第7話 鬼姫、桃太郎の実家に行く
「部屋は空いているし、ここに泊まればいい。」
鬼王が言った。
「それに家族の方が心配されるといけない。連絡もしないといけないぞ。」
「はい。」
桃太郎は素直に頷いた。
(連絡したことないけどな。)
犬養が小声で言う。
「今の聞いたか。」
猿田が頷く。
「絶対してないな。」
鳥山が呟く。
「桃太郎の家、放任主義すぎる。」
鬼姫は少し驚いた顔をした。
「桃太郎様、連絡あまりされないんですか?」
桃太郎は肩をすくめる。
「まあ、うちはそんな感じだ。」
鬼王は豪快に笑った。
「ははは!いいじゃないか!」
「男は自由なくらいがちょうどいい!」
鬼王子も頷く。
「確かに。」
鬼姫は少し考えてから言った。
「でも、心配はしますよね。」
桃太郎は少しだけ黙る。
(……。)
鬼姫はにこっと笑った。
「よかったら、私がご挨拶します。」
桃太郎
「早い。」
犬養
「もう親に行く。」
猿田
「鬼のスピードすごい。」
鳥山
「逃げ場なし。」
鬼王子が言った。
「ご家族が心配されるといけないから、やっぱり姉さんが連絡したらいいんじゃないか。」
「そうね。」
鬼姫が頷いた。
「やっぱり連絡しますね。」
そしてにこっと笑う。
「皆様のご実家の番号を教えて下さい。順番に連絡しますね。」
犬養、猿田、鳥山は顔を見合わせた。
「……。」
「まあいいか。」
「どうせ心配してないしな。」
こうして――
俺達は家族に連絡をしてもらった。
犬。
猿。
雉。
順番に。
そして最後が俺だった。
鬼姫は丁寧に電話をかけた。
「もしもし。」
「結婚前提にお付き合いさせていただいております、鬼ヶ城茜と申します。」
桃太郎
「待て。」
犬養
「始まった。」
猿田
「もう遅い。」
鳥山
「諦めろ。」
鬼姫は続ける。
「今日桃太郎様が、家にいらしてます。」
「しばらく鬼ヶ城王立連邦の観光をしてから帰宅ということになります。」
「その際は、鬼ヶ城の方で宿泊します。」
桃太郎
「待て待て待て。」
犬養
「止めるな。」
猿田
「もう進んでる。」
鳥山
「完全に公式報告だ。」
鬼姫は真面目な声で続けた。
「今度結婚前のご挨拶にうかがわせてください。」
桃太郎
「誰が言った。」
鬼姫
「本当に桃太郎様が優しくて……。」
桃太郎は頭を抱えた。
(……終わった。)
その頃――桃太郎の家。
「おじいさん。」
おばあさんが言った。
「桃太郎が結婚するみたいで、鬼ヶ城茜さんという方から連絡があったのよ。」
おじいさんはお茶を飲みながら言った。
「え?」
一拍。
「……やっとか!」
おばあさんが頷く。
「よかったわねぇ。」
おじいさんは満足そうに言った。
「鬼の娘さんか。」
「いいじゃないか。」
「しっかりしてそうだ。」
「桃太郎にはもったいないくらいだ。」
「ほんとねぇ。」
――そんな会話が交わされていた。
その頃。
鬼ヶ城。
桃太郎は頭を抱えていた。
「おい。」
鬼姫を見る。
「結婚前の挨拶って……。」
鬼姫は少し不安そうに言った。
「え?」
「駄目ですか?」
鬼姫は寂しそうにうつむいた。
桃太郎は少し黙った。
犬養が小声で言う。
「泣かせるなよ。」
猿田が頷く。
「ここで断ったら鬼ヶ城から出られないぞ。」
鳥山が呟く。
「物理的にも。」
桃太郎はため息をついた。
「……いや。」
鬼姫を見る。
「今度来いよ。」
鬼姫が顔を上げた。
「え?」
桃太郎は少し笑う。
「挨拶してくれ。」
鬼姫の顔がぱっと明るくなった。
「はい!」
犬養
「決まった。」
猿田
「完全に決まった。」
鳥山
「おめでとう。」
桃太郎は思った。
(……なんでこうなった。)
「婚約成立だな!」
三人が声を揃えて言った。
「でも、良かったじゃん。桃のタイプだろ。」
猿が言う。
「確かに……。」
桃太郎は小さく呟いた。
「勝ち組だよな。」
雉まで頷く。
犬養がにやっと笑った。
「好きだろ?ああいう感じ。」
桃太郎は少し考える。
「……確かに。」
(胸がヤバい。)
(顔もかわいい。)
(ありだな。)
犬養が言った。
「今、顔に出てるぞ。」
猿田が頷く。
「完全に落ちかけてる。」
鳥山が呟く。
「早いな。」
桃太郎は酒を飲んだ。
「いや、落ちてない。」
犬養
「言い訳。」
猿田
「一番怪しいやつ。」
鳥山
「もう半分落ちてる。」
その時。
鬼姫が戻ってきた。
「桃太郎様!」
桃太郎
「……。」
犬養
「来た。」
猿田
「本命。」
鳥山
「頑張れ。」
鬼姫は嬉しそうに言った。
「ご家族の方、とても優しかったです!」
桃太郎は思った。
(……もう。)
(完全に外堀埋まってるよな。)
「今日はお祝いだな!」
鬼王がウィンクした。
桃太郎は固まった。
「……何のですか?」
犬養が肩を叩く。
「決まってるだろ。」
猿田が頷く。
「婚約。」
鳥山が言った。
「成立。」
桃太郎
「してない!」
鬼王は豪快に笑った。
「ははは!」
「細かいことは気にするな!」
鬼王子も笑う。
「そうだな。」
鬼姫は少し照れていた。
「お父様……。」
鬼王は酒を掲げた。
「今日はめでたい日だ!」
「乾杯!」
皆が酒を持ち上げた。
「乾杯!」
桃太郎も酒を持った。
(……。)
(鬼退治に来たはずなんだけどな。)
鬼姫が隣で嬉しそうに言った。
「桃太郎様。」
「ん?」
「今日はとてもいい日ですね。」
桃太郎は少しだけ笑った。
「……そうだな。」
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