捨てるのはナシ
片付けがおわらない。
当たり前だよな。
はじめることすらしていないことが、おわるわけないんだよな。
片付けるってなに?
捨てるの? 捨てれば、それでいいの?
似合ってないと言われた、お気に入りの服を捨てるの?
友達に言えなかった大好きを、なかったことにするの?
親に渡せなかった、安物の万年筆を渡さないままでいるの?
あの子に笑われて悔しかった記憶を忘れるの?
そうしたら、すっきりする?
幸せになれる?
整理術とか偉そうにいう人たち、そういうことをちっとも教えてくれない。意地悪だ。
片付けなんかおわるわけ、ないんだよな。
はじめる理由もない。
私のなかに詰まってるものに捨てるものはない。
ひとつだってありえない。
って、そんなひねくれたこと言ってるから片付かないのか。
あ、近くでナシのスイーツフェアやるんだって。
気になるあの人、誘っちゃおうかな。
向き合う怖さは頭の引き出しにしまって。
「ナシ好きですか? もしよかったらスイーツフェアいきませんか?」
送ってみたけど既読無視。
あの人も今、片付けの最中みたい。
ナシナシ。捨てるのはナシ。
私のこと片付けないで!




