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似、『セーブ・ポイント』 ☆その三、『真ヒロイン爆誕!』

「おはようございます、御父様☆」


 朝の挨拶とともに、柔らかな重みを感じて少年は目を覚ます。

 だが、逆光になっていたせいで、彼には彼女の姿がよく見えなかった。

 だんだんと目が慣れて、ハッキリしていくその姿は――自分と同じぐらいの体格/キラキラ輝く長い銀髪/形の良い胸/先端は不自然なほど美事に髪で隠れている/アクトとは比べ物にならないほど綺麗な肌――メッチャ肌色! まさかのゼンラー!!

 だがアクトは狼狽えない/寝起きで頭が回らなくて――とりあえず思ったままを口にする。

「……綺麗だ」

「ここでまさかの御言葉!? そのリアクションは想定してなかったです! きゃー!!」

 まさかの称賛に、美少女は美事に狼狽えた。

 真っ赤な顔でアクトから毛布強奪――その裸身を隠す/強制的に毛布を引っ張られたせいで床に『ゴロゴロ』転がるアクトくん/おかげで目覚めはバッチリ――最悪。

 見上げるアクトの瞳に――肌色と紺色が映る/続いて見慣れた足、見慣れたスリッパ、見慣れた……人物特定完了/上体を起こし確認――

 そこには、スク水にエプロンを装備したアイさんが、立っていた。

 ……エプロン姿の女性は家庭的な感じがして良いとアクトは思う。

 …………右手に包丁を持っていなければ凄く良いと思う。マヂで!

「これは挨拶――おはようアクト。でもまだ寝足りないなら、もっと寝ててもいいんダヨ?」

「……おはようございます。殺さないでください」

 ハートに一撃くれそうなラブリィさデス。

 目覚めと同時に死を覚悟する――それが『最後の一日』の始まりだった。



「……しっかし、いっきに育ったな」

 朝食のクロワッサンを食べながら呟く。

 銀髪のゼンラーことアマメ・パーフェクトモード。

 昨日までは幼女だったのに、一晩経った今ではオリジナルのアイよりも、ちょっとだけ幼い感じに成長している/アクトと同年代ぐらい/これが完全体――説明書に書かれていた『現在のアナタ』とは多少違うけれど――博士も焦っていないし――たぶん問題ない。

 ――……準備完了、ってことか。

 やることをやり終えて、残るは仕上げだけ。

 アクトはこれからの事を考えつつパンを食べる――視線はアマメをロックオンしたまま/真剣な表情/乙女なアマメはその熱い眼差しに頬を赤く染め、上目づかいで――

「――と・き・め・き・ラブ、ですか?」

「……ノーコメントで」

 迂闊な行動は命とりでした!

 アマメ《むすめ》に向けて殺気を放っているお母さんが怖すぎる/自分のコピーに嫉妬――否、自分のコピーだからこそ、居場所を奪われる可能性が高い/恐怖から生まれる殺意!

 その殺意を真っ向から受け止められるアマメもアクトには理解不能だった。

 そんな修羅二人が怖すぎて目を逸らすと、不意にイリマ博士と目が合う。

 お互いが『怖いモノ』から目を逸らした結果なので、ある意味必然――目と目で通じ合う気持ち/危機的状況による信頼度急上昇――修羅二人の事は忘れて、男二人で語りあおう!

「……ヌシ、そういえば、調教は成功したのか?」

「調教言うな」

「ワガママを……調教がダメなら、なんと言えというのだ」

「普通に『説得はできたか?』とか『願いは聞いてもらえたか?』とか『教育は上手くいったか?』でいいよ! なんでわざわざ如何わしい言い方するんだよ!!」

「……フっ、若いな。漢が女にする全てのことは『調教』で説明できるのだぞ!」

「できねえよ!」

「……ククク、我は妻を調教して――(自主規制)――した!」

「なにカミングアウトしてくれてんの!?」

 アクトは博士の冗談半分の軽口に乗った。

 ノリノリで乗った――こういう気軽で気楽で薄っぺらい男同士の会話が大好きだから/女の子相手だと、どうしてもカッコつけたくなるから。

 そもそも、最初の質問はただのネタふり――博士は答えなんか初めから求めていない。

 ――今の状況を見れば言わなくたって解る、か。

 だから、これは本当にただ楽しいだけのお喋り/意味のある無意味な会話/アクトは楽しいひと時を過ごせたことを、心の中で感謝する……まあ、絶対声には出さないが!

 修羅二人が博士に送っている『汚物を視るような視線』が怖いから!!

 アクトは――博士を見捨てて――目の前の朝食をたいらげることに集中した/情報遮断/見ざる聞かざる言わざるの精神………………博士の断末魔なんて聞こえないっ!!

 ――…………今日も一日頑張ろう。

 噛み締めたクロワッサン――都市建設前からパン一筋、この道四十年の達人が焼いた、毎朝五十個限定の品――は涙がでるほど美味しかった。ホロリ。

「ごちそうさまでした」

 ――ナンマイダー。

 イリマ博士のご冥福をお祈りします――合掌。チ~ン♪



「……なんか気が緩むな~」

 緑茶を『ズズズ』とすすり、少年は遠い目をする。

 尊い犠牲の果てに、やってきた食後の穏やかな時間。

 安全装置回収という大仕事が終わった現在、今後の予定は微妙に未定――計画立案や装備の準備などは博士の仕事/アクトがするべき事、できる事は、いつでも動けるように万全の状態を維持すること……なのだが、朝一で戦闘訓練トレーニングする必要はないだろう。

 長く張り詰めていた緊張感がゆるみ、『ホッ』と一息。人生でたまにやってくる、もっとも平穏な時間…………なのだが、アクトのソレを壊すのは、いつも同じ人物だったりする。


 その彼女が、テーブルを『バン』と叩き、宣言する。


「これは提案――思い立ったが吉日というワケで、今から『マザー』のトコに乗り込みましょう! そもそも改めて準備する装備とか無いし! 『決行日』なんて決めて無駄に緊張感高めるよりも、こんなふうにいきなり行動したほうがリラックスできて良いと思うし! ねっ!!」

「……まあ、いいけど」

「よいのかっ!?」

 部屋の片隅で死んでいた博士が驚愕で蘇った。

 まさかOKでるとは思わなかったらしい。まあ、普通思わない。

 アクト、苦笑いで博士の元へ――女性陣に聞こえないように部屋の片隅ででヒソヒソ話/背中に訝しげな視線を『チクチク』感じるが我慢して知らんぷりー……『座っていてください《Sit down please.》』って気分です。

「……博士、俺だって無茶だって解ってるよ。……でも、アイ姉は……もう限界なんだろ?」

「…………知って、おったのか」

「いつも一緒にいるんだから、そりゃあ気づくよ」

 アクトは――女心に関しては微妙でも――別に鈍感というワケではない。

 むしろ、幼い頃から『蔑みの視線』にさらされていたせいか人一倍『他人が自分に向ける感情』に敏感に――嫌になるほど空気が読めるようになってしまった漢なのである。

 そんな少年が、はにかむような笑顔で――


「それでも、最後まで一緒にいたいから、さ」


 ――そんな恥ずかしいことを言う。

 不意に博士は思い出す――目の前の少年と重なる面影/恩人の顔/過去の――後悔の記憶。

 ――……『ボク』もあのとき一緒に行きたかった。たとえ死んでも、付いて行きたかった。

「……そう……か」



 なにか悟ったような、諦めたような顔をした博士が部屋の奥に消えて……数分後。

 再び現れた彼の手には衣服/手渡された新装備は――アマメと共に入手したデータの中にあったらしい――『ナノマシンを利用した新素材』製のアンダースーツ。

 アンダースーツなので、外見的にはほぼ変更無しな新装備である。ちょい残念。

 アクトは着替えてる最中、博士より『切り札』の説明をうける/女性陣は別の部屋で着替えているので、彼に対してだけ――彼はそのことに疑問を覚えたが、内容を聞いて納得した。

「――以上だ。『加速進化アクセラレーション』の効果、理解できたか?」

「うん。つまり、使ったら最後の特攻手段って事だね」

「……使うな、とは言わぬ。オヌシが使いたければ使えばいい。全て自分で決めろ」

 ツンデレ老人がそっぽを向きながら、ツンデレ発言。実に解りやすい。

 そんな彼にアクトが言葉をかけようとした時――着替え終えたアマメが戻ってきた。

 アイの巫女服モドキ衣装2Pカラー/真紅の上着に黒いミニ――ちょっとブカブカな感じが可愛らしい&真紅な上着がアマメの銀髪には似合っている、とアクトは思った。

「可愛いですか、お父様?」

「ああ。可愛いよ、アマメ――ってイデデデデっ!」

 激痛――背中の肉をつねるというテンプレートな嫉妬表現/犯人は考えるまでもない。

「これは確認――私は? 可愛い?」

 彼女はそう言って、アクトの視線を力尽くで自分にロックオンさせる。

 しかし、その服装は……身体にピッタリなアンダースーツオンリー/本来着るべき上着をつけていない為、身体の線がまるわかり/刺激的で扇情的過ぎる格好で……正直、痴女っぽい。

「あー、うん。色っぽい――イデデデデデデデデっ!!」

 アクトなりに精一杯オブラートに包んだ表現をしたのですが……ダメでした。

「それは心外――なんで私がお色気担当? フツー、あの娘に『可愛い』って言ったなら私には『キレイだ』と褒めるべきでしょう? 違う!?」

「だって、なんか恥ずかしいし」

「はぁ?」

「フっ、異性の年下に『可愛い』とは容易く言えても、年上の女性に『綺麗』というのは難易度が高く、そして同年代にはそのどちらも言い難い……それが思春期の男心!」

「その通りなんだけど、冷静に分析しないで」

「邪魔なら席を外してやろう。二時間ほど」

「時間がナマナマしい!」

「これは確信――アクトの獣欲を満たすには二時間じゃ足りないと思います」

「アイ姉もなにいってんの!?」

「だが、最終決戦前に『そういうこと』をすると死亡フラグになるかもしれぬな……特に男のほうの。死んでもヒロインのお腹に赤ちゃんが、という感じで」

「一言多いどころじゃないな、オイ!?」

「……それいいかも」

「アイ姉も素でなにいってんの!? いつもの口癖忘れてるよ! 俺、そんな理由で死ぬつもりないからね! 死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「……出撃前に疲労してどうするんですか?」

 カオスな状況にアマメのデュアルツッコミ炸裂!

 それは行為に対する文句と、現在のアクトの精神状態に対する評価を兼ねる二重ツッコミ!!

 一番幼い娘にツッコミされるという気不味い状況に――キャラ崩壊しかけていた博士が咳払い一つ/仕切り直し――芝居がかった仕草で、言う。

「行くがいい! 好きな様に生きて、好きな様に死ぬ……それが本当の幸せなのだから!」

「「死ぬつもり無いよ!?」」

 いつの間にか死ぬコト前提で話が進められていました。驚愕である。

 女性陣は『理解できない』という目で博士を視る――が、アクトは少し共感/自分の意志を貫いて、生きたいように生きて死ぬ――そんな生き方に少々憧れるお年頃である。


「だが、これだけは言っておく――死んでもいいが、勝ってから死ね!」


 泣きそうな顔で『ワンパクでもいい、たくましく育て!』って感じの無茶を言う博士。

 ツンデレの不器用な応援――訳すと『後悔するような死に方しちゃダメ』か、『死んじゃダメなんだからね、負けてもいいから生きて帰ってきてよね』のどっちか/前者に一票。

 そんな不器用すぎる優しさが伝わってきて、アクトは思わず――

「――了解!」

 とびっきりの笑顔で応えていた。

 ……アイとアマメは、そんなアクトの笑顔に見惚れていたせいか、応えなかった。

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