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よかった、ルカちゃんは元気そうで

エリシャは先頭に立ち、公民館の扉を開けた。

背後から、ルカとエミティノートがついてくる。


公民館の中には、近隣の住民たちが身を寄せ合うようにして座っている。

ルカは全員を見渡したが、いなくなった人が何人かいるのに気が付いた。


消えたのは、ヴァリアンツの侵略によって、犠牲になった人たちだった。


彼らは、ピアリッジの姿を見て目を輝かせた。

ヴァリアンツ退治が終わったと勘違いしたのである。


ルカは思わず目を伏せた。


ナオミの両親が、親し気にルカに声をかけてきたのだった。


「よかった、ルカちゃんは元気そうで」


涙すら浮かべてルカをいとおしそうに見るそのまなざしに、ルカは気が重くなった。

ナオミを助けられなかった罪悪感を押し殺す。


「気を使ってくれて、ありがとうございます……」


なんとか答えるルカに、隣の住民が声をかけた。


「ルカちゃんのご両親は、地下シェルターに避難してるんだって?

 うわさで聞いたんだけど。

 私たちも隣に住んでたんだし、そのよしみでなんとか国に頼んで、シェルターに引っ越しさせてもらえないかな?」

 

他の住民が、口を開いた。


「そうだよ。

 東京は危ないってわかってても、今、引っ越しが禁止されてるから、田舎に逃げることもできないんだ。

 今日だって、この騒ぎだろ?

 このままじゃ、そのうち私たちもヴァリアンツに殺されるよ!

 お願いします!」

 

「あの、わたし、できるかどうかわからないけど、一応頼んでみます……」


しどろもどろに返事をするルカを、エリシャが制止する。


「ちょっと!

 今はそんなことしてる場合じゃないでしょ」


エリシャは住民に魅惑的な笑顔を振りまきながら、ずかずかと住民の中へ分け入った。

エミティノートにヴァリアンツの特定を頼む。


エミティノートは、鼻先を動かし、部屋の隅を示した。


そこには、痩せこけた老人が、脚を抱えて座り込んでいた。


周りでは家族が安堵したように、身の回りの品を片付けている。


エリシャは老人の前に移動した。

疑惑が頭をかすめる。

それほどに、老人の静かなたたずまいは、人畜無害のように思われたのである。


ついてきたルカに尋ねた。


「ね、このおじいちゃんって知ってる?

 近所でしょ」


「なんだか見覚えはあるような気がするけど、どんな人かは知らない」


「ふうん、ま、近所の人ってことで間違いなさそうだね」


エリシャとルカが、老人を他の人から隔離するように立った。

老人の家族が、不審のまなざしを二人に向けた。


エリシャの手のひらが、燐光を帯びる。


目の前で発生した超常現象に、居並ぶ住民たちは息をのんだ。


エリシャは人々に言った。


「この人はヴァリアンツです!

 みなさん、すぐに避難してください!」

 

住民たちは、唖然とピアリッジ、そして老人を見た。

老人の家族が抗議する。


「待ってください、うちの父がヴァリアンツだなんて、冗談でしょう?」


「おじいちゃんが、何かしたんですか?」


エリシャが答える。


「きっといつもと様子が違うはずです。

 気が付かなかったんですか?」


家族の顔が、こわばった。


ルカは家族の顔を見て、ふと思い当たった。


「もしかして、このおじいさんって……認知症の……?

 なんどか見たことあるのは、迷子の張り紙だったよ」


家族は、さっと老人から離れる。


「急にしゃんとしたと思って、みんな喜んでいたのに……」


まだ半信半疑のようすで、家族はピアリッジを遠巻きに見つめている。


「早く、建物から出て!

 巻き込まれたら、ケガじゃすまないですよ!」

 

エリシャが大声を上げた瞬間、老人は獣のような速さで、その場から走り出した。

背後から、エリシャが老人の腕をつかむ。


肉が焼け、音を立てる。

においが室内に充満した。


倒れた老人の上に、エリシャは膝をつき、動きを封じる。


緊張感が室内に張り詰めた。


暴れ出すかと思われた老人は、しかし、身を震わせ、泣き声を上げた。


「命だけは、助けてください……。

 殺さないで……」

 

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