第14話 鬼姫が婚約者と言い出した
鬼ヶ城――
鬼姫は部屋でぼーっとしている。
侍女
「姫?」
鬼姫
「……桃太郎様。」
侍女
「重症ですね。」
鬼姫
「会いたいです。」
侍女
「この前会ったばかりです。」
鬼姫
「でも会いたいです。」
侍女
「恋ですね。」
鬼姫
「恋です。」
その頃――
鬼王子
「姉さん最近おかしい。」
侍女
「恋ですよ。」
鬼王子
「……。」
「気分転換に服屋にでも行ってきたら?」
鬼姫
「そうする。」
鬼姫が出掛けた後だった。
「こんにちはー。」
桃太郎が鬼ヶ城の門で声をかけた。
扉が開き、鬼王子が出てくる。
「……こんにちは。」
少し間。
鬼王子は言った。
「早かったですね。」
桃太郎
「そうか?」
鬼王子
「この前帰ったばかりですよ。」
桃太郎
「まあ。」
少し気まずい沈黙。
桃太郎が聞いた。
「茜は?」
鬼王子は普通に答える。
「今、服見に行った。」
桃太郎
「服?」
鬼王子
「街です。」
そして振り返った。
「光牙。」
奥から男が出てくる。
「桃太郎さんを姉さんのところに連れて行ってあげて。」
「かしこまりました。」
鬼王子は桃太郎に言った。
「彼は光牙。執事だ。」
光牙が一礼する。
「ご案内いたします。」
鬼王子は少し笑った。
「大丈夫。」
「すぐに連れて行ってくれるから。」
桃太郎
「助かる。」
鬼王子は桃太郎の顔を見る。
そして思った。
(……。)
(本当に来た。)
鬼姫が振り向いた。
「桃太郎様!?」
驚いた顔だった。
桃太郎は少し笑う。
「来た。」
鬼姫
「どうして……?」
桃太郎は肩をすくめた。
「会いたくて。」
少し間。
「我慢できなくてさ。」
鬼姫の顔が真っ赤になる。
桃太郎が聞く。
「茜、寂しくなかった?」
鬼姫は少しうつむく。
そして小さく言った。
「……寂しかったです。」
桃太郎
「……。」
桃太郎は少し笑った。
「俺も。」
鬼姫が顔を上げる。
桃太郎は言った。
「だから来た。」
鬼姫は嬉しそうに笑った。
鬼姫
「会いたかったです。」
桃太郎
「俺も。」
次の瞬間。
鬼姫が抱きついた。
桃太郎
「……。」
胸が当たっている。
(これは……。)
(すごい。)
柔らかい。
桃太郎の全神経がそこに集中した。
(ヤバい。)
(ヤバい。)
(ヤバい。)
鬼姫は嬉しそうに言う。
「本当に来てくれたんですね。」
桃太郎
「……ああ。」
でも桃太郎の頭の中は別だった。
(落ち着け俺。)
(ここ服屋だぞ。)
(店員いる。)
(人いる。)
(朱羅もいる。)
(これは駄目だ。)
桃太郎は思った。
(離れるとそれはそれでヤバいかもしれん。)
(どうする俺。)
(おさまってくれ。)
(頼む。)
鬼姫は気づいていない。
「桃太郎様?」
桃太郎
「……ん?」
鬼姫
「顔赤いですよ?」
桃太郎
「気のせいだ。」
店員がにこにこしながら聞いた。
「鬼姫様、彼氏ですか?」
鬼姫は迷いなく答えた。
「はい。」
そして続ける。
「婚約者です。」
桃太郎
「……。」
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