへと行ってしまった。その後水の流れる音が聞こえたため、どうやら食器を洗ってもくれているらしい。あいつの事がどんどんわかんなくなってくる。
それから数分後、戻ってきた彼女は気だるそうにソファーに座った。
「……お前、いつまで居んの?」
「知らない」
本当に分からない……
とりあえずこのままじゃ何も進展がないので、1番気になっていた質問をする。
「なぁ、お前も俺と同じ力を持っているのか?」
「似たような力は持ってる」
似たような、ねぇ……全く同じでは無いのか。
「とはいえお前が力使ってるところ見た事ないんだが、ほんとにも」
突然目の前を電撃が走る。
「信じた?」
「お、おう……」
いきなり発動したうえ、威力もたかい……何よりなんだから今の正確さは!?この狭い部屋で一切何かを傷付けることなく飛び回したぞ!?
「慣れればこのくらい」
さいですか……改めて雫の異常差がわかった気がする
……能力としても人格としても……




