五話め
週末も終わってしまい、学校へと登校していた。
校門の桜はついこの前まで咲いていたと思うが、今は深緑になってしまっていて時間が流れるのの早さを思う。
「ねえ、アズサ話聞いてる?」
「えっ、何だっけ。ぼーっとしてた」
「ええ、酷い。折角、私の週末の楽しみを話してたのに」
ぷりぷりと怒った様子の友人、浅野摩耶に平謝りをした。
それから一つ言葉を付け加える。
「でも、どうせ摩耶だし、猫を見てたとかでしょ」
「ええ、摩耶だしって何さ。というか、話聞いてたでしょ」
偶然ではあるが当たっていたようだ。
イメージ通りである。
「いえーい、予想通り」
ピースをして少し煽る。
それで更に怒ったぞと言いたげの顔に、もっと笑ってしまった。
校舎で靴を脱いで、階段をのぼりながら話を続けた。
「それにしても暑くなったよね。この前まで肌寒かったのに」
思えば、その通りだと摩耶の言葉に頷く。
「そろそろ夏服出さないとだね」
「ええー、私あれ嫌いなんだけど。全く涼しくないじゃん。去年で思い知ったよ」
「だって普通の服なんだから、期待しちゃだめだよ」
「もっとこう、一瞬で体感温度マイナス十度とか」
「無理無理、そんなのあったら革命だよ」
「やっぱりここはアズサに作ってもらうしか。リケジョとして」
「じゃあその前に文系として、寒くなるほどの怪談でも話してもらわないと」
馬鹿な話をして、教室の前で別れた。
それから、少し友達と話すと、ホームルームが始まってしまった。
そこで、担任の先生は金曜日のことと銘打って話を始めた。
ニュースで見たことと同じだが、放火事件が起きたから云々という話である。
気をつけろという趣旨なのだろうが、気をつけようがないだろうという気がした。
授業中はたぶんモニカのことを考えていたと思う。
昨日一緒にしたゲームが楽しかったとか。あるいは今何をしているだろうかとか。
今日は部活があるから少し遅くなってしまうから、モニカは大丈夫かなと少し心配になった。
そのため、授業中ながらちらっとスマホを見る。
連絡を取る手段がないと気づいたのは、SMSを開いたところだった。
それからは少しまじめに授業を受けた。
何度か欠伸が耐え切れなかった。
だが、七限までしっかりとやり切り、ついに部活の時間になってしまった。
すぐに部室に行くのは気まずく、ジュースを買ってから向かうことにした。
少し歩いて自販機にやっと辿り着いたところで、見知った顔と出会った。
「あっ、先輩、何か奢ってくださいよ」
生意気なことを言いながら声をかける。
「げっ」
話しかけられた張本人、そして私が告白した人。森本大翔先輩は嫌そうな顔をしている。
心外である。
「何ですか? 可愛い後輩ちゃんですよ」
「そういうことを言うのは可愛くないよ」
「ええ、酷い。可愛いものは可愛いでしょう」
「それで、何飲みたいの?」
実際冗談であるから、少し焦った。
乗り気になられるとは思わなかったのだ。
「えっ、いや」
どうしたものかと少し悩んでいると、森本先輩は笑った。
「冗談に決まってるよ。奢る訳ないじゃん。こちとら金欠学生ぞ」
「揶揄わないでくださいよ。期待しちゃったじゃないですか」
責めるようなことを言いながら、だいぶ安心していた。
先輩は依然として笑っていて、逃げるように走り去ってしまった。
それを見た後、自販機で甘すぎるココアを買った。
そっちの方が私らしいと思ったためだった。
一口飲んだ後、やっと部室に行くことを決めた。
思ったよりも私は私らしくいれた。これは一つ驚きである。
ゆっくりと校舎を歩いて、遂に部室の前に辿り着いた。
扉のすぐ脇にはオカルト研究会と書かれている。
オカルト研究会である。ただ、研究会という割には実際活動はあまりしてないと思う。
たまり場というのが近しいというべきだろか。
顧問としても年一回の会誌さえ出せばよいという程度だ。
扉を開くと、予想外にも誰も居なかった。
手持無沙汰になり、適当なところに座る。
空を眺めると、白い雲がゆっくりと流れていっている。のどかだった。




