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天国に一番近い場所

 一年後、乙女の祈りを受けてその牝馬は産まれた。ジュダースクライの初子、ライバルであるキングオブキングスを父に持つこの四白流星の栗毛馬は、産まれてすぐに、一億で最上ひかりの元へ。

 夏競馬の時期にひかりはアキトに電話をかけて、サンダーレーシングファームに呼び出す。

「産まれたのは聞いてたけど、買ったんですか?」

「そういう約束でジュダースクライを買ったんだもの。牡馬が良かったんだけど、まあいいわ」

「この子も牡馬路線に?」

「今度の馬は松沢先生に任せるわ。下妻先生よりその方がいいでしょ? アキト君的には」

「まあそうですけど」

 俺はタタルカンでNHKマイルを買ったあと、G1は勝ってない。ナイトハルトに太刀打ちできず、タタルカンの早熟さも相まって、次のマイルチャンピオンシップで引退の打診が馬主から来ている。ナイトハルトは皐月賞、ダービーを勝って競馬ファンを大きく沸かせたが、菊花賞は5着とやはり距離の問題で勝てなかった。

「あのねあのね? アキト君。ここ早来には最も天国に近い教会があるのよ」

 ひかりさんはミニスカートの端をもってゆらゆらさせながら、俺に言った。

「知らないなぁ。観光名所?」

「知る人ぞ知る。あの神野さんも毎年来てるのよ? 優佳ちゃんと」

「聞いたことないなぁ」

「鈍感ねぇ。女から誘われてるってわかってないっぽい?」

「俺と!? 嘘でしょ?」

 緊張で手汗が出てきた。

「じゃ、いこっか」

 こっ、これはただの友人としての遊びに行こう的なノリで浮気じゃないんだからね! 誰にだ!?

 俺はひかりさんのフェラーリに乗ってそこに向かった。

「女でフェラーリって、引くわ」

「あ、やっぱり? ポルシェと迷ったんだけど」

「女子的な車ならワーゲンビートルでしょ。ポルシェもフェラーリも圧がすごい」

「お金は使ってこそでしょ?」

「音楽プロデューサーでしたっけ。もうかるの?」

「私立秋篠女学院知ってる?」

 国民的人気のアイドルグループだ。俺はアイドルにも音楽にも興味はないがそのくらいは知ってる。

「馬が買えるくらいもうかるんだ」

「もうかるんだよ。アイドルは馬より儲かるんだよ。当たれば」

 車で30分くらい走っただろうか、小高い丘の上に教会が見える。丘といっても半分しかなく、半分は切り立った崖だ。

「ついたよー」

 俺とひかりさんは車を降りる。切り立った崖の側に。

「この崖登るの? うそやろ!?」

 崖には急こう配の階段が備え付けられてる。勾配は60度くらいだろうか。

「ここはねー、男の人は後ろから登る決まりなの」

「は? 意味わかんない」

「すぐにわかるよー」

 ひかりさんは急こう配の階段を登り始め、俺も後に続こうとするが、なぜか引き留められた。

「まだ早い! いいよって言うまで体育座り!」

「なんだよそれ……」

「体育座り! 座れ!」

「わかったよ」

 俺は渋々体育座りをした。ひかりさんは軽快に階段を登る。ひらひらとミニスカートを風になびかせながら。次の瞬間、天国が見えた。薄いピンク色の天国だ。まあ要はパンチラなのだが。

「おおっ!!」

「ね? かなりの天国度でしょ?」

「うん。はい」

 とっさに成克さんのことが頭をよぎりテンションが下がる。

「どったの? 急に落ち込んで」

「いや、成克さんに悪いな、と思って」

「あっははは! そう見えるらしいんだよね。成克さんは妻子持ちだよー」

「そうなの?」

「そう。だからわたしも候補に入れておいてね」

「なんの?」

「アキト君のお嫁さん候補。姉さん女房はいいぞー?」

「考えときます……」

 俺は天国から地獄に突き落とされた。結婚という地獄に。

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