第10話 鬼の家族がいい人すぎる
「昨日の夜はどうだった?」
犬養がにやにやしながら聞いた。
猿田も身を乗り出す。
「良かったか?」
桃太郎は顔をしかめた。
「聞くなよ。」
鳥山が肩をすくめる。
「でかいんだし、いいだろう。」
桃太郎
「お前な……。」
犬養が言う。
「茜、可愛いよな。」
猿田
「可愛い。」
鳥山
「しかも胸でかい。」
桃太郎
「……。」
犬養がにやっと笑う。
「茜の胸見るなよ。」
桃太郎が睨む。
「え?」
猿田
「見ていいのは桃だけだろ。」
鳥山
「そうだな。」
桃太郎は呆れた。
「お前らな……。」
犬養が言う。
「で?」
猿田
「結局どうなんだ?」
鳥山
「婚約だろ。」
桃太郎は少し黙った。
(……。)
(まあ。)
(悪くない。)
「皆様、ご飯食べましょう。」
鬼姫が言った。
「姉さん。あのふりかけおいしいから出してもらうね。」
鬼王子が言う。
「そうね。」
鬼姫が頷く。
「ドレッシングも違うのも出してもらおう。」
鬼王子はにこっと笑った。
「これおいしいんだよ。」
桃太郎たちは料理を見た。
普通にうまそうだった。
犬養が小声で言う。
「……なんか。」
猿田が頷く。
「普通にいいやつだな。」
鳥山も頷いた。
「優しい。」
桃太郎も思った。
(鬼ってもっと怖いと思ってたんだけどな。)
鬼王子が言った。
「遠慮しないで食べて。」
「観光で来たんだから楽しんでほしい。」
犬養
「いいやつだ。」
猿田
「いいやつだな。」
鳥山
「いいやつすぎる。」
桃太郎も小さく言った。
「……いいやつだ。」
四人は顔を見合わせた。
そして同時に思った。
(負けた。)
桃太郎の横に鬼姫が座った。
ごく自然に。
鬼王子はそれを見ても、特に何も言わない。
普通にご飯をよそっている。
桃太郎はちらっと鬼王子を見た。
何も言わない。
犬養が小声で言う。
「……。」
猿田も小声で言う。
「……。」
鳥山も頷いた。
桃太郎も思った。
(こいつも天然か?)
鬼姫は嬉しそうに言った。
「桃太郎様、これ美味しいですよ。」
皿を差し出す。
「ありがとう。」
桃太郎は受け取った。
鬼王子が普通に言う。
「姉さん料理好きだからね。」
「気に入ったならよかった。」
犬養
「いい弟だ。」
猿田
「いい弟すぎる。」
鳥山
「いい家族だな。」
桃太郎も思った。
(……。)
(いいやつらだな。)
四人は顔を見合わせた。
(やっぱり、負けた。)
鬼王が聞いた。
「桃太郎くん、今日は山に行くのかい?」
「それとも海かい?」
「泳ぎたいならプールもある。」
「それと温泉だ。」
桃太郎は一瞬考えた。
鬼姫の水着姿を想像する。
(……。)
温泉。
浴衣姿も想像する。
(……。)
その横に――
犬。
猿。
雉。
(……。)
ないな。
桃太郎は言った。
「山の方がいいかもしれないですね。」
犬養
「即決だな。」
猿田
「温泉嫌なのか?」
鳥山
「桃、温泉好きだろ。」
桃太郎
「……。」
犬養がにやっとする。
「鬼姫の水着想像したな。」
猿田
「温泉も想像したな。」
鳥山
「俺たちもいたな。」
桃太郎
「……黙れ。」
鬼姫は嬉しそうに言った。
「山いいですね!」
鬼王も頷く。
「よし、山にしよう!」
桃太郎は思った。
(まあ。)
(山なら平和だろ。)
「父上、父上。仕事あるでしょう。」
鬼王子が言った。
「俺が代わりに観光案内しますよ。」
鬼王は頷く。
「ありがとう。」
「助かる。」
鬼姫も嬉しそうに言った。
「ありがとう。」
鬼王子は軽く笑った。
「気にするな。」
桃太郎たちはそのやり取りを見ていた。
犬養が小声で言う。
「いい弟だな。」
猿田が頷く。
「優しい。」
鳥山も言った。
「普通に好青年だ。」
桃太郎も思った。
(……いいやつだな。)
鬼王子はちらっと桃太郎を見た。
そして心の中で思った。
(姉さんだからな……。)
(変な男には任せられない。)
桃太郎は気づいていない。
犬養が言った。
「じゃあ山か。」
猿田
「山だな。」
鳥山
「山だ。」
鬼姫は楽しそうだった。
「山楽しみです!」
鬼王子は静かに頷く。
(ちゃんと見ておくか。)
(桃太郎ってやつを。)
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