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いずれ花咲くオルフェーブル  作者: 朝日 橋立
一章め いずれ花咲くオルフェーブル
15/17

十五話め 浅ましい計略

 お茶を机に戻し、目前の佐久良を見る。

 彼女は視線を右往左往させている。


「この前はありがとうね」


「あっ、えっと……」


 佐久良はぱっと顔を明るくする。

 それから少し悩まし気な表情に戻ってしまった。


「私自身、まだ何が起こってこうなったかは理解してないんだ。だけど、きっと私を助けてくれたのは佐久良ちゃんじゃなかったかな」


「どのことでしょうかね」


 しらばっくれる彼女には若干嬉しそうな調子があった。

 何とも御しやすい少女である。


 ところで、この辺りで私の心に細かな罪悪感があった。

 彼女がきっと私を救ってくれた片割れであろう。

 それ自体は良いとして、私の策謀の為に真実を確定させるのは恩知らずではなかろうか。


 一つの悩みが浮かんで、どうしたものかと悩んでしまう。

 何者かになるために利用するのは少しかわいそうだ、と最終的には考え付いてしまった。


 佐久良が顔をあげたのはその頃合いである。


「ねえ、アズサさん。協力しませんか」


 彼女は何かを考え付いたというような様子である。

 それも、強い決断を伴うようなことを。


「協力って何を?」


「所謂魔物退治ってやつです」


 少し心が躍った。

 特別な属性を私が得ることができる。

 それも適当な高校生らしいとか、女の子らしいとか、善人らしいとか……、そういった簡単に得られるものでもない。


「魔物って前見た奴」


「はい。あの仲間達です。私たちはあれを退治しています」


「どうして退治をしているの?」


「世界を魔王の手から守るためです」


 最近の出来事を色々と思い出す。


 モニカを匿った。これは善人になるためだった。

 みーはーちゃんの演技をした。これはJKらしくなるためだった。

 森本先輩に告白した。これは高校生らしさのためだった。


 しかし、一体それらは平凡で、私はまだ何者にだって成れていない。

 そう考えると、この提案がどれほど耽美だったか。


 私は佐久良の手を取ることを決めた。





 ──────────

 ────────

 ──────





「あっ、やっと見つけた」


 ぬいぐるみの熊は嬉しそうに声を挙げた。

 東楓はそれに怪訝な表情をして向く。


「シロ、どれを見つけたって」


「だいぶ前に言ったろう。逃げた子がいるって」


 楓はそれを聞くと、納得したように「ああ」と声を発する。

 それから暫く黙った後に、口を開けた。


「そういえば、その逃げたのって何者なの。捕獲の意味も分からないし」


「うーん、まあ君は知る必要がないよ」


「必要ね」


「君はいわれた通りに殺しておけばいい。それが契約だろう」


「契約、契約ね」


 楓は自分を憐れんでいた。

 どうにも詐欺まがいなことに騙され、今やこんな仕事を有無を言わさずに行わされている。

 それも一体どうしてその意味も分からない。


 シロと呼ぶ目前の存在だって、本当は何者なのかは知れない。

 そもそも彼は教えるつもりだって全くないだろう。

 人類の敵だと私に言った存在が、本当に敵なのかもしれない。

 彼らと共通の言葉さえあれば事実が割るのに。


 契約である。

 魔法少女なんていうが、これもサラリーを貰ってないだけの仕事だ。

 全くこの不幸は哀れである。

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