第13話 桃太郎、我慢できなくなる
桃太郎は茜と別れてから――
かなり寂しそうだった。
犬養が言った。
「桃、元気ないな。」
猿田も頷く。
「ああ。」
鳥山も言った。
「静かすぎる。」
数日後。
三人は気づいた。
桃太郎が――
家から出ていない。
しかも女遊びもしていない。
女の影すらない。
犬養
「……。」
猿田
「……。」
鳥山
「……。」
三人は同時に言った。
「ありえないだろう。」
犬養
「ありえないだろう。」
猿田
「ありえないだろう。」
鳥山
「桃が……。」
三人は顔を見合わせた。
「遊んでない。」
犬養が言う。
「桃が遊んでない。」
猿田
「事件だ。」
鳥山
「完全に事件。」
犬養が腕を組んだ。
「これ。」
猿田
「何だ?」
犬養
「恋だな。」
鳥山
「恋だな。」
今日も犬養たちは桃の家に遊びに来ていた。
犬養が言う。
「桃、大丈夫か?」
猿田も覗き込む。
「顔やばいぞ。」
鳥山も腕を組んだ。
「完全に元気ない。」
桃太郎は部屋の中をうろうろしていた。
座る。
立つ。
また座る。
そしてスマホを見る。
展望台で撮った写真。
茜が笑っている。
桃太郎は小さくつぶやいた。
「……かわいい。」
犬養が言った。
「重症だな。」
猿田が言う。
「完全に恋だな。」
鳥山がうなずいた。
「しかも初恋レベル。」
そのまま数日が過ぎた。
桃太郎は家で、爺さんと婆さんと三人で過ごしていた。
爺さんが桃太郎を見て言う。
「桃、元気ないんじゃないか?」
婆さんも心配そうだ。
「大丈夫?」
少し間があって、婆さんが言った。
「この前の茜ちゃんかい?」
「いい子そうだったわねぇ。」
爺さんも頷く。
「どんな子なんだ?」
「写真とかないのか?」
婆さんも身を乗り出す。
「爺さんも見たいって言ってるよ。」
桃太郎は少し迷ってからスマホを出した。
展望台で撮った写真。
茜が嬉しそうに笑っている。
婆さんがぱっと顔を明るくする。
「かわいい子だねぇ。」
爺さんも言った。
「いい子そうだ。」
婆さんがしみじみ言う。
「本当にこんな子が桃のお嫁さんになってくれたらいいのにねぇ。」
桃太郎は少し顔をそむけた。
爺さんが言う。
「桃。」
「寂しいなら、私たちのことは気にするな。」
「茜ちゃんのところに行ってきたらどうだ?」
婆さんも頷いた。
「店なら私たちが見ててあげるよ。」
爺さんも笑った。
「団子屋は逃げないからな。」
桃太郎は少し黙った。
次の日、また犬養たちが来ていた。
桃太郎はため息をついていた。
犬養
「大丈夫か?桃。」
桃太郎はしばらく黙っていた。
そして立ち上がる。
「俺、我慢できん。」
三人
「え?」
桃太郎
「俺、行ってくる。」
犬養
「どこ行く?」
桃太郎
「鬼ヶ城。」
三人
「は?」
桃太郎はもう準備している。
「じゃあ。」
「行ってくる!」
猿田
「待て待て待て。」
鳥山
「は?」
犬養
「いや。」
三人は言った。
「この前帰ってきたばっかだぞ?」
猿田
「まだ普通に次の休みなんですが?」
鳥山
「何その彼氏ムーブ。」
桃太郎
「うるさい。」
「爺さん、婆さん、店よろしく。」
そして玄関を開けた。
「行ってくる。」
犬養
「……。」
猿田
「……。」
鳥山
「……。」
三人は同時に言った。
「桃、終わったな。」
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