⭐︎・8 ペルデュ-β
スクリーンに、海の星が映っている。
ラピスの宇宙船は、ペルデュ-βを走査していた。予想した通り、地形はペルデュ-αの反転型だった。
惑星の表面の七割以上が海で、いくつかの大陸が点在している。三人は、その中の一番大きな大陸に関心を持っていた。ほかの大陸は極冠に近すぎる。
「エネルギー・フィールド……かな、これ。とにかく、エネルギーらしいなんらかの値を確認」
モニターをにらんでいるダラムが言った。
「かなり不規則で弱いけど。そして……」
彼はいくつかキイをたたいて、数値を図形に変えた。
「この波の形は見覚えがある。ラピスに見せてもらった……」
ダラムは顔を上げた。
「干渉してきたっていうエネルギー波は、ここに収斂してるのかな? でも、人為的なものだろうか。これじゃよくわからない」
ラピスは、ダラムの肩越しにモニターを見た。
「これはライフフォームかな? 不確かだけど、海岸線の内側に熱源がある」
熱源?
レンは、胸が震えるような気がした。
「熱源があるって……集落?」
レンが言うと、ラピスはモニターを見つめたまま答えた。
「もしかしたら」
レンは、モニターではなく、スクリーンのペルデュ-βを見つめた。
ここに住んで、ここで生活を営んでいる人たちがいる? 僕たちはそこに来た?
いったいどうしてラピスもダラムも、こんなに淡々とデータを処理していられるんだろう。
けれど、レンは机の上で握りしめられたラピスのこぶしに気づいた。関節が白くなるほど力をこめて握られたこぶし。
ラピスも心を躍らせているのだ。
いつも冷静なダラムが、しばらくして言った。
「集落……なんじゃないかな。……この線が道だとすると、それに沿って点在している。こういう形って、都市ができていくときのいくつめかの段階で……」
「最新のドローンカメラがあればなあ」
ラピスがため息をついた。
「宇宙でも地上でも使えるやつ。リアルタイムで通信を送れるような」
「高価だからね」
ダラムがあっさりと言った。使うかどうかわからない機材を揃えられるほどの予算はなかった。
「まただ」
ダラムは身を乗り出した。
「エネルギー・フィールド。海岸線で計測したのよりずっと強い。同じ波形だ。……そして、周囲の熱源の規模も大きい」
ラピスの顔を見た。
「でも、不規則なのは同じだ。フィールドが安定しない原因がなにかあるんだ。さっきの、海岸のエネルギー・フィールドと同調してるのかもしれない。どうしてかわからないけど」
ダラムの指が、踊るように機械を操作する。
「よくわからんな。でも、βからは他にこんな波は出てないんだ。これだけが異質だ」
レンは、しばらく考えた。
「毛布に突き刺さったクリスタルのピンみたいってことかな」
ダラムが笑った。
「技術者と詩人が乗ってる歴史調査船なんて、これだけだろうな」