七話め
一つ本を持って帰路についていた。
モニカの為に面白そうな本を図書室で借りてきた。
二年生になって恥ずかしいことだが、たぶん初めて本を借りたと思う。
「なんで部活をさぼったの?」
電車の中で送ったメッセージを見る。
まだ既読はついていないようだ。
今朝は確かに見たから体調が悪いわけではないだろう。ただ未読なだけだ。
少し速足で歩く。
子供っぽくて嫌なのだが、暗闇があまり好きではない。
何かトラウマがある訳ではないのだが、小さなころからこれは変わらない。
夜の街は特に怖い。人がいれば大丈夫なのだが、帰路はいつも一人だ。
街路樹が揺れる。この音が怖いのだ。
ちょっとの恐怖を抱えて、私はついに玄関の扉を開く。
駆け足で自分の部屋に着く。そこには本を読んでいるモニカがいた。
「ああ、アズサ。おかえり」
彼女は本から顔を上げると、こちらを一瞥して言った。
それに随分と安心に近い感情を抱いた。
「どこまで読んだの?」
モニカの手にある本を指して言う。
残りのページ数を数えて、こちらにまた顔を向ける。
「あとがきのところだけだ。あまり面白くないが」
文学小説のあとがきと言えば、作者の解説とかだろうか。
どちらにしろあまり面白いものとは言えないだろう。
「読むの早いね」
「そうか?」
「うん、私はたぶん一週間くらいかかりそう」
「そんなにかからないだろう。読みだしたらすぐだ」
読書好きならそうなのかもしれないと思いながら、借りてきた本を取り出す。
一度タイトルを確認してからモニカに手渡す。
「これ借りてきたから暇つぶしに読んでね」
「これはどんな話なんだ?」
「さあ。太陽のせいで人を殺しちゃったみたいな?」
あらすじの特徴的なところを読む。
あまり理解できなかった。
モニカも同様なようで、追求をしようという様子が見えた。
「あっ、もうこんな時間。ご飯の準備しないとだからまたあとでね」
私は下の階に逃げた。
冷蔵庫の中を見る。あまり食べれるものが入っていない。
うどんなんかは食べれるだろうか?
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人気のない路地裏で、東楓はぬいぐるみ然とした熊に声をかける。
彼はどこからともなく姿を現すと、ない声帯から声を発する。
「ご苦労さま。やっぱり君は手際よく殺せるね」
その言葉の選択に、少し眉を顰める。
彼もそれに気づいたらしくしたり顔で言う。
「何か他の子たちみたいに、退治とかいう語句を使った方がよかったかな。究極的にはなにも変わらないのにね」
やはり話しているうちに、私は彼のことが嫌いだと思う。
でも、この性格でよかったとも思う。きっと、他の子たちについてるのと同じものならば、私はきっと自殺でもしていたかもしれない。
「ぼく自身君には期待しているんだ。そんな面白くない価値観の共有はしたくないだろう」
「そう。ところで前に話してた対象の手掛かりは見つかった?」
「ああ、あの逃げた子ね。それがどうもね。君の後輩ちゃんにも頑張ってもらってるんだけど、手掛かりすらつかめてないよ」
中々世の中上手くいかないものだ。
いずれにしろその対象とやらは見つけないといけないのだろう。
「あっ、また新しい仕事だよ」
嘯きに溜息を吐いて、時計を見る。まだ12時だ。




