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ある魔女のための鎮魂歌【第2部】  作者: ワルツ
第9章:ある王女の幻想曲
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第9章:第27話

夜道に佇む子供が居た。年は十歳前後、黒い髪に蒼い瞳、雪のように白い服を纏っていた。

子供の足元には昏睡状態の村人が居る。先程の蒼い結界を見つけ、様子を見るために村の入り口付近までやってきたようだ。

子供は倒れた村人を踏み付けながら夜空に囁いた。


「終わったよ、メディ」


すると、誰も居ないはずの暗闇から女の声がした。


『お疲れ様、イオ。村人の記憶の改ざん、ちゃんとやってくれたのね?』


「一応やったけど三人四人くらいだし、記録書が手元に無いから雑な改ざんになるけど、それでもいい?」


『構わないわ。そこまで気にしたりしないわよ。要は証人を揃えられればいいの』


イオがメディから受けた指示はこうだった。まずはルルカを追ってキラやセイラ達が蒼い結界の方へ向かうところを目撃した村人を捜すこと。次に、その村人の記憶を改ざんし、「キラ達と一緒にオズも蒼い結界の方へ向かった」という偽の記憶を植え付けることだった。

オズは村人や村長からの評判は悪いし、キラが杖で暴走した件の時にオズが一枚噛んでいたという前科がある。

この真夜中に魔法を伴った戦闘を起こせば必ず村の問題になる。村長はきっと先程の騒ぎと蒼の結界の裏にはオズが居ると疑うだろう。

メディは満足げに言った。


『このままうまくいけば、さっきの騒ぎは全部オズの責任になる。ルルカの件のことは惜しかったけれど、こちらがうまくいけば問題ないわ。』


メディによるとこれが最終的にオズを追い詰めるための策らしいが、イオにはどうしてそれがオズを追い詰めることになるのかわからなかった。イオはメディに言った。


「うまくいってるけどさあ、そんな地味なことして意味あるの? あいつを仕留めるならさ、がーっとあいつらから杖奪って、メディが身体を取り戻して、直接あいつを始末しちゃった方が早いんじゃない?」


『あら、その考えはまだまだお子様ね。もう少しスマートな方法を思いついたのよ。ふふ、いずれあなたにもわかるわ』


メディはそう言うだけで詳しいことは教えてくれなかった。メディの艶めいた笑い声がふわふわとイオの周囲にまとわりついては離れていく。


『あとはスカーレスタ条約の密約の話がうまく進んでくれるといいわね』


そう言ってメディの声は夜空に溶けて消えていった。凍えるような北風が吹き荒れる夜だった。

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