Ⅹ 緊急事態
なぜこっちの方がかけるんだろ……まぁ良さそうな案はここにやってるしなぁ……
うん、これは……ヤバいな?
現在男子更衣室。いるのはジャージを着た俺1人。時間はもう5時限目のチャイムがなっている。
そして俺はロッカーに隠れている。
ではなぜここにいるのか?
理由は簡単だ。
「これで全員か?」
「そうだな、丁度体育だったのか着替えに出てきたヤツらを捕まえんのが楽だったぜ」
絶賛テロリストに囲まれてます。
状況を少しでも知るために耳を傾けてみれば……
「しかし、他の学年の奴らはいいのか?」
「構わん、下手に人質を増やしたところで邪魔になる。管理できなくなり邪魔されるくらいだったら最初から要らん」
……どうやら捕まったのは俺と同じ学年の奴らだけらしい。……さて、どうするか。
「教師陣はどうなってる?」
「全員外だ。その方が相手と交渉しやすくなるとリーダーが言っていたな」
「何故だ?」
「知らん、だがまぁ下手な動きすればすぐに知らせを入れるよう指示してあるらしいからな、そうすれば人質をドパンだ」
「フハッ!!えげつねぇな」
何つー会話してんだよ……クッソ、こいつらがいなくなればまだ動けるのに……
「幸いこっちには30人以上人質がいるんだ、1人2人殺したぐれェでどォにも何ねぇよ」
厄介なのはこっちでは”能力が使えない”事。
身体能力はそのままだが、特殊な力は使えない。となると手段は限られてくる。
「しっかしこれはもうサツ呼ばれてんだろ?大丈夫かよ」
「とりあえずは人質がいるから大丈夫だな。ただ人質がいなくなりゃァ流石にやべぇ。……まぁ向こうもそんな事を許すほどのバカじゃねェとは思うけどな」
……よしOK、俺の方針は決まったな……
人質にされた奴らを全員助け出す。
とはいえこいつら邪魔だな……出たいけどロッカーの開けた音でアウトだ……どっか行ってくれないかな……
と思っていた矢先、自体は俺の希望の斜め上の展開で叶うことになる。何故なら……
「あぁ?なんだてめぇ……この学校の奴らじゃねぇな?”ボウズ”?悪いことは言わねぇからよ、さっさと家に帰ってねんねしてな!」
ボウズ?しかもこの学校のやつらじゃねぇって……てかヤベぇ!助けねぇと!!
と思っていた自分を殴りたい……
「はい邪魔ー」
聞き覚えのある今の状況には合わない間の抜けたセリフとともに聞こえてくる打撃音。
そして突然俺の入っているロッカーが開けられる。
「手な訳で昨日ぶり。元気してた?」
そこには昨日とは違い少年にも見えなくもない格好をした……
雫が半分無表情で手を振っていた。




