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わたしは、ずるくて、ひどい人間なんだから

無数に湧き出てくるかと思われた下級ヴァリアンツは、その半数が一瞬で粉砕された。


「ルカ、一緒に行くよ!」


手をつないだエリシャとルカは、執拗に襲い来るヴァリアンツを次々と倒してゆく。


やがて、洞穴に静寂が訪れた。


衣服を失ったエリシャの肌が、燐光を発していた。

強烈なエネルギー波を放出した余韻だった。


エリシャは全身傷だらけだった。

流れた血で、体が赤く染まっている。


ぜいぜいと息をつきながら、エリシャは言った。


「あと一人……。

 それで、あたしの役目も終わる。

 パパとママとテラも、みんな安心して眠れる」


ルカも荒い呼吸をしながら、手足の先からしびれてゆくような絶望を味わっていた。


エリシャは生き残ってしまった、どうして……。

あの時、エリシャの手を取らなければ、エリシャも、きっとわたしも死んで、こんなことにはならなかったのに。

わたしは、バカだ。

バカだから、いま、その罰がくだされたんだ……。


ルカは呆然と立ち尽くす。


エリシャはヴァリアンツの屍に埋もれた周囲を見回した。


「ほかのみんなは……?」


ピアリッジとともにいたレンジャー部隊は全滅していた。


エミティノートはぐったりと洞穴の隅で身を横たえている。


「そろそろこの体も終わりが近いみたい……。

 少し体力を温存するわ。

 まだ奥に一人いるのがわかる……ウェイルノート隊長に会ったら、教えてちょうだい。

 気を付けてね……」

 

眠りにつくように、エミティノートは目を閉じた。


エリシャが、洞穴の端を指さす。


「あっちに別の穴があるよ。

 きっとあの中に、ボスがいる!」


ルカは、エリシャの手をそっとほどいた。

不思議そうな目を、エリシャはルカに向ける。


「どうしたの?

 すぐそこだよ?」


「エリシャ……わたしは、いっしょに行けない」


ルカは幽鬼のような面持ちで、ポケットから装置を取り出した。

床に投げ捨てる。


キョトンとするエリシャに、ルカは説明する。

今まで、どうしても言えなかったことが、いまは奇妙なほどすらすらと言えた。


「あなたの戦闘服が、急に脱げたでしょ?

 それって、その機械のせいなの。

 トビヒトさんに、渡されて使えって言われたから……さっき使ったの」


エリシャは、はしゃいだ笑い声をあげる。


「……まさか、ウソでしょ?

 いきなり何を言いだすと思ったら、ルカ、それってギャグなの?」


ルカは声を荒げる。


「違うよ!!!

 ……ちゃんと聞いて。

 わたし、あなたを殺そうとしたんだよ、エリシャ!」


エリシャは浮ついた笑いを納めた。


ルカがウソを言っているとは思えない。

確かに、戦闘開始直後、エリシャの戦闘服は、突然解除された。

そして、ヴァリアンツの猛攻を受け、危うく死ぬところだったのだ。


だが、それを認めることは、どうしてもできなかった。


「ルカは悪くないよ、だって、それを渡したのはトビヒトでしょ?

 あいつらがルカをそそのかしたからだよ。

 ルカは悪くない、トビヒトのせいだよ」


「で、でも、結局スイッチを押したのは、わたしだもの。

 わたしは、エリシャが……死ぬと思って、押したんだもの」


「でも、さっき一緒にヴァリアンツを倒したよね、こないだみたいに手をつないで……。

 あれってあたしを助けてくれたんでしょ?」


「違うの!

 たまたまだよ……ううん、わたしが、死にたくなかったから、エリシャの手をつないだの。

 そうすれば助かると思って……。

 うん、きっとそうだよ。

 だってわたしは、ずるくて、ひどい人間なんだから……」


エリシャは、悲痛な声で叫んだ。


「どうして!?」


「わたしには、お父さんとお母さんがいるから。

 だから……逆らえなかった。

 わたしが言うことを聞かなかったら、ふたりがどうなるかわからないって」


「だったら、一緒に逃げよう!

 ルカのパパとママとあたしと一緒に、どこかに逃げたらいいんだよ!」


「いい加減なこと言わないで!

 エリシャとわたしだけならいいよ?

 でも、お父さんもお母さんも、ピアリッジじゃない、普通のひとなんだよ。

 一緒に逃げられるわけないじゃない。

 残しても、きっとひどいことをされる、捕まったヴァリアンツや、近所のひとみたいに」


ついさっきまで生気に満ちていたエリシャは、今では抜け殻のようにうつろだった。


「なら、どうすればいいの……?」


身を切るような思いで、ルカは干からびた声で言った。


「わたしは、今ここで、エリシャを……殺さないといけない」

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