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 僕の名前は加藤 正義(かとう まさよし)。

 両親は共に警察官で、一人息子に「正義」と名付けてしまうぐらいの正義バカだ。そんな両親から言われ続けたことは「人のためになると思ったことは、迷わず実行しろ」である。

 どんなに小さなことでもどんなに無謀なことでも、それが誰かのためになる行為なら即実行という云わば自己犠牲全開の教育方針に、実の息子である僕ですら若干引き気味であった。

 引き気味ではあったが否定はしなかった。寧ろ仕方ないかと、すんなりと受け入れてしまった。この直情正義バカな両親からその血を受け継いで生まれた僕も、実は無意識に正義バカだったのかもしれない。 とにかくそういうことから、その考え方は僕の行動に多分に影響を及ぼすものになっていった。

 あの時も、その影響であんな行動をとったのだろうと今更思う。

 その日、僕は買い物に出ていた。外は雨で傘を必要とするぐらいには降っていた。

 ある交差点で信号待ちをしていたとき、隣には同じように信号待ちをしている小さな女の子がいた。

 お気に入りなのか、とても大事そうにぬいぐるみを抱いて、母親らしき人と信号が変わるのを待っている。

 だが次の瞬間、女の子は後ろにいた人に軽く押されてぬいぐるみを車道に落としてしまった。

 その子もぬいぐるみを追って車道へと出てしまい、母親が気づいた時にはもう完全に手が届かないところまで行ってしまっていた。

 そこに走りこんでくる一台の車、彼女には気づいていないのか速度が緩む気配がない。

 そう判断したときには体が勝手に動いていた。女の子のところまで駆け寄り、歩道側へ突き飛ばす。かなり荒っぽくしてしまったが、残っていた人たちがうまくキャッチしてくれたみたいで怪我はしてなさそうだった。

 すぐ近くまで甲高いブレーキ音が聞こえているのに、何故か恐怖は感じなかった。あの子が大怪我をしなくて良かったと、ただそれだけしか考えていなかった。

 そして、衝撃を感じるのと同時に目の前が真っ暗になった。



 気づくと、そこは全く見覚えのない場所だった。どこかの病院に運び込まれたのかと思ったが、すぐに違うとわかった。

 まず、僕はベッドなどではなく床に直接寝ていた。流石に患者を床に寝かせる病院は無いだろう、少なくとも僕は行ったことがない。

 そしてもう一つ、決定的なことは部屋が二色に分かれているということだ。

 僕から見て右側は天井、壁、床すべてが真っ白。対して左側はすべて真っ黒。左右の壁には、それぞれ壁と同色のドアが一枚ずつ付いているだけで、他にテーブルやイスなどの調度品もない。

「なんなんだろう、ここ…」

 そう呟きながら立ち上がろうとしたとき、

「おめでとうございます♪」

「うぉわぁ!!」

 いきなり後ろから声をかけられて、思わず大声をあげてしまった。

 急いで後ろを向くと、左側(真っ白側)には白いワンピースを着たウェーブのかかった金髪ロングの女の子が、右側(真っ黒側)には黒いワンピースに黒髪ストレートロングの女の子がそれぞれ立っていた。

 突然見知らぬ女の子(しかも二人)との出会いに思考が完全に停止していまい、

「え~っと…」

 と言うのが精いっぱいの僕。

 そんな僕に、

「おめでとうございます、あなたは選ばれたんですよ♪」

 と白い子が満面の笑みで声をかけてきた。

「選ばれた…?何にですか…?」

 今の状況にも、かけてくる言葉の意味にも全く着いていけてない僕がやっと発した疑問に、

「もちろん、転生する権利にです♪」

『パンッ』

 どこから出したのか、クラッカーを鳴らしながら当の本人は答えてくれた。

 ちなみにこのやり取りの間、黒い子はただ静かに僕のことを見ているだけだった。


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