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いずれ花咲くオルフェーブル  作者: 朝日 橋立
一章め いずれ花咲くオルフェーブル
12/17

十二話め 期待というもの

 街路樹の葉を雨が揺らす音を聞きながら、街をぶらぶらとしていた。

 時計を見ると、まだ待ち合わせの時間までしばらくあった。


 少し早く行った方が可愛げがあるかな、と考える。

 この思考があるのだから邪が過ぎるのだが、どうにもこういう人として始めてしまったからには今更変えるのもいけない。


 現実に三十分ほど早く集合場所に着く。

 何でもない駅の中を歩いて、それも飽きてしまってからはスマホばかりを見る。


 幾許か経つ。

「よう、待ったか?」

 そんな声に振り返った。


「待ちましたよ、先輩」


 生意気なことを言う。

 さて、今日待ち合わせしていたのは森本大翔先輩である。


「そこは今来たところっていうもんじゃない?」


「アニメの見過ぎじゃないですか?」


「ええ、そんな馬鹿な」


 どうにも予想外と言った様子である。

 これは中々面白い。


「期待しちゃいました?」


 少し笑うと、先輩は何かを言おうとする。

 それを遮るように、すぐに口を開いた。


「ささ、行きますよ」


 この時にどうにも愉快さがあった。

 これは一重に私の性格の悪さだろう。


 傘をさして、先輩の前を歩く。

 背後から一つ問いかけがやってきた。


「場所分かってます? 君は」


「勿論ですよ。昨日見ましたから」


「道間違ってますぜ」


 その声に心底驚いてスマホを見る。

 実際道を間違えてしまっていた。

 珍しいことをしてしまうものだ。


「やーい、間違えてら」


 随分と子供らしいヤジに、どう返したものかと悩む。

 そして、解を思いつかずに、ぽかぽかと軽く叩くことにした。

 これもまた子供らしいことだった。


 ひとしきり報復をしたあと、今度こそとスマホを見て歩く。

 どうにも今日は上手く道が認識できないような違和感がある。

 そう、小さな違和感だ。


「おーい、アズサ?」


 頭の中にある疑問の為に、いつの間にか立ち止まってしまったらしい。

 心配をするように先輩が私の横にいる。


 思うに、違和感の正体を探ろうというのが何事も良い結果を運んでくるわけではない。

 それは実に当然なことで、世界というのは存外に狭いものなのだ。


「道は今覚えなおしましたし、行きましょうか」


 道を歩いていく。どうにも違和感があった。大通りに人がいない。

 一つの既視感がある。以前にモニカと出かけた時にあったことと似ている。


「何か人がいないのが不思議ですね」


 後ろを振り向くと、どうやら私は一人になっていたらしい。

 何とも寂しいもので、スマホを見てみると通知が映った。


「どこに行ったの?」


 森本先輩からのメッセージだ。

 一体どうしてはぐれてしまうのか……。


「CD屋さんで集合です」と打ち込んで前を向く。


 そこには大きな虫がいる。

 実際虫ではないのだが、虫けらと形容するのがもっともらしいことだろう。

 私はそれ以外にふさわしい言葉を持ち合わせていない。


 複眼に私が映っているのが分かる。

 しかし一体不思議なことに、私は私の身体を手放してしまったのだろうか。全く何もできそうにはなかった。

そろそろ話を進めたいので進めます。

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