第17話 独占欲が止まらない
街を歩いていると、茜はすぐに声をかけられる。
「こんにちは、茜さん。」
男達が挨拶をする。
「こんにちは。」
にこっと笑う。
「……。」
桃太郎は少しだけ眉をひそめた。
(……多いな。)
(さっきからずっとだ。)
「茜ってモテるんだな。」
「え?挨拶されるだけだよ?」
「そうだな。」
でも――
(……笑うなよ。)
(そんな顔で。)
(誰にでも。)
桃太郎は少し歩幅を合わせる。
そして、自然に――
茜の肩を引き寄せた。
「……桃?」
「近い。」
「人多いだろ。」
「は、はい……。」
茜は少し戸惑っていた。
でも、嫌がってはいない。
桃太郎は思った。
(……。)
(見せたくないな。)
(誰にも。)
俺は少しイライラしていた。
ただ会いたくて来ただけなのに。
俺だけの茜でいてほしい。
俺がずっと一緒にいられるなら安心だ。
しかし、ずっと一緒にいることはできない。
ああ……
くそっ
わかってる。
けど……重症だ。
桃太郎は歩きながら、無意識に茜の手を掴んだ。
「……桃?」
少し強く握る。
離したくなかった。
「なあ、二人で話せるところに行きたい。」
「静かなところっていうか。」
「いいよ。家に帰ろうか?」
「そうしよう。」
桃太郎は少しだけ息を吐いた。
「……誰も来ないところがいい。」
俺って独占欲あったんだ。
そんなにないと思っていた。
別に女には困ってないし、
そんなに追うタイプでもなかった。
ただ、女たちは寄ってきた。
(……でも。)
(茜は違う。)
寄ってくるんじゃなくて、
離れていく気がする。
だから――
(……掴んでないと。)
(どこか行きそうで。)
(……他のやつに笑うな。)
(俺だけ見てろよ。)
「なあ、茜。いや、何もない。」
「どうしたの?」
「別に。」
少し間。
「俺一人だけ好きなのかなって。」
「なんでもないよ。」
桃太郎は、茜の腰に手を回した。
「駄目?」
「駄目じゃない。」
茜は少し照れながら言った。
「それに……私も好きだよ。」
「多分……桃が思ってるより、ずっと。」
「……そうか。」
桃太郎は少しだけ安心した。
でも――
(……足りないな。)
「部屋でその話、詳しく聞かせてよ。」
「それに俺、茜のこと何も知らないしさ。」
「私もだよ。」
桃太郎は小さく笑った。
「じゃあ、全部教えて。」
少しだけ声を落として言う。
「俺以外に、見せてきたことも。」
「桃以外にはいないよ?」
「いや……色々いるだろう。」
「え?」
「朱羅君とか。」
そう言って笑った。
「もう、桃ったら……。」
(負けたくないからな。)
「それに……幼馴染にも色々言われちゃったしなー。」
「浮気するなよ。」
少し笑った。
でも――
「……冗談じゃなくてさ。」
一瞬だけ、声が落ちる。
「本気で嫌だからな。」
「他のやつに取られるとか、無理だから。」
「私も他の人にとられるとか、無理。」
「せっかく付き合えたのに、変なこと言わないで。」
「浮気もしないし、桃も浮気しちゃだめだよ。」
「努力する。」
「しないでくださいね。」
(かわいい。)
桃太郎は茜の頭を撫でた。
周りの男達がこちらを見る。
桃太郎はその視線に気づいて――
少しだけ、茜を引き寄せた。
(……。)
(絶対に離さない。)
茜は少し照れながら、桃太郎の隣を歩いていた。
さっきまでよりも、距離が近い。
自然と腕が触れる。
「……桃。」
「ん?」
「さっきの、本気?」
「どれ?」
「その……浮気とか、嫌ってやつ。」
桃太郎は少しだけ笑った。
「本気だよ。」
少し間。
「むしろ、あれでも抑えてる。」
「え?」
茜が少し驚いた顔をする。
桃太郎は前を向いたまま言った。
「本当はさ。」
「もっと言いたいことあるけど。」
「やめとく。」
「なんで?」
「言ったら引くだろ。」
茜は少し考えてから、小さく首を振った。
「引かないよ。」
桃太郎は少しだけ黙った。
それから――
「……じゃあ、後でな。」
「二人きりの時に話す。」
桃太郎が足を止めた。
「桃?」
茜が振り向いた。
茜の腕を引く。
風が吹き抜けた。
桃太郎が茜を抱き寄せた。
「……誰にも見せたくない。」
顔を寄せる。
「俺以外に、そんな顔するな。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
……桃、やらかしましたね。
この後どうなるのかは、もう少し先で。
茜もまだまだ無自覚ですし、
雷鉄もあのままでは終わらないと思います。
この関係、たぶん――
まだ全然落ち着きません。




