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金髪の反逆児 1

本作は平成の競馬界を描いていますが、レース日程、条件などは2020年現在の物に準拠しています。また、本作はフィクションであり、登場人物、舞台等は現実とは無関係です。

 サイレンがなる。静かな住宅街、相武台の街で。

 学校で、校舎一面、窓ガラスが割れ、さながら戦場の如く荒らされていた。

 校舎内はガラス片が一面に散乱し、生徒はみな、校舎の外から様子を伺っている。

 3-1の教室には、一本の金属バットを持った生徒が、わずかに微笑みながら佇んでいた。

 少年の背は低く、怒髪天を穿つが如し。少年の髪は金髪に染められ、

 156センチあるかという小柄なその生徒は、誰も居なくなった校舎を歩く。

 静まり返った教室の教壇に腰かけ、教師たちは遠巻きに学校の廊下でその教室を取り囲み、様子をうかがっていた。

 少年はまるで昭和の不良のようだった。

 そして、遠くから聞こえるパトカーのサイレンの音。

 少年は言った。

「ファンファーレだな」


 * * *


 ここは茨城県美浦にあるトレーニングセンター。

 美穂トレーニングセンターは、いわゆるサラブレッド、競走馬のためのトレーニングセンターだ。

 そこで一人のジョッキーが、一人の調教師に頭を下げている。

「15-15で頼んだよなぁ! 弘明! なんだこの時計は! こんなんじゃレースまでに仕上がらん!」

 弘明は調教師指定のタイムで追いきれなかったのを謝っていたのだ。

「すいません。斎藤先生。なんなら下ろしてもらっても構いません」

 斎藤調教師は顔を真っ赤にしながらその場を後にした。弘明が追い切った馬を調教助手の小河原が厩舎の馬房に引き上げていく。斎藤は小河原に言った。

「一体、どうしたんだ? 弘明は。先週の土曜日の騎乗から様子が変だ、覇気がねぇ」

 答えて小河原は言った。

「岡田さんの息子、知ってます? 吉沢明人。あれが補導されたとかで……」

「なんだって? 弘明からはなんも聞いてないぞ?」

「明人の親権、手放してますからね、岡田さん」

「なにやらかした? その坊主」

「中学校のガラスを割って回ったとかで。金属バット片手に」

「このご時世にか? 珍しくガッツのあるガキだな。おい! 小河原、そいつを車に乗せて俺のとこまで引っ張ってこい」

 斎藤は口元に笑みを浮かべながら言った。

「わかりました先生。車お借りします」

「おう、そいつは馬じゃねーんだから、足折ってでも連れてこい。責任は俺がとる」

 小河原正二は斎藤一馬厩舎の調教助手である。といっても今年、別の厩舎を引き継いで調教師として独立することになっている。

 斎藤には息子の和夫がいたが、斎藤は和夫の調教助手としての腕前に不満があり、内々の話し合いで、斎藤が定年を迎えた時は、三番弟子の松沢仁が厩舎を継ぐことに決まっている。

 その斎藤厩舎の所属騎手が、岡田弘明だ。通算1500勝、G1制覇9つ。

 その豪快な馬の追いっぷりから、人呼んで馬上の鬼神とあだ名され、天才、神野五郎の最大のライバルであった。

吉沢明人

馬上の鬼神と呼ばれる岡田弘明の一子。

母の妙子は既に病死。弘明は妙子の最後を見とるよりも馬に乗ることを選び、アキトの親権を手放した。

身長156センチ、体重48キロ。

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