第16話 鬼姫の幼馴染が現れた
鬼のイケメンだった。
笑顔だ。
鬼姫が言った。
「こんにちは。」
桃太郎はすぐ言った。
「……こんにちは。」
少し間。
「はじめまして。」
「茜の婚約者の山野桃太郎です。」
イケメンの顔が――
少し曇った。
「……こんにちは。」
「はじめまして。」
「茜ちゃんの幼馴染の鬼山雷鉄です。」
桃太郎
「よろしく。」
雷鉄
「よろしくな。」
鬼姫は少し嬉しそうだった。
「雷鉄、久しぶり。」
桃太郎は思った。
(……。)
(イケメンだな。)
(しかも幼馴染。)
桃太郎は思った。
(なんか。)
(嫌な予感がする。)
「茜ちゃん。この前言ってた本、うちにあるから今度持っていくよ。」
雷鉄が言った。
「ありがとう。」
鬼姫は嬉しそうに笑った。
そして桃太郎の方を見て言う。
「雷鉄は幼馴染なんです。」
「小さい頃から仲良くて……。」
少し考えてから続けた。
「お風呂も一緒に入った仲なの。」
桃太郎
「……。」
少し沈黙。
桃太郎
「……そうか。」
雷鉄は桃太郎を見る。
少しだけ笑った。
桃太郎は思った。
(……。)
(幼馴染。)
(風呂。)
(イケメン。)
桃太郎は思った。
(……。)
(聞きたくなかった。)
鬼姫は気づいていない。
「雷鉄は本当に優しくて――」
桃太郎は笑った。
「へえ。」
でも心の中では。
(……。)
(なんか。)
(気に入らん。)
桃太郎が言った。
「茜、幼馴染と仲いいんだな。」
鬼姫
「はい。」
「小さい頃からずっと一緒なんです。」
桃太郎は少し頷いた。
そして――
鬼姫の手を握った。
鬼姫
「……!」
少し驚く。
桃太郎は雷鉄を見て言った。
「まあ、別に。」
少し間。
「俺達、結婚するからいいけど?」
雷鉄
「……。」
鬼姫
「……。」
鬼姫の顔が真っ赤になる。
「け、結婚……。」
桃太郎
「婚約者だろ?」
雷鉄は少し笑った。
「そうなんだ。」
桃太郎
「ああ。」
雷鉄は鬼姫を見る。
「茜ちゃん、彼氏できたって聞いてなかった。」
鬼姫
「え、えっと……。」
桃太郎は手を離さない。
むしろ少し強く握った。
桃太郎は思った。
(……。)
(何か。)
(負けたくない。)
雷鉄が言った。
「茜ちゃん昔からモテるんだよ。」
桃太郎
「へえ。」
少し間。
桃太郎は鬼姫の手を握ったまま言った。
「でも。」
雷鉄が見る。
桃太郎は笑った。
「今は俺だけだって言ってくれるからいいんだ。」
鬼姫
「……!」
鬼姫の顔が一気に真っ赤になる。
「そ、そんな……。」
桃太郎
「言っただろ?」
鬼姫
「はい……。」
雷鉄は少し黙った。
そして笑った。
「そうなんだ。」
桃太郎
「ああ。」
鬼姫はまだ真っ赤だった。
桃太郎は思った。
(……。)
(俺。)
(結構本気かもしれん。)
雷鉄が言った。
「でも茜ちゃん、昔俺のこと好きだったよね。」
鬼姫は普通に答えた。
「はい。」
「雷鉄は格好いいから。」
桃太郎
「へぇ。」
少し間。
桃太郎は鬼姫を見る。
「俺は?」
鬼姫
「え?」
桃太郎は少し笑った。
「そんなでもないの?」
鬼姫は慌てた。
「ち、違います!」
桃太郎
「違うの?」
鬼姫
「桃太郎様も格好いいです。」
桃太郎
「ふぅん。」
鬼姫
「本当です!」
桃太郎は少し笑った。
そして思った。
(……。)
(まあ。)
(知ってたけどな。)
雷鉄はその様子を見ていた。
少し面白そうだった。
鬼姫が聞いた。
「桃太郎様も、私のこと好きですか?」
桃太郎は少し笑った。
「好きだよ。」
鬼姫
「……!」
鬼姫の顔が一気に赤くなる。
桃太郎は言った。
「でもさ。」
鬼姫
「はい?」
桃太郎は少し不思議そうに言う。
「茜ちゃんって婚約者なのに“様”つけてるの?」
鬼姫
「え?」
桃太郎
「俺の方が距離近い感じだな。」
鬼姫は少し考えた。
「じゃあ……。」
「桃太郎さん?」
桃太郎
「それも微妙だな。」
鬼姫
「え?」
桃太郎は少し笑った。
「桃でいいよ。」
鬼姫
「……桃。」
鬼姫は真っ赤だった。
桃太郎は思った。
(……。)
(かわいい。)
「じゃあ、俺達デートの途中なので。」
雷鉄
「……。」
鬼姫
「え?」
桃太郎は鬼姫の手を引いた。
「行くぞ、茜。」
鬼姫
「は、はい。」
二人はそのまま歩き出した。
雷鉄は少し驚いた顔で二人を見ていた。
少し歩いたあと。
桃太郎が小さく言った。
「なぁ、茜。」
鬼姫
「はい?」
桃太郎は前を向いたまま言う。
「俺の前で他の男を褒めるなよ。」
鬼姫
「……。」
鬼姫は少し考えてから言った。
「はい。」
桃太郎
「……。」
鬼姫は少し慌てて言う。
「桃の方が格好いいです。」
桃太郎は少し笑った。
「そうか。」
鬼姫は真っ赤だった。
桃太郎は思った。
(……。)
(やっぱかわいい。)
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