第2話 鬼退治に来た桃太郎を歓迎することになった
桃太郎が鬼ヶ島に向かっているという情報を聞きつけた鬼姫は、クローゼットを開けた。
「ちょっと朱羅、来てー。」
「何、姉さん。」
朱羅が部屋をのぞく。
鬼姫は服を何枚も抱えていた。
「服選ぶの手伝って。」
「は? どこかに行くの?」
鬼姫は当然のように言った。
「桃太郎様がいらっしゃるの。」
朱羅は固まった。
「は?」
「どこ情報?」
「イケコミュ情報。」
「マジか……。」
朱羅は少し考えた。
「服はそのままで良くない?」
鬼姫は目を丸くする。
「何で?」
「桃太郎様イケメンだし、かわいいの着ないと。」
朱羅は真顔で言った。
「いや、桃太郎ヤバいから。」
「むしろパンツ見えないやつとか、胸開いてないやつの方がいいんじゃない?」
鬼姫はショックを受けた。
「え?」
「かわいくないじゃん。」
朱羅はため息をつく。
「姉さん。」
「目的忘れてない?」
鬼姫は首をかしげた。
「何?」
朱羅は言った。
「桃太郎は姉さんを見に来るんじゃない。」
スマホを見せる。
美女革命ランキング。
三位。
鬼姫。
そして拡大された写真。
朱羅は言った。
「胸だと思う。」
「朱羅ーーーー!!」
鬼姫はスマホを見つめた。
「何で私の胸が強調された写真が出てるの?」
朱羅は肩をすくめる。
「知らんよ。」
鬼姫は画面を拡大した。
「それに……こんなに大きくない気がするけど。」
朱羅は一瞬見てから言った。
「加工じゃない?」
鬼姫はすぐに頷いた。
「だよね。」
朱羅はスマホをもう一度見た。
「いや、こんなもんかも……。」
朱羅が言った。
「いや、盛ってるでしょう。」
鬼姫が即座に言う。
「誰、こんなに盛ったの?」
「知らん。」
朱羅は肩をすくめた。
(姉さん……絶対気づいてないけど。)
(盛られてないと思うな。)
(姉さん、自分が巨乳だって分かってないからな……。)
鬼姫はスマホを見ながら首をかしげた。
「でも、これくらい大きかったらいいかもね。」
「私、そんなに胸大きくないし。」
「……。」
朱羅は黙った。
(いや、大きい。)
(むしろ鬼ヶ島でもトップクラスだ。)
(だからランキング三位なんだろう。)
朱羅はため息をついた。
「姉さん。」
「何?」
「その認識で外出るのやめて。」
「あ……お父様だ。どうしたの?」
鬼姫が振り向くと、鬼王が立っていた。
鬼王は穏やかな顔で言った。
「今から桃太郎が来るらしい。」
鬼姫は目を輝かせた。
「え、本当!?」
鬼王は頷く。
「きっと鬼ヶ島を退治しに来たのだろう。」
「変な噂が流れていたみたいだからな。」
「ああ、あの噂か。」
朱羅が言った。
鬼姫は首をかしげる。
「何それ?」
朱羅は説明する。
「鬼ヶ島王立連邦は不穏な土地だ、という噂だよ。」
「僻みで流されたんだ。」
鬼姫は腕を組んだ。
「私たちは世界を平和にがモットーなのに?」
「変なの。」
鬼王は笑った。
「でも、桃太郎君もきっと話せばわかると思うんだ。」
そして二人を見る。
「どう思う?」
朱羅は即答した。
「無理だと思います。」
鬼姫は言った。
「イケメンだから大丈夫。」
朱羅はため息をついた。
「歓迎会を開こうか。」
鬼王が言った。
鬼姫はぱっと顔を明るくする。
「お父様、それがいいわ。」
「きっと喜ばれると思うの。」
「それに、鬼ヶ島王立連邦がとっても平和な国ってわかってくれると思う。」
鬼王は大きく頷いた。
「そうだよな。」
「よし、やっぱりそれで行こう。」
そして鬼姫を見る。
「茜。」
「歓迎会だから、かわいい服を着るんだぞ。」
鬼姫は嬉しそうに頷いた。
「はい、お父様。」
その横で。
朱羅が静かに呟いた。
「……大丈夫かな。」
鬼王が振り向く。
「何がだ?」
朱羅は答える。
「相手、鬼退治に来てるんですけど。」
鬼王は少し考えた。
そして言った。
「歓迎されたら、きっと鬼退治する気もなくなる。」
朱羅は黙った。
(父上……。)
(平和すぎる。)
朱羅はスマホを取り出した。
そしてページを開く。
恋愛災害相談室。
美女コミュの裏ページ。
鍵アカウントだ。
朱羅は書き込んだ。
『鬼ヶ島に桃太郎が来る。』
すぐに返信が来た。
オオカミ
『マジか。危ないぞ。』
一寸
『理由は?』
朱羅はため息をつきながら入力する。
『鬼退治だと思う。』
『それで父が歓迎会を開くって言ってて……。』
数秒沈黙。
そして返信。
オオカミ
『ありえない。』
一寸
『鬼退治に来た相手に歓迎会?』
朱羅
『父は平和主義なんだ。』
オオカミ
『それは知ってる。』
一寸
『桃太郎はクズ四天王の一人だろ。』
朱羅
『そう。』
オオカミ
『終わったな。』
朱羅はスマホを見ながら小さく呟いた。
「終わってるな……。」
その頃。
桃太郎たちの船は、ゆっくり鬼ヶ島へ近づいていた。
桃太郎はスマホを見ていた。
美女革命ランキング。
三位。
鬼姫。
桃太郎は呟いた。
「楽しみだな。」
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