天才魔術師、夢を語る
応接スペースへ移動すると前回と同じように二人掛けのソファーに座るよう伝えて簡易キッチンへと向かった。向かった先でお湯を沸かし、お茶をいれ双子が座ったソファーの向かいに座る。
「ん?そー言えばこの前は三人で来てたよな?もうひとりは? 」
「ニコラは今日バイトがあるそうです 」
「そうなんだ。で、話がしたいってどんなこと? 」
「今日、魔導具の授業受けてきました 」
「お、どうだった? 」
前回ルーカスに勧められた魔導具の授業に参加したのでその報告をする。
「初めて魔導具を作りましたわ 」
「今も最初の授業で魔導具作ってるんだ。今もルイーザ先生? 」
「はい、そうです 」
ルーカスはあの人元気?と言いながら懐かしそうな表情をする。彼が学院に通っていたのは既に十数年前の筈だが魔導具の教師はその頃と変わっていないようだ。
「今は何の魔導具作ってるの? 」
「光源の魔導具を作りましたわ 」
レティーツィアが答えると二人とも今日の授業で作った光源の魔導具を取り出した。魔導回路を描きやすいように少し大きめの作られているが充分持ち運びは可能な大きさのそれ。
「見ても良い? 」
「「はい 」」
「へぇー、上手く出来てんじゃん。ん、こっちも上手 」
ルーカスは二人が作った魔導具を順番に手に取り色々な角度から確認する。それはどちらも初めて作成した魔導具には思えない程上手に出来ていた。
回路も大きく歪むこと無く、線が重なってしまうこと無く、魔石もぐらつくこと無く、魔導具の基本をきっちりと押さえていた。
「二人とも魔導具製作の才能あるよ。
今回作ったのは基礎の魔導具だけどこれすら上手く作れない奴はいる。
何度も作って上手くいくのは珍しくないが初めから此処まで出来る奴はそーいない。
是非とも魔導具師を目指して欲しいもんだね 」
「「ありがとうございます! 」」
ルーカスの言葉にレオナルドとレティーツィアが視線を合わせ、直ぐにルーカスへと視線を向けるととても嬉しそうに破顔した。余程嬉しかったのかその頬は若干紅潮していた。
「因みに魔導具の授業は受けるの? 」
「はい、受けます 」
「私も受けます 」
「はは、嬉しいな。もし授業で分からないことがあれば聞きにおいで。
歓迎するよ 」
ルーカスは自分が勧めた授業を二人が取ってくれて嬉しいのか満々の笑みを浮かべてこれからも店に来るように勧めた。
「僕たち前回ここに来た日に色々な魔導具があることを知りました 」
「私たちの邸にも幾つもありました 」
「そうだろうね 」
ルーカスは二人が貴族であることを知っているので頷いた。
庶民にとっては手を出すことに躊躇するものであったとしても、貴族の邸には惜しみなく使われていることも珍しくはない。
「でももっと便利に改善出来そうなものがあったり 」
「こんなのがあったら便利になりそうなのにと言うものがありました 」
「僕たちが使うものじゃなくても使用人が働きやすい職場にしたいなと思いました 」
「使用人の仕事がより簡単に出来たら喜んでもらえるかなと思いました 」
レオナルドとレティーツィアは一生懸命自分たちの想いをルーカスに伝える。自分たちのためではなく自分たちの家族のためになる魔導具を作りたい、と。
「うん、良いと思うよ。君たちは家族想いの良い子たちだ。
家族のために作った魔導具がやがて街のため、国のために役立つようになる。
是非頑張って欲しい 」
ルーカスに認められて嬉しいとその表情が物語っていた。
大きな瞳をキラキラと輝かせた子供が二人。興奮冷めやらぬまま大きな声で宣言した。
「僕、」 「私 、」 「「魔導具師になる!! 」」
それは、小さな魔術師達の、とても大きな夢の始まり、はじまりーー……。
ちょっと中途半端ですが一度完結設定にさせていただきます。
再開するかは今のところ未定。