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ツインテの女子高生

 


  そもそも、異性のキャラクターを作るにあたって非常に重要になってくるのは、作者本人の性癖であり、性欲である。

 

  例えばSっ気の強い作家が異性のキャラを作るとしたらそのキャラは作家の理想を反映させてM的な物になるだろうし、逆にMっ気のある作家が作ったらそれはS的なものに仕上がるだろう。

 

  これは一般論である。中には自分の性癖をそのまま異性のキャラに置き換える人もいる。

  もちろん、単純にSMだけで作っていてはすぐネタ切れになるのでバリエーションはつける。

  そこで必要になってくるのが性欲の強さだ。

 

  男性作家の場合だと、可愛い系の子、美人系の子、ロリ、年上、姉妹、隣りの幼馴染……と、一見楽ちんなテンプレートのように思えるが、そこには必ず作者の趣味嗜好が入っている。

  色々なタイプの女の子にアンテナを張り巡らせなければならないのである。

 

  今では100人のお姫様、等というゲームもあって(仮)、まあこれは複数人のチームで作っているからそれ程大変ではなかろうが、1人で全員、何10人もの女の子を作っている漫画家等はかなりのタフさ、有り体に言うと凄い性欲の強さだと穿って見ざるを得ない。

 

  中には、仕事だから無理に……という人もいて、人気取りの為のキャラクターは全てテンプレートに従うやり方で適当に描けてしまう器用な才覚の持ち主もいるであろうが、そんなキャラクターはがらんどうである。


  ……そして、そんな器用さも無く、かつテンプレートにも収め切れない、中途半端ながらんどうの女の子達を作り続けた作家が、このオレだ。


  元々オレは、現実の女の子に対してもそれ程執着心は無い。

  かと言って同性愛者では全くない。


  単純に、性癖も普通の上に性欲もそんなには無いのだ。

  せめて絵が上手ければまだ誤魔化せたが、それもまだまだ……だし。こんな奴が作った女の子が魅力的な訳が……無いのである。



 

  「えー、原口さん漫画家クビになっちゃったんですか‼︎」


  バックヤードでズバリと必要以上にオレの心をえぐる言葉をぶつけてきたのは、バイト先の後輩である女子高校生の女の子だ。


  なんて事はない世間話のつもりアンド、このバイト(コンビニ)よりもどこか多少キツくてもいいから給料の良い所を探している為こっち(コンビニ)のシフトに影響が出るかもしれないという事を最終的に伝えたかったのだが、彼女の食い付きは「漫画家失脚」の方に向かってしまっていた。


  「う、うん……。いや、でも漫画家という職業自体を辞めるって事じゃないよ。」


  悲壮な気持ちで呟くオレに、彼女こと小柴皐月サマは


  「でも、打ち切られるってクビって事でしょう⁉︎ 今、原口さん完全にフリーターって事ですかあ⁉︎」


  と、更に追い打ちをかけてきた。ツインテールに丸い頬、ドングリみたいな大きい瞳を持ったアイドルっぽい美少女だが、今は人の心を殺す上級悪魔にしか見えない。


  「う、うんまあそうなるかな。今はね。言っとくけど『今は』だからね……。」


  「新しい出版社ってそんなに早く見つかるんですかあ⁉︎」


  「……難しいかもね……。」


  話さなきゃ良かった。何でかこの子には細かい事や秘密でも話したくなるような不思議な魅力があるんだが、今回だけは死ぬ程後悔した。ガラスのハートが砕け散った。

  まあまだ高校生だしな……仕方がない事か。……仕方がない事か? 高校生ってもういい大人だぞ?


  「そうだ、原口さん、もし万が一また漫画を発表できる時がきたら。」


  と、皐月サマは話を方向転換させた。


  「『万が一』。漫画だけにだよね?」


  「その辺はどちらでもいいんですけど。私をモデルに漫画描いてくださいよ!」


  「……え?」


  思わず素っ頓狂な声を出してしまったが、言われてみれば、その考えには思い至ってなかった。

 

  オレは今の今まで、自分の『無意識の好み』を探ってキャラクターを作るという事しかしてなかったが、実際にいる身近な女の子をモデルにしても別に構わないのだ。

  いや、構わないどころか、ビジュアル設定で頭を悩ませる事も無いし、キャラクターの性格や存在感にも深みが出てくるかもしれない。

 

  ……もしかして、他の売れてる作家さんはとっくにそんな感じで女の子キャラを作っていたのだろうか。

  だとしたらオレ、女の子の友達が少ないとは言え気付くの遅すぎ。


  こ、これが『違い』というものか。


  「皐月ちゃん、そのアイディア頂きだよ。」


  「本当に⁉︎ 何年でも待ってるね!」


  「いや、別に何年も待たせないよう努力はするけど。」


  並行して新しいバイト探しはやらなければならない。

  でも、何だか今は皐月サマのお陰で創作意欲がガンガンに湧いてきてしまった。そうだ、実際の人間をモデルにすればいいんだ。


  オレはバイト中ながらも早く仕事場兼部屋に鎮座しているデスクに向かいたくてウズウズしていた。



  ーーーーパソコンから、あんなもの達が出て来る事になるとは知らないままに。



 


 

 

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