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『日常』の幕開け
突き抜ける様な青空が頭上に広がり、解放的な気分にさせる。
一つ深呼吸をすると、風で囁く木々の香りが体中に染み渡る。
今日も、良い天気だ。
「圭君、何でボーっと立ってるの? 早く学校行こうよ」
誰だ、人の解放感を台無しにしてくれたのは。
うむ。知らない人だな、無視して早く学校に行かなければ。
そう思い立ち、早足で歩き出す。
「ちょ……ちょっと待ってよぉっ」
後ろから、声が聞こえる様な気がするが、空耳と信じて気にしない事にした。
「待ってってばっ! ……うーっ、だったらこうだっ」
「ふぐぇっ」
なんとも情けない声を出してしまった。
後ろから襟を掴まれて、俺の歩みは止まった。
そろそろ、勘弁してやるか。
俺は、襟を掴んだ犯人に向き直る。
「おっ、居たのか真奈美。お早う」
「居たのか、じゃ無いよっ。明らかに真奈美を無視してたでしょっ」
小学校低学年くらいの子、いや、それより下でもやらなそうな怒り方。
頬を膨らませながらその場を飛び跳ねる目の前の少女。
栗原 真奈美。
生まれてからの16年間と長いこと一緒に居る、いわゆる幼なじみと言う奴だ。