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ある男の夢中

作者: 穀物 紙太郎

現実の問題と夢の問題はきっと直結している

沈黙が迫る

僕は恐ろしくなって逃げ出した

走れど走れど僕の足音が聞こえない

まるで、風の上を走っているみたい

だが、風の様な優しさも暖かさも感じられない


沈黙が迫る

周りには僕以外の人間は見当たらない

やはり、というより確信した 沈黙は僕を追っているのだ

気付きたくはなかった

だが、知ってしまったのなら

僕はもう逃げきる事しかできないのだ


沈黙が迫る

試しに沈黙に話し掛けてみる

「なぜ、お前は僕を追い回すのか」

奴は聞き覚えのある声に必死の色を加えて答えた

「僕から逃げてくれぇ!!」沈黙は何度も答えた

「僕から逃げてくれ!!僕から逃げてくれ!!僕から逃げてくれ!!僕から逃げてくれ!!」


僕は沈黙との会話(向き合うのを諦めた)



沈黙が迫る

沈黙は諦めずに僕に着いてくる

ふと気付くと愛しのあの子が前を歩いていた

僕は彼女に助けて貰うために足をより多く動かして彼女に近こうとするが一向に距離を詰める事ができ

ない

(僕は彼女にもう会う事が出来ない)そんな不思議な感覚が肌に染み付いた

その感覚は生暖かくぬるっとしていた

僕はこの感覚を知ってる

(これは確信だ)

不思議な感覚に陥っていると横から沈黙が僕を追い越してあっという間に彼女に追いついてしまった

そして、沈黙は彼女と親しげにほんの少しの間言葉を交わすと沈黙は肩を震わせて泣き始めた

決して大袈裟ではないが、とても深く深く沈黙は泣き続ける

彼女は沈黙を心配してか、沈黙の震える肩にそっと手を置いた

その瞬間、沈黙は隠し持っていたナイフで彼女の衣服と肌を切り裂き、突き刺し

ナイフの刀身を赤く染め上げてみせた


彼女は一瞬で肉になり果てる


やはり、さっきの不思議な感覚は確信だったのだ

身体が妙に生暖かい…

(僕の身体は確信にまみれていた)

そして、僕は彼女が肉になっていくのを見ていたのに僕の心に焦りはなく、至って冷静だった

ほんのりと身体中の確信が染み込んで来るのを感じた


沈黙と告白が迫る

沈黙は相も変わらす必死に走って僕を追って来る

告白は対照的に冷静でゆっくりと歩きながら僕を追って来る

だが、その表情は何か大きな事実を受け入れて後悔に満ちている

そんな表情だった

そして、告白の雰囲気も僕はよく知ってる


僕は告白と話をしてみたくなった

問わなければならない気がした

その表情の意味を


「どうしてお前はそんな表情をしているのか」

告白は答えない ただ、僕を見つめているだけだ


だが、僕は全てを理解した

いや、僕は思い出したのだ


「そうか…僕は……」
















夢から覚めるとそこは、山の中だった

きっと随分走り回ったのだろう

服も靴も泥だらけだ

いや、泥だけではない 赤い汚れも目立つ

この赤は、僕のモノではない

手に何か持っていることに気がついた

ナイフだった なんて事もない普通のナイフ

赤い汚れがこびりついていること以外は





「…」





僕は告白と向き合うことを決めた








「なぁ聞いたか?」

「何をだよ?」

「あれだよアレ!若い女の人が惨殺された事件!」

「あぁ…そういえばそんな事件があったな…それでそれがどうしたんだよ?」

「捕まったんだよ!犯人が!

「マジか!捜査が難行しているって聞いてたけどな…」

「それがさ!どうやら自首したらしんだよ」

「自首?またなんで?」

「さぁな…それはわかんないんだけど…出頭した時の姿がもうヤバすぎるらしいんだよ」

「ヤバいって何が?」

「それがさ!犯人は血だらけの泥だらけで片手に凶器のナイフ持って、まるでコンビニに行くような手軽さで交番に来たらしんだよ!」

「犯人は冷静だったのか?」

「冷静を通り越して何かから解放されたように穏やかだったとか…」

「それは、ちょっと怖いな…逃げるのに疲れたのかな?」

「どうだかなぁ…捜査には素直に応じてるらしんだけどな…」

「動機は何だったんだよ?」

「恋愛の縺れだったらしいよ 犯人が被害者にフラれたとか…」

「マジかよ…それだけで人を殺せるもんなのかね…」

「怖ええよな…」

「お前もモテないからって女の子に変なことすんなよ」

「するかボケぇ!!」






おわり

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そうして頂けたなら幸いです

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