6
◆
護の様子がおかしいことには、すぐに気づいた。
お昼(の時間ではなかったけれど、そう表現するのが適切だろう)を食べるために入ったお店で、席を確保しておくために護がテーブルに陣取っていた時のことだ。
一人じゃ可哀想だからと言って、注文を私に任せた彌生がそちらに向かい、二人でしばらくなにかを話していて。その後で、明らかに護の顔色が曇ったのだ。
「――なにを言ったの、彌生」
食後のトイレに立ったその後を追って、私は友人に問い詰めた。
彌生はきょとんとして、
「なにをって、なにが?」
「とぼけないで。護に、なにか言ったでしょう」
「ああ、そのこと」
苦笑して、彼女は頭を振った。彌生は吸血鬼には珍しく髪質の癖が強い子で、それを一見すると適当な長さで切り飛ばしたような髪型にしている。そうすると、生来の癖っ毛が自然と流れてまるでセットしたように収まって、すとんとした直毛の多い吸血鬼の女の子のあいだではちょっとした羨望の的だった。
頭を振った拍子に髪の流れが変わり、また違う趣に変化した髪型の少し前髪がかかったその奥から、真っ直ぐな眼差しがこちらを見据えてくる。
「……別に、大したことは言ってないよ。当たり前のことを言っただけ」
「当たり前のこと?」
「そ。宇田飼クンは人間で、吹那は吸血鬼だよって、それだけ。事実でしょ?」
私は顔をしかめた。
吸血鬼と人間という種族差。それは確かに、ただの事実だ。それ以上でもそれ以下でもない。だけど、それだけで護があんな風にテンションを落とすだろうか。私にはとてもそう思えなかった。私の知っている護は――もっと、馬鹿だ。
「……それだけ? 他には、なにも言ってないの?」
「言ってない言ってない。言ってたとしても、言わないけど」
「ちょっと」
「ほら、行こ。女子が連れ立ってコソコソ話なんて、印象悪いよ?」
「あ、もう。待ちなさいって――」
彌生のあとを追いかけて外に出ると、そのすぐ先で壁に寄りかかっている人物がいた。少し茶色がかった髪色の、ふんわりした髪型――こういうヘアスタイルも、けっこう羨ましい――をした人間、新井美雪という名前の女の子は、こちらを見るとぺこりと頭を下げた。
「……どうしたの?」
「あ、なんでもないです。あたしも、ちょっとお手洗いに」
えへへと笑って、私達と入れ違いにトイレに入っていく。
「どうかしたのかしら」
「さあ? わたしらが陰口でもしてるかもって思って、なかに入りづらかったんじゃない?」
「なんで私が陰口なんてしなきゃいけないのよ」
「だって吹那、すっごい目であの子のこと睨んでたし」
「睨んでないわよ。失礼なこと言わないで」
「いや、それはわかってるけどさ。吹那っていっつも不機嫌そうだし、眉間に皺寄ってるし。そんな感じで見られたら、睨まれてる!ってなっても仕方ないでしょ」
目つきが悪いというのはお母さんからも常々言われていることで、自分自身そうした自覚もあったから、私は強く反論できず、けれど納得もできなかった。
「ま、あの子が怯えてたとしても、吹那だけのことじゃないだろうけどね」
「そんな明け透けなフォローなんて、して欲しくないんだけど。……彌生は別に、誰かに怯えられたりしないでしょ」
私の知り合いのなかでも、彼女は特に社交性が高い吸血鬼だ。誰とでもすぐ仲良くなるし、打ち解けるのも早い。私とは正反対のタイプかもしれない。だからこそ、仲が良いということでもあるのだろう。
「いやいや。そんなことないって。あの子にとっては、わたしだって変わんないでしょ」
「どうして?」
彌生は怪訝そうに眉をひそめて、
「だって。わたしら、吸血鬼だし」
ああ、そうか。
どうしてそんなことに思い至らなかったのか。自分の浅はかさに私は顔をしかめた。
吸血鬼と人間。血を奪う側と、奪われる側。奪われる側が、奪う側を恐れるのは至極当然のことだ。
私がそれを失念していたのは、多分に護のせいだ。あまりに無頓着に距離を詰めてくる態度に感化されて、いつの間にか私もその悪影響を受けていたらしい。なんともおぞましいことだった。
「納得した?」
「……した」
ふふ、と笑い声。隣を見ると、彌生が興味深そうに目を細めている。
「珍し。吹那がそんなことも気づかないなんて、やっぱり恋って偉大なんだねぇ」
「そういう言い方、やめて」
友人がにやにやと笑ったままなので、私はそれに、と続けた。
「――多分、それだけじゃないと思う」
「私を変えたのは恋だけじゃないって、そういう話?」
「やめてってば。……さっきの、新井さん。私達のことが怖いっていうのはあるかもしれないけど、でもそれだけだとは思えない」
どうして私にそんなことが断言できるのかと言えば、それはこの数時間、私があの子の様子をよく観察していたからだ。
そもそも、私が藤原先輩からの申し出を受けた理由の一つが、彼女に会うことだった。電話口で聞いた、あのふざけた声の持ち主がいったいどんな人間なのか、直接顔を見てやろうというつもりだったのだ。
それで、直接会ってみた感想は――なんてことはない。
彼女は普通の女の子だった。
可愛くて、元気で。そういう風に、自分を相手に見せようと必死に努力しようとしている――普通の人間の、女の子。違うのはその相手が普通の人間ではないというだけで、
「……なんだか、痛ましかった」
「そうだね。わたしも、そう思った」
私と似たような印象を持ったらしい。溜息をつくように同意してきた彌生が肩をすくめた。
「ま、仕方ないでしょ。だってさ、“吸血鬼と人間”なんだから」
「……そうね」
そういうことなのだ。
結局は、そうした問題は全てその一点に帰結する。吸血鬼と人間という、ただの事実に。
「あ、こっちでーす! こっちこっち!」
大きな木の下の影から、ぶんぶんと護の友人が手を振っていた。
お昼を食べた店が混んできたので、迷惑にならないよう外で待ってくれていた男の子三人は、表情がまったく違っている。澄まし顔の藤原先輩はともかく、護の友人が楽しそうにしてくれているのはよかったけれど、沈んだ表情の護のことが気になった。
「……大丈夫?」
「え? うん、ぜんぜん平気だよ」
下手に取り繕った笑顔が癇に障った。じろりと睨みつけると、護は困ったように笑って、そうした態度がさらに私を苛立たせた。
「だったら、ちゃんとして。心配かけさせないで」
「……うん。わかった。ごめんね、吹那さん」
――わかってない。
そのことだけははっきりとわかったので、私は口を閉じた。
こんなところで口論しても仕方がないし、周りに迷惑をかけるなんてもっとしょうがない。この話の続きは別の機会にするべきだろう。
「あ、美雪ちゃんも来たね。それじゃ、次はどこを回ろうか」
一人、大人の余裕を見せつけてくる態度がひどく疎ましく思えて、私は一つ年上の吸血鬼の先輩を睨みつけた。
視線を受けた藤原先輩は、平然と、それに微笑んだだけだった。
◇
吹那さんに叱られて、僕は大いに反省した。
彼女の言うとおりだ。
せっかくのデート――グループデートなんだから、楽しまないと。
そして、それ以上に、吹那さんに楽しんでもらえるよう努力する義務が僕にはあるのだった。これで、「盛り上げるどころか盛り下げるなんて最低」だなんて結果になったら、二度とデートしてもらえなくなるかもしれないんだから!
こういう時、頼りになるのは付き合いだけは長い啓吾という悪友の存在だ。
啓吾は朝からずっとテンションMAXの状態をキープし続けていて、ちょっと鬱陶しいくらいではあったけれど、場を盛り上げようと道化役を買ってでてくれているのは明らかだった。
そして、往々として道化役というのは一人よりも二人のほうがいいものなのだ。だって、すくなくともボケとツッコミは成立するからね。
というわけで、僕と啓吾は連携して、盛り上げ役に努めることに終始した。
結果は、まあまあ、上手くできたと思う。
藤原はどうでもいいとして、久城さんはノリのいい人だったし、新井さんも普段から学校で話しているからなんでも話に食いついてきてくれる。吹那さんの態度はいつも通りだったけれど、不機嫌というわけではないように見えた。
ただ――楽しそうにはしゃいでいる新井さんの笑顔をみると、頭のなかにふっと、久城さんから言われた言葉が浮かんできてしまい、僕はあわててそれをかき消した。
……駄目だ駄目だ。
今はそんなことを考えないで、この場を盛り上げろ。
そう。それで、新井さんにも楽しんでもらおう。
今日のこの日はせっかく藤原と遊べる機会で、しかもグループデートのほうがいいって新井さんが言ったんだから。吹那さんほどにではもちろんないけれど、新井さんにも、目いっぱい楽しんでもらいたいというのは掛け値なしの僕の本音だった。
実際、新井さんはとても楽しそうにしていた。
僕と啓吾の馬鹿話に笑ってくれて、藤原と話すときはとても幸せそうで。
最初、吹那さんや久城さんと話すのはちょっと距離感をはかっていた感じはあったけれど。社交的な彼女はすぐに会話の距離感をつかんで、今は僕らの後ろを三人で歩きながら楽しそうにおしゃべりしている。
……よかった。いい雰囲気っぽい。
どうやら、『グループデートを盛り上げて吹那さんからの高評価を手に入れろ作戦』は大成功をおさめられそうだ。
ほっと胸をなで下ろしていると、啓吾に肩をつかまれた。
「おい、護。行くぞ」
「どこに?」
「飲み物だよ。こんだけ暑いんだし、こまめな水分補給は大事だろ。全員の分、買って来るから荷物持ち手伝え」
こいつ……気遣いマスターか?
僕は愕然とした。
確かに、今日も相変わらず残暑は厳しくて、そろそろ正午をむかえようとする今、気温はピークになろうとしていた。
全員、飲み物のペットボトルは持っていたけれど、それもなくなりかけている。
というか、まず、僕と啓吾がもう残量が尽きていた。それだけ頑張ってしゃべりつづけていたのだから、褒めてほしい。
みんなの飲み物の残りがすくなくなっていることに気づいて、このタイミングで買ってこようとする、その目配りのよさ。
――本当に、この啓吾は僕の知っているあの啓吾なのか?
昨日の夜、恋愛ハウツー本でも読んだのだろうか。
ともかく僕は感心したし、もちろん啓吾の提案を否定する理由なんてあるはずがない。
吹那さんたちに飲み物を買ってくることを告げて、僕と啓吾は意気揚々と近くの自動販売機へとむかった。
ふふふ、これでさらに高評価ポイントゲットは間違いない。
よくやったぞ啓吾、褒めてやる。
「いやー、天気はいいし、女の子は美人ばっかりだし。最高だな!」
その啓吾の表情も晴れ晴れとしていた。
そうだな!と悪友と肩をくんで、僕は心から同意して、ふと気になった。
「……でもさ、啓吾はいいの?」
「ああ? なにがだよ」
「新井さん。すっごく楽しんでくれてるけど、それは藤原先輩と一緒だからって理由がおおきいわけでさ。そういうの、間近にみててどうなのかなって」
啓吾は、新井さんのことが好きなんだと思う。
本気ではないかもしれないし、新井さんには好きな人がいて、その好きな人が今日この場にいることも当然わかっていたとしても。
啓吾としては、やっぱり、いい気持ちにはなれないんじゃないだろうか。
すくなくとも。僕なら、好きな人のそういう場面を見たら落ち込んでしまいそうだ。
「ああ、それか」
啓吾は顔をしかめて、すぐに、にかっと大きな笑顔をつくった。
「いいんじゃね? だって、新井ちゃん、すっげえ喜んでるじゃん」
「啓吾、お前……」
聖人か? 悟りでも開いたのか?
僕と吹那さんのことで理不尽な怒りを叩きつけてきた、あの頃の啓吾はどこへいった?
「いや、護には腹立つけどな」
立つのかよ。
「まあ、今日、新井さんの好きな男ってのに会ってみて、もしイケ好かないやつだったら一発ぶん殴ってやろうかとか思ってたんだけどよ」
いや、そんなこと思ってたのかよ。
「さすがに狂暴すぎるだろ」
「冗談だよ。冗談。……けどなあ」
啓吾はがしがしと自分の頭をかいて、
「実際会ってみたら、新井ちゃんは幸せそうだし。あの藤原って人も、話してみたらめちゃくちゃいい人だしな」
まあ、それはわかる。
藤原がいい人なのは、間違いない。
だって、吸血をせずに限界を迎えようとしていた吹那さんのために、下手な芝居までうって強引に吸血行為させようとしたくらいだ。
いくらおなじ吸血鬼のよしみがあるからって、ただの他人にそんなことをするなんて(結果、僕に殴られているわけで)、よほどの親切だろうと思う。もっとも、吹那さんに言わせれば「お節介」とのことだけど。
「新井ちゃんが幸せなら、それでいいのさ」
啓吾はふっと笑った。
こいつ、実はいい奴なのかもしれない――不覚にも、僕がそんな感想を胸に抱きそうになった直後、
「……で、だ。護。――彌生さんって、彼氏とかいるのかな?」
にへらと相好をくずした悪友の表情は、僕のそれまでの評価をひっくりかえすのに十分すぎた。
前言撤回。
やっぱり駄目だ、こいつは。
「さあ。本人に聞いてみれば? でもまあ、色々と難しいんじゃないかなとは思うけど」
「えー、なんでだよ」
相手が吸血鬼だからとは、さすがに言えない。
ブーブーとうるさい啓吾の文句を右から左に聞きながしながら、僕らは自動販売機で全員分の飲み物を買って、
「ほい」
「おい、どうして僕が全部持たされるんだよ!」
「うるせーうるせー。おら、行くぞ」
啓吾はさっさと歩き出した。
僕は六本のペットボトルを両腕にかかえて、そのあとを追って――僕の前をいく啓吾の足が止まった。
手伝ってくれる気になったのかと思ったけれど、そうではない。
「新井ちゃん――?」
向こうから、新井さんがやってきている。――泣きながら。
「新井さん……!? ど、どうしたの!」
声をかけると、新井さんはこっちに気づいて。その瞳から、ぶわっと涙があふれた。
「ごめ……、なんでも、ない」
あわてて指先で目元をぬぐいながら、ぎこちない笑顔をつくろうとする。その拍子に、ポロポロと透明な涙がこぼれた。
「いや、なんでもないわけが……。とりあえず、ハンカチ――ああ、手がふさがってる!?」
たくさんのペットボトルを抱えているせいで身動きのとれない。
そんな僕のお粗末さをみて、新井さんがくすりと笑った。ほうっと大きく深呼吸をして、
「――ごめんね。ホント、なんでもないから。――ちょっと、メイク、なおしてくるね!」
にっこりと微笑むと、新井さんは小走りに駆けていった。
「新井さん、待って――おい、啓吾。なにやってんだよ、止めなきゃ」
隣の悪友を見て、ぎょっとした。
それまで黙り込んでいた啓吾は、一目みてわかる怒りを顔中に浮かべていて、新井さんがやってきた方角をぎろりと睨みつけた。
「……新井ちゃんのほう、頼むわ」
今までの付き合いで、まるで聞いたことのないようなドスの効いた声。
「いや、待てって! なにするつもりだよ、おい!」
ゆっくりと歩いていく啓吾は答えない。
その背中が、答えるまでもないだろうと語っていた。
「ああ、もう。どうすりゃいいのさ――」
ペットボトルを抱えているせいで頭を抱えることもできず、僕は地団太を踏んだ。
どうする。
新井さんを探しにいくべきか、啓吾を止めるべきか。
泣いてる新井さんのことを放っておけないのは間違いない。けれど、啓吾を放っておいたらとんでもないことになりそうなのも確かだ。
どっちがより緊急性が高いかを考えて、決断する。
――啓吾を止めよう。
そのあとで、新井さんから話を聞こう。ちょっと時間をおいたほうが、新井さんも話がしやすいかもしれないし……。
そんなふうに考え事をしながら、あわてて歩き出したせいだろう。急に視界にあらわれた誰かにぶつかって、僕はおもいっきりのけぞってしまった。
「きゃ――」
「うわ、ごめんなさい!」
手からこぼれたペットボトルがばらばらに転がっていくのが見えたけれど、それよりも先にぶつかった人の確認が先だ。というか、自分の世話のほうが先だった。
両手がふさがっていたせいでろくにバランスがとれず、そのまま地面に倒れ込みかけて、
「……っと」
ふわりと右腕をつかまれ、引き寄せられて、すんでのところで僕は盛大に転ばずに助かった。
「ふふっ。大丈夫?」
僕の腕をつかんでくれた女の人がくすりと微笑んでいる。
「あ、ありがとうございます! すみません、考えごとしてて――ああ!?」
僕は大丈夫だったけど、その代わりにペットボトル達がおむすびころりんしてる!
地面に散乱したペットボトルを追いかけて、あわてて拾い集めた。一、二、三、と回収していって、最後の一本が見つからない。
「――はい、どうぞ」
と思ったら、目の前のお姉さんが拾ってくれていたらしい。
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして」
お姉さんはにっこりと微笑んだ。
多分、大学生くらいだろう。背の高い、綺麗な人だった。
なんというか――多分、僕が絵描きとかで、この人をモデルにして絵を書いたとしたら、絶対にタイトルは「理想のお姉さん」にするだろう、って思えるような人だ。
全体的にはさっぱりとして動きやすそうな服装だけど、茶色がかった長髪にはしっかりとパークのつけ耳をしているのがポイント高い。風に乗ってほんのわずかに届く香水の香りが、なんだかとっても大人って感じで――って、なに呑気に相手の観察なんてしてるんだ、僕は! そんな場合じゃないだろ!
「あの、ごめんなさい! 僕、ちょっと急いでて――。ぶつかったりして、本当にすみませんでした!」
「うん、平気平気。転んだりしたら危ないから、気をつけたほうがいいよ?」
綺麗なお姉さんはぱたぱたと手をふって、
「はい、これ。急いでるんでしょ?」
僕が両腕に抱えたペットボトルの山に、そっと自分の持っているものを乗せて、そのお姉さんはにこりとした。
「いってらっしゃい。怪我しないようにね」
「……はい、いってきます! ありがとうございました!」
「ふふっ。頑張れ~」
「頑張ります!」
うおお、なんていい人なんだ。
ろくにお礼もできなかったけど、これから一週間、僕はあのお姉さんにたくさんの幸せが訪れますようにって、朝と夜、どこかの誰かに祈ってから眠ることにしよう!
心のなかで感動の涙に打ち震えながら走り出す。
……僕が間抜けなトラブルを起こしていたせいで、啓吾の姿はもう見えない。
どうかとんでもない事態が起こっていないよう、どこかの誰かにむかって祈りながら、僕は駆けた。