桜の木の下には死体が埋まってる?
「先生、ここです。ここを掘って下さい。この桜の木の下に死体が埋まってるはずです」
深夜、高校の校庭に生えている桜の木の根元を指差して少年が言う。
「なんで私が掘らないといけないのよ?」
少年の言葉に、眼鏡をかけた巨乳の女教師がスコップを持ったままぶーたれている。
「いいからここを掘って下さい。絶対ここに死体が埋まってるはずです」
「はぁ。もうわかったわよ」
嫌々ながらも女教師は指示に従い、手に持ったスコップで土を掘っていく。
「ねぇ。なんで私だけで掘らないといけないの? あんたが言い出したんだからあんたも掘りなさいよ」
なにもせずにぼーっと突っ立っている少年を見て、女教師はスコップを地面に突き刺しながら不満を漏らす。
女教師の額からは汗が垂れてきていた。汗は彼女の頬を伝い、最終的に胸の谷間へと流れ落ちていく。
その様子をまじまじと見ながら少年は答えた。
「えっ、嫌ですよ。そんなことしたら服が汚れるじゃないですか」
彼のふざけた答えに女教師は激怒する。
「服が汚れるって、あんたねぇ! 私がいくら都市伝説部の顧問とはいえ、本当はこんな時間に学校の校庭で穴掘りなんてする必要ないのよ! それを親切で協力してあげてるって言うのに計画を立てたあんたは服が汚れるから嫌ってどういうことよ!」
今にも少年に掴みかかりそうな勢いで女教師は声を荒げている。
「はぁ、もうまったく。わかりましたよ。掘れば良いんでしょ、掘れば」
やや不満そうな物言いをしながら、少年はジャケットを脱いで腰に巻く。
「なんで私が頼んだみたいになってるのよ! あんたが言うから手伝ってやってるんでしょうが!」
「はいはいありがとうございます」
怒鳴り続ける彼女をあしらうように少年は心の籠っていないお礼を告げた。
「ああもう! 本当に腹立つわね! 生徒じゃなかったらボコボコにしてたわよ!」
少年に対する苛立ちを穴掘りへと昇華し、女教師は自慢の豊満な胸を揺らしながらどんどんと掘り進めていく。
「先生の胸ってすっごいでかいですよね」
未だスコップを持ってすらいない少年は、怒る彼女の神経を逆撫でするように、平然とセクハラ的な発言をする。
「このエロ生徒! エロ漫画みたいに女教師が簡単に落ちると思ったら大間違いよ!」
女教師が全員即オチなわけじゃないのよ! と続けて怒鳴っている
「えー、そうなんですか? てっきり俺のことを気に入ってくれてるから、こんな時間に穴掘りを手伝ってくれてるんだと思ってましたよ」
「ぐっ、ひ、否定はしないわよ」
少年に図星を突かれた女教師は怯んで穴を掘る手を止めた。
「なに休んでるんですか? 早く掘って下さいよ」
それを見た少年はすかさず手を叩いて彼女を煽る。
「こ、こいつぅ! 人がちょっと気に入ってるからって調子に乗りやがって! そ、卒業したら絶対ぶちのめしてやる!」
女教師はギリギリと歯ぎしりをしながら彼を睨み付け、強い殺意を放つ。
「はいはい。卒業しても会ってあげますから早く掘って下さい」
「べ、別に嬉しくなんてないわよ!」
口では文句を言いつつも内心喜んでいるのか、掘るスピードが心なしか早くなっている。
「えー、嬉しくないなら会わない方がいいかもしれないですね」
「す、好きにすればいいじゃない!」
掘るスピードが目に見えて落ちる。
強がっているのがまるわかりだ。
少年はその変化を認識し、楽しそうにククッと笑う。
「な、なに笑ってんのよ! いいから早くあんたも掘りなさい! いつまでそこで突っ立ってんのよ!」
「はいはいわかりましたよ」
明らかに不機嫌になった女教師の言葉に、少年は今日初めて従い、女教師が掘った穴へ入る。
「ちょっ、いきなり入って来ないでよ!
「危なっ」
狭い穴に二人の人間が入ったせいで身体が近づき、女教師は顔を赤く染めて少年を突き飛ばす。
少年はバランスを崩して女教師の肩に手をかける。
だが、女教師に少年の体重は支えきれず、二人はその場で倒れた。
穴は狭く人が大の字で倒れることはもちろん一の字で倒れることすら出来ず、少年はその場に尻餅を突くような形になった。
女教師は少年の顔に胸を押し付けるように倒れた。
「んん」
胸の感触を味わうように少年は顔を動かす。
「んあっ」
女教師は少年のその行為で軽く喘いでしまった。
「な、なにすんのよ!」
女教師はすぐに穴から飛び出して少年から距離をとる。
「あっ」
少年は胸が離れたことで少し残念そうな顔をしていた。
「先生の胸、すごい柔らかいですね」
立ち上がって穴を出た少年は再び女教師にセクハラをする。
「あんたは本当に……。この変態! 埋まってる死体を探すんじゃなくて今すぐあんたを埋めてやろうか!」
女教師はスコップを振り上げて怒鳴る。
少年はそんな彼女をしっかり見据え、一切悪びれることなく言った。
「惚れました。俺と結婚して下さい」
「ほへ? あ、うん」
女教師は間抜けな声を出して、思わず頷いてしまった。
もしかすると掘れたのは死体ではなく、
二人の未来、だったのかもしれない。
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