1/10
序、『スタートライン』
それは『私』が終わった日の思い出。
目の前にボロをまとった少年がいる。
汚れた衣装、汚れた身体、汚れた存在。
だからきっと、その瞳が輝いて見えるのはただのギャップ。
――……視てる。
獣にこんな眼はできない。
相手の動きを観察し、相手の心まで読もうとする視線。
私の心の内側まで見られて、見透かされているなんて気のせい。
――……いま、この子は私だけを視てる。
私の一番大切な人の関心をすべて奪っている憎い存在が、私だけを見ている。
その事実がとても嬉しく、愉しく、どうしようもなく気持ちがいい。
この子を処分するのが、もったいないと思うほどに。
――……プランを変更しよう。そうだ、それがいい。
この子を手に入れてしまおう。手に入れて、私の為に使おう。そんな復讐もアリだ。
だったら、いまから言うべき言葉は『死ね』じゃない――
「――はじめまして、こんにちは」
そして、『私』は『私達』になった。
だから、ここから始まるのは私達の物語。
…………始まった私達が、終わるまでの物語。