1話
『は〜、なんで起きたんだろう…』
国際魔法第三高校、通称「三校」の入学式当日の早朝、まさかの早起きであった。 確かに、特別な時は早く寝る様にはしているが、まさかこんなにも早く起きるとは思わなかった。
俺の名前は桔城 錬。魔法の適性は0で、運動神経、ルックスも普通何処にでもいそうな普通の男だ。
別に、普通に生まれたいわけでは無いが、かといってすぐに特別な事が起こるわけもなくこうして生活しているわけだ。
『くっそ〜、もう少し遅く寝れば良かったか』
そんな独り言を呟きながら回り始めた頭で考える。
(あと、二時間位しないと学校の門も開かないし、二度寝する気分でもないし…)
そんな事を考えていたらインターフォンが鳴った。
『誰だ、こんな早朝から来るのは?』
疑問半分、警戒半分でインターフォンのカメラを覗く…そこには、俺の中では最も親しい友人がいた。
俺は真っ先に玄関を開けたら、桜の花びらが風に舞って少し玄関に入る。
そして、そこにいたのは、赤い髪の美少女だった。
『おはようございます、錬様。こんなに早くからお邪魔してしまいすみません』
美少女は俺なんかに対して深々と頭を下げた。
この美少女は、長月 あかね。
あかねは、俺が魔法を失った時の事故に巻き込まれてたまたま俺と知り合って、今まで過ごしてきた仲だ。
友達以上恋人未満だなんていう関係ではないが、それなりに長い付き合いではある。 『顔を上げろよ。別にいいって、俺も起きてたし。あと、その様ってのなんとかなんないかな。俺はそんな奴じゃないから』
『いえ、私はあの時錬様にこの命を救って下さいました。私は今でもその事を覚えています。そして、あの時私は決めました。この人に一生付いていくと…』
あかねは、上目遣いでチワワのようなつぶらな瞳で見てくる。
(う…卑怯だぞ。そんな目をしてくるのは)
そんな事を心に思っていて言葉には出せなかった。
だって、凄く可愛いんだから仕方ないじゃないか。
そんな事で理由を作っているとあかねがとどめをさしてきた。
(ま、まさか抱きついてくるなんて…)
『いいですよね?』
また、チワワ攻撃を繰り出しながら右手に触れている柔らかい感触が俺にKOをいい渡した。
『わ、分かった。お前の好きにしろ』
そう言って抱きついてきたあかねを離した。
『はい!』
あかねは最上級の笑顔を振り撒いて朝食を作って来ますねと、台所に行ってしまった。
こんな事を毎日やっている俺ですら、まだ耐性が出来ていない。
『今日も晴れるといいな』
そんな一言で今日も始まった。