第9話 鬼姫の恋愛シミュレーションが完璧だった
桃太郎が鬼姫の手に触れた。
鬼姫が真っ赤になった。
「どうしたの?茜。」
「手が……。」
桃太郎がそのまま手を握る。
鬼姫はさらに赤くなった。
(かわいいな。)
鬼姫は少し考えてから言った。
「久しぶりに男の人と手を繋ぎました。」
桃太郎
「へえ。」
鬼姫
「遠足の時以来かな。」
桃太郎
「え?」
「遠足?」
鬼姫は頷いた。
「はい。」
桃太郎は眉を上げる。
「元彼とは手を繋がなかったのか?」
鬼姫
「繋いでません。」
桃太郎
「腕組む派とか?」
鬼姫
「それもしてません。」
桃太郎
「……ん?」
少し間。
「付き合ってたんだよな?」
鬼姫は普通に頷く。
「はい。」
桃太郎
「でも何もしてない?」
鬼姫
「してません。」
桃太郎
「え?」
鬼姫は真面目な顔で言った。
「でも大丈夫です。」
桃太郎
「何が?」
鬼姫はにこっと笑う。
「全部頭の中ではしましたから。」
桃太郎
「……。」
鬼姫は胸を張った。
「シミュレーションは完璧です。」
桃太郎
「何の?」
鬼姫は真っ赤になった。
「……全部です。」
桃太郎
「……全部?」
鬼姫は真っ赤になった。
「はい。」
桃太郎は思った。
(……。)
(この子。)
(思ってたよりヤバい。)
「ちなみに……そのシミュレーションの相手とかっているの?」
桃太郎が聞いた。
鬼姫は少し考えてから答えた。
「桃太郎様です。」
桃太郎は少し笑った。
「ふぅん。」
「俺としてるんだ。」
鬼姫は真っ赤だった。
「はい。」
桃太郎は少し意地悪に言う。
「そんなに好きなの?」
鬼姫は少しうつむいた。
そして小さく言った。
「……好きです。」
桃太郎は少し黙った。
(直球だな。)
鬼姫は慌てて言う。
「でも!」
「ちゃんと段階があります。」
桃太郎
「段階?」
鬼姫は真面目な顔になった。
「はい。」
「まず手を繋いで。」
「それから少し仲良くなって。」
「それで結婚の話をして。」
桃太郎
「順番おかしくない?」
鬼姫
「え?」
桃太郎は笑った。
「結婚早いだろ。」
鬼姫は少し考えた。
「鬼の国では普通です。」
桃太郎
「そうか。」
鬼姫は少し恥ずかしそうに言う。
「でも今日は……。」
桃太郎
「ん?」
鬼姫
「手を繋ぐところまで進みました。」
桃太郎
「……。」
(かわいいな。)
「まあ、結婚の話もしたな。」
桃太郎が言った。
鬼姫はこくっと頷く。
桃太郎は少し笑う。
「全部シミュレーション通りなのか?」
鬼姫は少し考えた。
「はい。」
桃太郎
「本当か?」
鬼姫
「はい。」
少し恥ずかしそうに続ける。
「今は……。」
「手を繋ぐところです。」
桃太郎
「……。」
鬼姫は指を見た。
桃太郎の手を握っている。
「次は。」
桃太郎
「次?」
鬼姫は真っ赤になった。
「……。」
桃太郎はにやっとする。
「言ってみろよ。」
鬼姫は小さく言った。
「キスです。」
桃太郎
「早いな。」
鬼姫は慌てた。
「でも順番通りです!」
桃太郎
「順番なのか。」
鬼姫は真面目に頷く。
「はい。」
桃太郎は思った。
(……。)
(こいつ。)
(全部計画してるな。)
鬼姫は慌てて言う。
「でも!」
「桃太郎様が嫌ならしません!」
桃太郎は少し笑った。
「嫌とは言ってない。」
鬼姫
「え?」
桃太郎
「ただ。」
少し距離を詰める。
「シミュレーション通りにいくかは、わからないぞ?」
鬼姫は完全に真っ赤になった。
鬼姫
「大丈夫です。」
桃太郎
「何が?」
鬼姫は真面目な顔で言った。
「初夜まで全部考えてます。」
桃太郎
「待て。」
桃太郎は思わず笑った。
「それ言っていいのかよ。」
鬼姫
「え?」
桃太郎は少し意地悪に言う。
「お前、危ないぞ。」
鬼姫はきょとんとしていた。
桃太郎はにやっとする。
「色々俺としてるんだな。」
鬼姫は真っ赤になった。
「はい……。」
桃太郎はさらに聞く。
「他の男ともしてるのか?」
鬼姫は首を振った。
「してないです。」
桃太郎
「ふぅん。」
桃太郎はニヤニヤする。
鬼姫は恥ずかしそうに言った。
「桃太郎様だけです。」
桃太郎
「……。」
(……やばい。)
(それは効く。)
鬼姫は小さく続ける。
「桃太郎様が好きなので。」
桃太郎は少し黙った。
(こいつ。)
(全部本気なんだよな。)
「じゃあ、これから楽しみだな。」
桃太郎は少し笑った。
「ほら、今日は疲れただろうから寝ろ。」
鬼姫は少し名残惜しそうに頷く。
「はい。」
立ち上がろうとしたとき。
桃太郎が言った。
「なあ、茜さ……。」
鬼姫が振り返る。
「はい?」
桃太郎は少しだけ笑う。
「本当に俺のこと好きだな。」
鬼姫は少しも迷わなかった。
「はい。」
即答だった。
桃太郎は少し黙った。
(悪くない。)
鬼姫は恥ずかしそうに言った。
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
鬼姫が部屋を出ていく。
扉が静かに閉まった。
桃太郎はベッドに倒れ込む。
(……。)
(このまま結婚もいいかもしれない。)
(顔いいし。)
(胸でかいしな。)
桃太郎は少し笑った。
(しかも俺のこと好きだし。)
「悪くないな。」
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