後日談 その後の二人
「爺さん、婆さん。」
桃太郎は家に入った。
「ただいま。」
奥から声がする。
「おかえり。」
桃太郎は少し黙った。
そして言った。
「あのさ。」
爺さん
「ん?」
婆さん
「どうした?」
桃太郎は後ろを見た。
「彼女、連れて帰ってきた。」
「……。」
桃太郎は続けた。
「鬼ヶ島茜さん。」
鬼姫はぺこりと頭を下げた。
「はじめまして。」
桃太郎
「鬼ヶ島の姫。」
少し沈黙。
「……。」
爺さんが言った。
「桃。」
桃太郎
「ん?」
爺さん
「でかした。」
婆さんも言った。
「かわいい子だねぇ。」
鬼姫は真っ赤だった。
(よかった。)
桃太郎が言った。
「しばらくうちに泊まってもらって。」
鬼姫
「はい。」
桃太郎
「俺の休日に送っていく。」
少し間。
「多分。」
「……。」
二人が同時に言った。
「多分?」
桃太郎
「……。」
桃太郎は目をそらした。
爺さんは笑った。
「桃。」
桃太郎
「ん?」
爺さん
「送る気ないだろ。」
桃太郎
「……。」
婆さんも笑った。
「この子、気に入ったんだねぇ。」
桃太郎
「……。」
鬼姫は真っ赤だった。
桃太郎は言った。
「茜。」
鬼姫
「はい。」
桃太郎は少し照れたように言う。
「疲れただろ。」
鬼姫
「はい。」
桃太郎
「休んでいい。」
少し考えて言った。
「団子ならあるから。」
鬼姫は嬉しそうに言った。
「食べます。」
爺さんが言った。
「気が合いそうだな。」
(あれ。)
桃太郎は気づいた。
(朱羅君がいない。)
桃太郎は周りを見た。
いない。
本当にいない。
桃太郎は思った。
(これは。)
(チャンス。)
桃太郎は鬼姫を見た。
団子を食べている。
嬉しそうだ。
桃太郎は思った。
(かわいい。)
そして思った。
(朱羅君いない。)
(つまり。)
(安全。)
桃太郎は思った。
(今なら。)
(キスいけるか?)
桃太郎は思った。
(いや。)
(まだ……。)
(朱羅にバレる……。)
桃太郎は言った。
「俺は離れで寝る。」
鬼姫
「はい。」
その時だった。
婆さんが嬉しそうに聞いた。
「部屋は桃と一緒でいいのよね?」
「……。」
沈黙。
桃太郎は思った。
(待て。)
(それは。)
(危険だ。)
婆さんはにこにこしている。
「婚約者なんでしょ?」
桃太郎
「……。」
鬼姫は真っ赤だった。
婆さん
「同じ部屋でいいわよね?」
桃太郎
「……。」
桃太郎は少し考えた。
そして言った。
「……いいよ。」
(近すぎるだろ……。)
(理性、持つかこれ……。)
言ってしまった。
桃太郎は思った。
(やばい。)
(理性。)
(持つか?)
婆さんが笑いながら言った。
「別に気にしないで。」
「好きに使ってくださいね。」
鬼姫
「え?」
婆さんは続ける。
「桃が彼女を連れてきたなんて初めてなの。」
爺さんも頷く。
「初めてだ。」
婆さんは嬉しそうだった。
「本当に初めて。」
鬼姫
「……!」
鬼姫は真っ赤になる。
婆さんと爺さんは顔を見合わせた。
「かわいい子じゃない。」
「いい子そうだ。」
「桃にはもったいない。」
桃太郎
「……。」
婆さんと爺さんはキャーキャー言っていた。
「若いっていいねぇ。」
「青春だ。」
桃太郎は思った。
(……。)
(やめてくれ。)
(恥ずかしい。)
鬼姫は小さく言った。
「桃。」
桃太郎
「ん?」
鬼姫
「嬉しいです。」
桃太郎
「……。」
桃太郎は思った。
(……。)
(まあ。)
(連れてきてよかった。)
(もう、手放す気はない。)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
桃太郎と鬼姫。
少しズレていて、でもまっすぐな二人の物語でした。
妄想から始まった関係でしたが、
気づけば本物の恋になっていて、
そして今回――「連れて帰る」という選択で、
二人の関係は一つの形になったのかなと思います。
不器用で、少し暴走気味で、でも真っ直ぐな桃と、
純粋で一直線な茜。
この二人なら、きっとこれからも騒がしく、
でも幸せにやっていくのだろうと感じています。
ここで一度物語は完結となりますが、
二人の時間は、まだまだ続いていきます。
もしまたどこかで続きや別の物語を書くことがあれば、
そのときはぜひ、また読みに来ていただけたら嬉しいです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
今後の作品や続きについては、プロフィールにまとめています。気になる方はそちらもご覧ください。
※活動先・別作品はプロフィールにまとめています




