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01:カケオチの巻

 ママはあれからパパからもらった「ケッコンユビワ」をしていなかった。パパの国の文化で結婚の証みたいなものらしい。あれ綺麗だったのに。いらないなら私にちょうだい。

 今、ママとパパは「リコンキョーテー」っていうものをしているらしく、よく最近パパとママはお城にお出かけしてる。その間、私はお城で働いてるソーカルおじちゃんのお家に預けられてるの。ソーカルおじちゃんはすごく背が高くて強い顔してるけど、実はとっても優しい。この間、ケーキやくまちゃんのぬいぐるみを買ってきてくれたし、お願いすればお城の天辺まで抱っこして連れてってくれた。たまにおうちに遊びに来るアビおじちゃんはソーカルおじちゃんのこと「ロリコン」って言ってたけどどういう意味なんだろ?言った後、アビおじちゃんはソーカルおじちゃんに追い回されてたけど、悪いこと言ったのかな。後でパパに聞いてみよう。

「ねぇねぇ、ソーカルおじちゃん。リコンって何?」

 お茶を飲んでたソーカルおじちゃんに話しかけたら、お茶を吹いていた。お行儀悪いなぁ。

「…俺もようわからん。」

 しばらく何か考えて、ソーカルおじちゃんは被っていた帽子で目元を隠して私を見ないように答えた。お話するときは顔を見ないといけないんだよ。

「そっか、難しいねぇ。」って私が言うとソーカルおじちゃんは小さく返事してくれた。「リコン」っていったい何なんだろう。ママもパパも教えてくれなかった。レンコンの仲間かな。

レンコンのきんぴらとか天ぷらとかはさみ揚げっておいしいんだよね。パパが昔作ってくれた。そう言えばパパはレンコンの穴が美味しいって言ってたなぁ。

「レンコンの仲間だったらどんな味かなぁ。」

「レンコンは関係ねぇと思うぞ。」

 違うらしい。それを聞いて少しがっかりしていたら、ソーカルおじちゃんはお台所から布袋を出して私に渡してくれた。何だろう。

「レンコンはねぇが野菜チップ、昨日作り過ぎちまってよ。やるよ。」

 袋を開けるとじゃがいもやニンジンのチップスがたくさん入っていた。私でも食べれるくらい小さく切ってあって、とってもおいしそうだった。一つつまんで食べると、サックサクの食感でほんのり甘くおいしかった。もう一枚食べようとしたら、ソーカルおじちゃんが残りは晩御飯の後にしろって。こういうの「ナマゴロシ」って言うのよね。よく知ってるでしょ。



しばらく、おじちゃんのお家で遊んでたらいつの間にかお日様が沈んで、お月様がお顔を出してた。今日はパパもママも遅いなぁ。そう思っていたら、途端に部屋のドアがはじけ飛んで大きな黒い犬さんがぬっとお家に入ってきた。私はびっくりしてソーカルおじちゃんの後ろに隠れてしまったけど、あれママ?

「サバカ!てめぇ、普通に入ってこい!」

ソーカルおじちゃんは大きな犬さん、たぶんママに怒った。そうだ!ドアはおててで開けないといけないんだぞ!

「そんなことはどうでもいいわ!交渉決裂よ!」

ママは黒い犬さんのまま、ソーカルおじちゃんに怒ってた。今日は何だかママはゴキゲンななめ。なんだかすごく慌ててるし、怒ってもいる。怖いなぁ。

「どうしてあたし、あんな男と結婚したのかしら!思いだしただけでもイライラする!」

ママはそう言って首を横にブンブン振ったり、前足で床を叩いたりしてる。ママが動くたび、お家が揺れて、食器とか本とか棚から落ちていく。

「やめろ!何があったのか知らんが、俺の家を壊すんじゃねぇ!」

 落ち着け!って言ってソーカルおじちゃんは近くにあった大きめのテーブルクロスをママにかぶせた。それ知ってる!ハムスターとか落ち着かせるやつだ!

 ママは布をかぶせてもらうと、そのままいつものままに姿が戻った。でもまだ落ち着いていないようで、ソーカルおじちゃんに掴みかかった。

「あの男は!家にいない率が高いのにぺルの親権は譲らないっていうのよ!何バカみたいなこと言ってるのよ!」

ママはそのままの勢いで私に近づいて、抱き上げた。

「ぺル、これからおじいちゃんのところに行きましょう?」

 ママはいつもの優しい調子で私に言ってきた。おじいちゃんのお家?と聞き返すとママはとびっきりの笑顔を見せてくれた。

「そうよ。ママと駆け落ちしましょ?」

?いったい何を言ってるんだろう。わけがわからいよ。

 私はママに抱っこされたまま、いつの間にか黒い犬さんになったママに連れていかれた。ソーカルおじちゃんはママを止めようとしていたけど、ママは知らんぷりしてまた壊したドアから出ていった。すごい速さだ。でもサヨナラとありがとう言ってない。

町から出ていく途中、パパを見た。パパはすっごい悲しそうな顔をしていた。大丈夫だよパパ。おじいちゃんのお家に行ったら、すぐに帰るから。

でも、ママはなんでおじいちゃんのお家に行くのかな?あと、「カケオチ」って何?


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