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キャラ達の願いを少しだけ叶えてみたが

  ……つまり、もう一回連載をしてほしい、自分達を描いてほしいって事か?

 


  「無理。」


  オレは言下に否定する。


  「えー、何で何で、神サマ!!」


  と銀髪桜。


  「……何でも何も、無理。」


  「……成る程ね、さっきのツインテールの新キャラが原因か。」


  ギクッ。

  茶髪内はねボブの柿の洞察力に内心驚くオレ。


  そう、オレは皐月サマをモデルにした新しいヒロイン作りで忙しい。

  大して人気も出なかった旧キャラを描く意欲なんて無いのだぞ。


  でもこいつってこんなにも鋭いやつに設定していたっけか?


  ……いや、違う。こいつらはオレの事を(全く尊敬していなさそうだが)『神』と呼ぶ。


  つまり、先程あなすたしあがパソコンから出て来る際靴を脱いだ時のように、オレの意思や不安や憂いが直接キャラ達の頭脳に伝達しているという仕組みになっているんだ。


  ーーってこういう説明でいいのか。神の存在ってそういうもんでいいのか。

  『人間』の知覚出来ない所に存在するのが『神』なんじゃねーのか。

  逆に『人間』の全てを把握するのが『神』のはずだが情け無い事にオレは全然こいつらの言動や行動を読めずにいる。


  「……違う……。ツインテールの子は、違う……。」


  「じゃあ、何故。」


  黒髪の弓が問うてきた。

  相変わらず(釣り目のくせに)きょとんとした目をしているな、とオレは昔の彼女を偶然見かけたみたいに思う。


  「お前達は、一度メジャー誌で門前払いを食らったんだよ。」


  と、オレは苦しくも説明する。


  「それを別の雑誌ですぐさま描けなんて無理だ。

  出版社側だって大手さんで打ち切られた作品を載せたいなんて思わないだろ。」


  ーーと言っても、それは全部オレの力不足の招いた事ではある。

  彼女達が悪い訳じゃないんだよな。


  「意味分からんけどもじゃあいわゆる同人誌で! 同人誌では!?」


  と銀髪桜。


  「オレは同人誌って作った事が無いけども、あれは売れなきゃ金がかかるらしいからダメ。」


  っていうか『同人誌』って単語を知ってるのかよ。


  「それじゃあ私達、出て来た甲斐がないじゃない。」


  とリーダーらしく桜は言う。


  「ああ、そうなんだよ。ごめんな。」


  早くパソコンの内側に戻って行ってくれ。


  「神サマ、オ困リミタイ。帰リマショウ。」


  と、敬虔なるロシア人ハーフの眼鏡あなすたしあちゃんが言う。

  やっぱりこの子だけはちょっと好きかもしれない。優しい。


  そう言えば当時の担当さんもこの子が一番良いって言ってたな。

  オレの作った最高傑作だ。


  「でも、その前に待ってくだしゃいよ。」


  と、また桜が腰に手を当て、5人もいてますます狭くるしく感じる部屋を靴のまま歩き廻る。

  脱げってのに。


  「せっかく3次元の身体になれたんだから、神サマに何かおねだりしてもバチは当たらないと思うのよね。」


  「え、え〜〜……。何だよ、言ってみろよ。」


  ラーメンの一杯ぐらいなら貯金はたいて奢ってやれるぞ。それでパソコンの中に戻ってくれるなら。


  「『食べる』って事をしてみたいでしゅ。」


  ウン、いい方向だ。いい子だ。

 

  「ああ。ラーメンでいいだろ。」


  「いや、フレンチのフルコース。」


  「アホか!!」


  オレの方が食ってみたいわ!!


  「ちぇ〜〜。」



  新月だった。

 

  真夜中、制服姿の美少女4人を連れてラーメン屋に向け出発。

  ラーメン屋の親父はギョッとしたような目でこの奇妙な集団を見つめている。当然オレをも含めて。


  「美味しい〜〜!!」


  「……美味しいのね。」


  「まあまあだな。」


  「『食ベル』ッテスゴイデスネ〜〜!!」


  身体は大人だが全てが初めての彼女らは嬉しそうにラーメンをすする。

  作中で食べさせた事があるからラーメン作法はかろうじて知ってる。


  チュルチュルと食べる美少女達の姿を見て、少しホッコリした気持ちになったのは内緒だ。



  だって、彼女達には悪いけど、すぐにでもパソコンの中に帰ってほしいというのがオレの本音なのだから。


 

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