天才魔術師、適性検査に向かう
待ちに待った適性検査当日。
双子は朝からソワソワと落ち着きがなかった。
「レオ、やっとけんさのひだね 」
「レティ、やっとだね 」
ワクワクとしている天使な双子を微笑ましそうに見守るセラフィーニ侯爵夫妻と使用人達。
「ぼくたち、まじゅつつかえるかな……? 」
「きっとだいじょうぶよ!! 」
「うん、そうだといいね 」
「ねー 」
「さぁ、二人とも準備はいいかな? そろそろ出発するよ 」
馬車で向かうのは王城の敷地内にある王立研究所。適性検査の不正を防ぐ為、貴族は王立研究所、平民は魔術学院にて月に1度検査が行われる。
昔は街中の教会が検査を実施していたが、賄賂やら不正が横行して魔力暴走が頻発し、教会ではなく監査が入る研修所や学院で検査が行われるようになった。その頃は教会も権威を持っていたが今は見る影もなく、政教は完全に分離されている。
馬車から見えるのは貴族街の様々なお屋敷。どこまでも壁が続くかの様なとても大きなお屋敷から一区画に何軒か建っている区画。常に王都で暮らしているか、普段は領地で暮らしていて社交シーズンだけ王都に来るかの違いでも屋敷の大きさは変わってくる。勿論資産の違いも大きい。
王城に近いほど爵位が高く、離れるほど爵位が下がる。セラフィーニ侯爵家は王家の血を継ぐ公爵家を除くと最も王城に近い位置にその屋敷を構えている為王城までの道程はそう遠くはない。
研究所に入る門で一度止められ、御者と衛兵のやり取りが終わるとそのまま研究所までは馬車で向かう。子供達は初めて見る馬車からの景色に興味津々で、ジーッと小窓から外を見ていた。
「さぁ、到着だ 」
父の声に振り返った子供達の表情には、緊張と興奮が見えた。頬をほんのり桜色に染めてキラキラと輝くその瞳が曇らない事を両親はそっと願いながら共に馬車を降り、研究所の中へと足を踏み出した。