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どうして、あたしとルカは無意味な言葉を交わしているんだろう

すでに察していたことを、改めて言葉で聞かされた瞬間、エリシャのほんのわずかな希望は無残にも打ち砕かれた。

エリシャは、ルカに捨てられたのだ。


なのに、まだ何かにすがろうとしている。

転がり出る言葉を、おさえきれない。


「どうしても……あたしが死ななきゃならないって……。

 あなたはそう言うの……?」


あまりに悲し気なエリシャの声に、ルカの虚勢は崩れ去った。


なぜ? なぜ?

どうしてこうなってしまったのか?


その疑問がルカの頭の中を渦巻いている。

両目が熱くなった。

声が震える。


「ご、ごめんなさい!

 そんなつもりじゃなかった。

 でも、わたしは、もうエリシャを殺すしか……」


まるで胸の中が何かに力ずくでむしり取られてしまったかのような痛みに、エリシャは混乱する。


こんなことは初めてだった。

言いたくもないのに漏らしてしまう恨みごとが、遠く聞こえた。


「あたしたちは今までずっと一緒に戦ってきた仲間なのに。

 あたしはルカをとても大事に思ってきたのに。

 なのに……そんなのって、ないよ……」


エリシャの一言一言が、ルカの胸をえぐった。

痛みのあまり、つい気休めが口をついて出た。


「わたしだってそうだよ!

 わたしだって、エリシャのことを大切な仲間だと思ってる!」


ショックで呆然とするエリシャの中には、わずかに冷静な部分が残っていた。


……どうして、あたしとルカは無意味な言葉を交わしているんだろう。

ルカはもう十分苦しんでるのに。

なのに、あたしは自分の繰り言を止められない……。


「……嘘つき。

 ルカは、あたしのことなんて、結局どうでもいいと思ってる。

 だから、殺そうとしたんじゃない」


ルカは自分の身勝手を指摘され、痛打を受けた。


そう。

エリシャの言う通りだった。

ルカは、両親とエリシャをはかりにかけ、エリシャを捨てたのである。

その現実が、すでに自分は友人を手にかけようとした、汚れた人間だという事実が、ルカを追い詰めた。


「ど、どうしようもなかったの……。

 だから、こんなことになっちゃった……」


悲しみに暮れるルカの泣き顔が、エリシャの胸を突き刺した。


ああ、まだあたしはルカのことが好きなんだ。

あたしはルカが一番なのに、ルカはあたしが一番じゃない。

だけど、どうしようもなくルカが好きだ。

なら、あたしは……どうすればいいの?


「もう、わからないよ。

 あたしはまだ死ねない、あいつらを全滅させるまでは。

 でも、ルカとは戦えない」


ルカは、自分の愚かさを痛感していた。


ナオミを助けられなかった時、ヴァリアンツを善意で助けてみたのに拷問されてしまった時、そして、今。

いずれも自分の能力のなさが招いたことだと、つくづく思い知らされた。

……惨めであった。

やはり、自分はかかわる人間を無力さゆえに傷つけてしまう疫病神なのだ。

こんな自分が、これ以上生きることが許されるだろうか?


「エリシャを傷つけるつもりなんてなかったのに……。

 そんなこと今まで一度だって思ったことなかったのに……。

 わたしは弱い、どうしようもなく弱くて……

 ……いっそ、もう、わたしを殺して」


ルカが言うことなら、何でも受け入れようと覚悟を定めつつあったエリシャは、虚をつかれた。

たった一つだけ受け入れられないこと、それをルカが提案してくるなど、想像だにしていなかった。


「そんな。

 そんなこと……できっこない」


奇妙な安堵すら感じながら、ルカは自らの死を望んでいた。


殺してくれればいい。

そうすれば、今の苦痛から逃れられる……。

いいや、それは自分の罪悪感で突き動かされているだけの、自分勝手な言い分ではないのか?

やはり、自分はどこまでも卑劣な人間でしかないのかもしれない。


「もうなにもわからなくなっちゃった。

 ただ胸が苦しくて、もう、耐えられそうにないの。

 ほんの少しだって、ここに居たくない。

 もう、消えちゃいたい」


エリシャの怒りは、急速に高まり、荒れ狂った。


自分が見捨てられたからといって、やすやすとルカを手にかけることができるはずがない!

ルカに対する愛情は、そんなにもろいものでは、絶対にない!!


「できるわけないでしょ!?

 わからないの?

 あたしがルカを殺すなんて!!

 ……いったいどうして、わたしたちはいままで一緒に戦ってきたの?

 二人で殺しあうためなの?」


ルカは身を焼く苦悶に絶望していた。

もうこれ以上、自分は耐えられない。

そんな自分のせいで、かつて遠くあこがれの存在であったエリシャが、苦しめられるなんて、あっていいことだろうか?

価値のないのは、卑怯者の自分だ。

弱者の自分ではないか。

だから……。


「全部わたしのせいだよ、わたしの……。

 だから、もういい……。

 もう、終わらせて」


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