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第2話   作戦を練ります

「……はぁ」


 朝。洗面台の鏡を見つめながら、私は今日何度目かわからないため息をこぼした。


 ずっと、ずっと夢にまで見た再会だった。もし彼に会えたら、どんな顔をして、どんな言葉をかけよう。あの場所で引き裂かれたあの夜の分まで、どうやって愛を伝えよう。毎日そんなことばかり考えていたのに。


『こっち(男)だからさ〜、残念』


 同僚の残酷な囁きと、私から振り払われた和仁さんの手のひらの冷たさが、フラッシュバックする。それに、そもそも仮に恋愛対象が女だったとして自分を好きになる保証なんてなかったはずなのに思い上がっていた。


 こうなってしまった今、どう振る舞うのが正解なのかわからない。本当に彼はあの子が好きなのか。私にはもう、入り込む隙間なんてないのか……。弱気な考えばかりがぐるぐると渦巻き、視界が滲みそうになったその時。


「にゃぁ」


 足元で柔らかい声がした。見下ろすと、飼っている愛猫が私の足にすりすりとおでこを擦り付けている。まるで「なに泣きそうな顔してるのよ」とでも励ましてくれているみたいに。


「……そうだよね」


 私は両手でパンッ!と頬を叩いた。弱気になるなんて、私らしくない。江戸で名を馳せた元・人気遊女のプライドが廃るというものだ。男の一人や二人、もう一度振り向かせてみせなくてどうするんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ごめん! 今日めちゃくちゃ仕事山積みでさ、これ全部お願いしていい!?」


「ええっ!? これ今日中ですか……終わらないですよー!」


 出社するなり、先輩からどさりとデスクに積まれたファイルの山。


 前世の技術なんて、現代の容赦ない事務作業の前では何の役にも立たない。私は半泣きになりながらキーボードを叩き始めた。


(あーもう、パニックになりそう……。前世の見習い時代も、雑用が多くていつもこんな風に慌てふためいてたっけ)


 ふと、忙しさに脳がバグったのか、遠い昔の記憶が蘇る。両手いっぱいに色々なものを抱えて転びそうになっていた私に、すっと手を差し伸べてくれた優しい声。


『大丈夫? 僕がやるよ。君は少し休んでて』


 損な役回りばかり引き受けてくれる、お人好しで誠実だった【あの人】の笑顔。


……あれ?


 ちょっと待って。和仁さんがこの時代に転生しているってことは、もしかして、あの人も……いや、他にも生まれ変わっている人がこの世界にいるんじゃ……?


「こーら、 ぼーっとしない! 手が止まってるわよ!」


「は、はーい!! すみません!」


 先輩の容赦ないツッコミで、私はハッと我に返った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お昼休み。


 オフィスの近くにある、お気に入りのフレッシュジュース専門店。冷たいアサイーのスムージーをストローで吸っていると、向かいに座る同期の友人が不思議そうな顔で私を覗き込んだ。


「今日なんか変じゃない? 朝からずっとぼーっとしてたし」


「えっ、そうかな?」


「うん。なんか悩み事? 話なら聞くよ」


 心配そうに首を傾げる彼女を見て、私はストローから口を離した。


(……言えるわけがない。前世の記憶があって、元旦那が男の後輩といい感じになっててショック受けてるなんて)


 もしほんの少しだけ、「前世」というオカルトチックな言葉を濁して相談できたら、少しは心が軽くなるだろうか。


「いや、んーとね……。実は私、昔の……ぜ、んせ……」

言おうとした瞬間だった。


――ギリッ。


「……っ!?」


 しまった、口が、動かない。声帯が麻痺したように、喉の奥がカラカラに乾いて、見えない太い糸で唇を縫い合わされたような感覚に陥った。


 昔からずっとそうだ。前世の話をしようとすると、必ずこの見えない力が働いて、私は何も言えなくなる。


「えっとー、 ぜんせ……何?」


「……ううん! なんでもない! ちょっと寝不足なだけ!」


 私は無理やり笑顔を作って、スムージーを一気に飲み込んだ。


……やっぱり、おかしい。


 この世界には、私の知らない何か強大な力が働いている気がする。そもそも生まれ変わったのだってなんらかの意味があるはずだ。答えはすぐにはきっとわからない。だけどあの人のことを簡単に諦めるわけにはいかない、だって生まれ変わっても添い遂げるって約束したんだから。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

なんか最近抹茶ラテにハマってるんですけど、牛乳って太るんですよねえ(T ^ T)ジュースよりマシと思って飲みまくってたら太りました、、顔がどんどん丸くなっていき、気がついたらお腹やばくてスカートが入らない、、死にた!


本題に戻りますが、彼女の記憶にフラッシュバックした、前世で助けてくれた「あの人」の正体とは……?そして、彼は覚えているのか?

次回、『営業部での彼』

厳しいイケメンってやばくないですか?私はちなみに間違いなく沼ります。そんな彼のお話です。みなさんが沼るタイプぜひ教えてください!続き気になると思っていただけたら、ぜひ下にある☆☆☆から応援やブックマークをお願いします!執筆の励みになります♡

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