4話
『それではこれより入学式を始めます』
機械的な音声が体育館に響く。
何故機械的な音声かというと何処の国際魔法学校でも魔法を教える事ができる教員が少ないため、なるべく教員の人数を減らし経費を削減しているからだ。
悠長に説明してはいるが、今はそんな場合ではない。
俺は幼なじみ?のあかねの隣にいる。
しかもかなり密着した状態で。
(や、やばい…心臓がバクバクしてる)
密着しているせいか過度な緊張のせいか、ろくに音声なんて耳に入ってこない。
しかも止めようと言おうと思っても、あかねが下にうつ向いて顔を上げない。
(マジでどうする…)
打開策が見当たらないまま時間だけが過ぎていこうとしていたが、ふと違和感が壇上にから放たれていた。
あかねside
(うわ〜、どうしましょう、どうしましょう。錬様にあんな大胆な事を言ってしまいました)
私はうつ向いてたまま自分がしてしまった事について振り返っていた。
(う〜、変な子だと思われてないでしょうか?)
自分でしてしまった失敗で、穴があったら入りたくなるような気持ちでいっぱいで仕方なかった。
そんな失敗をどう取り返すか考えてたら、何故だか壇上に意識が急に向いてしまった。
錬side
(なんだこれは…)
この違和感が気になって周りを見ると生徒全員が壇上に目を向けている。
あかねまでもが壇上に意識が向いている。
あかね、あかね、壇上に何かあるのか?』
『いえ、何故だか分かりませんが、気になってしまって仕方ないのです』
今、壇上には生徒会長の話が始まろうとしているだけで特に何も起きてはいない。
『私は今期生徒会の生徒会長を受け持った坂巻 夏海だ。少し悪ふざけが過ぎてしまった事は心から反省している』
詳しくは分からないが多分精神操作系の魔法だろうと俺は頭の中でだけ考えた。
(だが、これだけ大規模でしかも完璧に意識だけを向けるように仕向ける魔法のコントロールは一級品だな)
俺はお世辞抜きでここまで完璧な魔法を見たのは初めてだった。
余りの驚きに身体中の鳥肌がおさまらず、ただ唖然として見ているだけであった…。
『因みに今まで使用していた術式は舞桜というものだ。』
俺はまた驚いてしまった。
普通は自分の術式なんてものは他人には言わない。
何故なら、術式を教えてしまったらそれに合わせた対策を打たれてしまいその術式は使えないも同然にされてしまう。
そのため、プロの魔導師は自分の術式については一切言わない。
さらに、プロの世界では他人の術式は聞かないという1つのマナーでもある。
『しかし、私の魔法でも意識が向かない人物がいるとは驚きだな。これでもかなりの自信があったのだが…』
坂巻会長は、俺のほうを見て苦笑した。
坂巻会長の見た目は、色で例えるなら蒼。
目やロングの髪の色は蒼で染まっている。
あかねが可愛い系なら坂巻会長はクールな雰囲気を持っている。
『とにかく、私が生徒会長になったからには全校生徒を退屈にはさせないからな。これから1年間よろしく頼む』
壇上を降りる姿は凛としていて、更に力強さが感じられた。