十五話め 浅ましい計略
お茶を机に戻し、目前の佐久良を見る。
彼女は視線を右往左往させている。
「この前はありがとうね」
「あっ、えっと……」
佐久良はぱっと顔を明るくする。
それから少し悩まし気な表情に戻ってしまった。
「私自身、まだ何が起こってこうなったかは理解してないんだ。だけど、きっと私を助けてくれたのは佐久良ちゃんじゃなかったかな」
「どのことでしょうかね」
しらばっくれる彼女には若干嬉しそうな調子があった。
何とも御しやすい少女である。
ところで、この辺りで私の心に細かな罪悪感があった。
彼女がきっと私を救ってくれた片割れであろう。
それ自体は良いとして、私の策謀の為に真実を確定させるのは恩知らずではなかろうか。
一つの悩みが浮かんで、どうしたものかと悩んでしまう。
何者かになるために利用するのは少しかわいそうだ、と最終的には考え付いてしまった。
佐久良が顔をあげたのはその頃合いである。
「ねえ、アズサさん。協力しませんか」
彼女は何かを考え付いたというような様子である。
それも、強い決断を伴うようなことを。
「協力って何を?」
「所謂魔物退治ってやつです」
少し心が躍った。
特別な属性を私が得ることができる。
それも適当な高校生らしいとか、女の子らしいとか、善人らしいとか……、そういった簡単に得られるものでもない。
「魔物って前見た奴」
「はい。あの仲間達です。私たちはあれを退治しています」
「どうして退治をしているの?」
「世界を魔王の手から守るためです」
最近の出来事を色々と思い出す。
モニカを匿った。これは善人になるためだった。
みーはーちゃんの演技をした。これはJKらしくなるためだった。
森本先輩に告白した。これは高校生らしさのためだった。
しかし、一体それらは平凡で、私はまだ何者にだって成れていない。
そう考えると、この提案がどれほど耽美だったか。
私は佐久良の手を取ることを決めた。
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「あっ、やっと見つけた」
ぬいぐるみの熊は嬉しそうに声を挙げた。
東楓はそれに怪訝な表情をして向く。
「シロ、どれを見つけたって」
「だいぶ前に言ったろう。逃げた子がいるって」
楓はそれを聞くと、納得したように「ああ」と声を発する。
それから暫く黙った後に、口を開けた。
「そういえば、その逃げたのって何者なの。捕獲の意味も分からないし」
「うーん、まあ君は知る必要がないよ」
「必要ね」
「君はいわれた通りに殺しておけばいい。それが契約だろう」
「契約、契約ね」
楓は自分を憐れんでいた。
どうにも詐欺まがいなことに騙され、今やこんな仕事を有無を言わさずに行わされている。
それも一体どうしてその意味も分からない。
シロと呼ぶ目前の存在だって、本当は何者なのかは知れない。
そもそも彼は教えるつもりだって全くないだろう。
人類の敵だと私に言った存在が、本当に敵なのかもしれない。
彼らと共通の言葉さえあれば事実が割るのに。
契約である。
魔法少女なんていうが、これもサラリーを貰ってないだけの仕事だ。
全くこの不幸は哀れである。




