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⭐︎・2 レンとダラム

 レンは、学校の資料室で星系図のホログラムを表示していた。黒い円形のホロ・ビューローの上に、きらめく点が集合して回転する。


 宇宙はこんなに広い。しかも、これは僕たち人類が知っているうちの、わずかな部分にすぎない。

 ため息をついたとき、後ろから声をかけられた。

「なにやってるんだ」

 友人のダラムだった。なめらかな黒い肌を保つ、ほっそりした長身の少年だ。


「カイのこと、考えてたんだ」

 レンがそう言うと、ダラムはちょっと唇を引き締めた。

「カイか」

「カイが死んだなんて、信じられるか? あいつ、トラブルにあっても、なんとか笑うゆとりを見つけるやつだった」

 レンとダラム、そしてカイの三人は、フラムの学校へ来てから知り合い、意気投合したのだった。


「死んだとは決まってない。そんな証拠はないからね。保安部だって捜索はしてるさ」

「学生ひとりのことなんか……」

 レンが、ちょっと下を向いた。ややあって、続けた。

「カイは、厄介でかしの迷惑な学生だと思われてるんじゃないかな。保安部だって、ポムの状況や、移送禁止のことなんかをもっとオープンにするべきだったのに」

「そういうもんさ、公務員のやることって」

「ダラム、おまえって、時々本当に腹が立つ」

 ダラムは、牽制するように両手を上げた。

「それ、褒め言葉だよな。俺は社会の仕組みもわかる学生なんだ。わかるからって、あきらめてるわけじゃないんだぜ」

「僕も、保安部には時々行ってるんだ。カイのことを忘れさせないように」


 ふたりは、黙ってホログラムを見つめた。宇宙は広く、美しい。

「移送装置を使ってて、何もない虚空に放り出されるってこと、あるだろうか。エネルギーの波になったまま、実体化できないなんてこと……」

 レンが、つぶやくように言う。


 周辺の星のどこかにカイが現れたら、とっくに報告が来ているだろう。それがないっていうことは……。


 ダラムは口を開きかけ、それからやっぱり何も言わないことにした。あきらめているわけじゃないからだ。この次レンが保安部に行くときには、自分もいっしょに行ってみよう、と思った。

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