表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/41

消えゆくランプに苦しみがなければいい

「あーあ、油断しちゃった。

 ヤバいヤバい」

 

校庭から、エリシャが戻ってきた。

照れ笑いを浮かべ、舌を出す。


しゃがみこんでいるルカを見つけた。


「ケガしたの?

 バカだね~」


同情心のひとかけらもないようすで、言った。


「うん、ちょっとだけ」


ルカは平静を装い、立ち上がる。


そこへ、ナオミが部屋の奥から現れた。


ルカの顔が喜びにほころんだ。


「ナオミ!

 よかった、生きてたんだね!」

 

「ああ、金魚かフンかどっちかのコね……」


鼻で笑うエリシャは、ふと真顔になった。


ルカの背後から、エミティノートが叫ぶ。


「危ない!!!」


とっさに、ルカは横へ跳んだ。


ルカのいた場所に、光が弧を描く。


「ナオミ、いったい何が……」


ルカは、ナオミの異様な姿に言葉をのみこんだ。


ナオミの手に、まばゆい光が燃えていた。

顔が不気味にゆがみ、けいれんする唇から言葉がこぼれおちる。


「エミティノート!

 余計なことを……」

 

輝いているナオミの手は、ろうそくのように燃えながら縮んでゆく。

強化されていない肉体は、内部のヴァリアンツが放出するエネルギーに耐えられない。


骨折している脚は、ぐらついて歩行も困難であるため、自らが積極的に打って出ることは不可能だった。


「なにこのコ?

 こいつもヴァリアンツだったの?」

 

エリシャの疑問に、エミティノートが答えた。


「あれはピティノートよ!

 きっと、ナオミちゃんに憑依しなおしたんだわ」

 

「あなたたちって、そんなことできたっけ?

 まあいいや、とっとと片付けちゃいましょ」


戦闘態勢をとるエリシャを、ルカは必死に制止する。


「待って待って!

 ナオミを傷つけないで!」

 

エリシャはあきれ返ってしまった。


「何言ってんの?

 あのコって、ヴァリアンツなんでしょ?

 なら、ちゃんと殺さなきゃね。

 だって、あたしたち、ピアリッジだし」

 

「わかってるよ!!!

 そんなことくらい、言われなくたって、わたしだってちゃんとわかってる!!!」


ルカはエリシャに対して感情を爆発させた。

初めてのことだった。


「だから……だから、ナオミは……」


つかのまの逡巡ののち、ルカは言った。


「わたしが、相手する……」


「どうぞご勝手に」


エリシャは不服だったが、ルカの背後に下がる。


よろめく足取りで、ルカはナオミに……今はヴァリアンツとなり果てた、ナオミだったものへと近づいた。


「ナオミ、わかる?

 わたしだよ、ルカだよ……」

 

おそるおそるささやく。


しかし、相対するナオミそっくりの面貌は、微動だにしない。


ルカは涙を流した。


「ごめんね、わたしのせいだよね、こんなひどいことになったのは。

 本当に、ごめん。

 ナオミだけは守りたかったのに、ナオミさえ無事なら、わたしなんてどうなってもよかったのに。

 なのに、今のわたしがナオミにできるのは、謝るだけ。

 たったそれだけしかできないの……!」

 

すでに、肘まで燃え尽きていたナオミ=ピティノートの腕が動いた。

ルカの体が光を帯びる。


両者の光が衝突した。

エネルギー波が四方八方に飛び散り、周囲の可燃物を燃え上がらせる。


それは、ナオミの肉体も例外ではなかった。


爆発するかのように、ナオミの体が炎に包まれた。


頭髪が一瞬で燃え尽きる。

皮膚がひび割れ、溶けて縮みあがった。

全身が黒く染め上げられ、炎をまとって崩れてゆく。


「消えないで、戻ってきて!

 お願い!!」


炭化し、粗末な黒い人形のような姿に変じたナオミの亡骸を、ルカは抱きしめた。


ルカの腕の中で、ナオミは土塊のように壊れ落ち、あたりに舞い散った。


両手のひらの中に、わずかに残ったナオミの痕跡を握りしめ、ルカはその場にくずおれる。

悄然と背を丸め、座り込んだ。


「ちょっと、どうしたの、ルカ?

 とっとと帰ろ」


無遠慮に声をかけたエリシャを、エミティノートがたしなめる。


「よしなさい!」


消え入るような、ルカの声がかすかに、二人の耳に届いた。


「しばらく、二人だけにして」


唇の端を曲げ、エリシャはエミティノートにささやく。


「二人ねぇ?」


「黙って。

 そっとしてあげて」

 

つかの間、興味深い目つきでルカを見つめた後、エリシャは踵を返し、エミティノートと共にその場から立ち去った。


人の気配が消えたがれきの中で、ルカは長い間すすり泣いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ