3・たそがれ浜(7 異世界との出会い)
痛い。
身体中が痛い。手足は棒切れのようにこわばって、肌がひりひりする。
里砂は、頭を振ってうめいた。
恐ろしい、ひどいこと。夢。これが夢なら。夢ならば、目を開ければ覚める。
里砂は、苦労してまぶたをひきはがした。
草矢が見えた。
「兄さん……」
草矢はうなずいた。わずかの間その唇が震えて、里砂は草矢が泣くのだろうかと思った。
「里砂」
「血が出てる」
里砂は草矢の頰に手を伸ばそうとし、自分の腕も血とほこりにまみれているのに気づいた。
里砂は目を見開く。
「兄さん! カイが……!」
「いるよ」
聞き慣れた明るい声がした。なんとか首をひねると、カイが見えた。カイは、いつもと変わらない笑みを浮かべた。
「それに、カプセルに入ってたおかげか、君たちより怪我も少ない。フラムには行けなかったけどね」
カイは、里砂の視野の外にいる誰かのほうを見た。
「でも、帰れるんだ。リサ、信じられる? 僕らがあの地下の広間で、骨董品みたいな移送装置をいじってたころ、フラムから僕を探しに来てくれたやつらがいたんだ」
帰れる? フラムから?
里砂は、わけがわからないまま、痛くないほうのひじをついて、そっと体を起こした。
ここは……?
たそがれ浜だ!
どうなってるの? どうしてここに? わたしたちは、塚山にいた。塚山の、あの土の下からここに来た? ……光貝のかけらが、ここに呼んだ?
光貝……移送装置のかけらは、里砂の体の下にも、まわりにも、きらきらと散らばっていた。
見たこともない人物が三人いる。ひとりは、手振りを交えながら則の司と話をしている。ひとりは黄色い髪に白い肌、もうひとりは髪ばかりか肌も黒かった。
カイを探しに来たというのは、この人たちなのだろう。その姿はもちろん、まとっている空気が違う。ここではない、どこか遠くの雰囲気が彼らを取り巻いている。
村中の人たちが浜に出てきているみたい。
里砂は、ゆっくりと頭をめぐらした。
あ……母さん。
潮美は、薬の司のすぐ脇で、里砂と草矢を見つめていた。涙をぽろぽろこぼしながら、笑顔を浮かべていた。今の里砂と草矢に近寄りかねているようだった。手をほどいたら、飛び出して傷もかまわずふたりを抱きしめてしまう、とでもいうように、両手を固く握りあわせていた。
父さんは?
仁矢は、人混みから少し離れて立っていた。この浜で起きていることを理解したいのか、否定したいのか、わからないまま困惑しているようだった。わかるのは、里砂と草矢がここにいる、ということだけだった。
まずは、それだけでいい。
そう思ったとき、ふと仁矢の顔の線が柔らかくなった。




