⭐︎・1 フラム保安局
「学生が行方不明?」
フラム十一区の保安部長、タリダ・セインは、眉をひそめて立ち上がった。
「移送装置の事故ですって?」
「正確には、そうではありません」
報告に来た保安部員が答える。
「動力システムの爆発によるあおりをくらったんです。部長もご存知でしょう、あの、警備主任の……」
タリダはうなずいた。
あの警備主任は保護されて、今は医療処置を受けている。ポムの被害は当初覚悟したよりはましで、星全体の機能がストップすることはなかった。
「動力は最優先で医療設備にまわされており、あのとき移送室にいた学生がフラムに戻らなかったことは、しばらく確認できていませんでした。安定した動力が供給できるまでは、ポムの移送センターは使えないと思った方がいい。修理のための機材と人員は、一番近いステーションから小型貨物船を使って直接輸送しなくてはならない。まだ時間がかかりそうです」
「そうね」
タリダは、もう一度椅子に腰をおろした。
時間がかかる。その間に失われる命もあるだろう。消えた学生の命は、今どこをさまよっている?
「学生の名は?」
保安部員は、メモリー・パッドを見た。
「カイ・クラーク・アズマです」




