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双子の天才魔術師、魔導具師を目指す  作者: 夜宵
第三章 天才魔術師の三歩目
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天才魔術師、街に出る

 ニコラと共に昼食を食べに行くことを決めたレオナルドとレティーツィアは馬車止めに寄り御者に街に出ることを告げ、慌てる御者の返事を聞くことなく慌ただしくニコラの元へと戻ると元気良く街へと繰り出した。

 御者の慌てようを見ていたニコラは大丈夫かと御者と双子の間で何度か視線を往き来させたが、意気揚々と街に繰り出そうとしている二人に溜め息をひとつ溢して二人の後を追った。


「御者さん、めっちゃ慌ててなかった? 」


「そんな日もあるわ 」


「そうそう、そんな日もある 」


 苦笑しているニコラとは裏腹にレオナルドとレティーツィアは満面の笑みを浮かべていた。


「そんなことよりどこで食べるか決まってるの? 」


「そうよ、美味しいものが食べたいわ 」


 レオナルドとレティーツィアの興味は既に昼食に移っているようで、街の様子を物珍しそうにきょろきょろと眺めていた。入学式までの間で多少観光はしていても、移動は馬車で貴族向けの場所ばかり訪れていた二人には徒歩で歩き回るような庶民向けの街並みは見慣れないものに感じていた。


「うーん、俺もまだあんまり街中は歩き回ってないからなー……。

 取り敢えず食い物屋が集まってる辺りに行ってみるか? 」


「そうだね、楽しみだなー 」


「私は屋台に行ってみたいわ 」


「屋台? 」


 レティーツィアがキラキラと目を輝かせて好奇心に満ちた表情で自分の意見を述べる。思いがけない事を聞いたと言うように目を見開きニコラが驚いていた。


「そう、屋台。 行ったことが無いからどんなものかしらと思って 」


「屋台で買うのは良いけど、屋台だと食べる場所が無いから立ち食いだぞ?

 座るにしても公園とか広場のベンチになるけど…… 」


「良いじゃん屋台! 僕も初めて! 立ち食いでもいいよ、ね、レティ 」


「ええ、私が言い出した事だし気にしないわ 」


「なら良いけど……。 屋台ならこっちな 」


 ニコラの案内で屋台が並ぶ一画へ。広場になった場所の外縁に沿うように屋台が並んでいる。食べ物、飲み物、デザート。色々な屋台が並んでいた。昼時だからか人が多く、良い匂いがあちらこちらからしていた。


「ん~、美味しそうな匂い! 何を食べようかしら 」


「そういや金持ってんのか? 貴族は持ち歩かないイメージ! 」


「ちゃんと持ってきてるよ、ほら 」


 レオナルドが鞄から取り出したのは金貨が数枚。


「ちょ、馬鹿! こんな所でんな大金出すなよ! 」


 ニコラが慌ててレオナルドの手元を隠すように体を動かして、金貨を直ぐに鞄に突っ込む。キョロキョロと辺りを見回し、どこからか視線が向いてないかサッと確認して足早に場所を変える。

 慌てたニコラに対してレオナルドとレティーツィアは不思議そうに首を傾げていた。場所を変え、特に後を付けられたりしていない事を確認してニコラはホッと一息吐く。


「あのな、庶民にとっちゃ金貨は大金!

 そんなのを俺たちみたいな子供が持ってるなんて見せたら襲ってくれって言ってるようなもんなの。

 んな大金危ないから街中で出すんじゃねーよ 」


「そうなんだ……ごめん 」


 レオナルドはしょんぼりと肩を落とし、素直に謝った。レティーツィアも心なしかしょんぼりしていた。彼女が持っているのもレオナルドと同様金貨だった。

 二人の落胆ぶりにニコラは苦笑してレオナルドの頭をぐちゃぐちゃと撫でまわし、レティーツィアの頭を軽くぽんと叩く。


「知らなかったなら仕方ないだろ。 同じことしなきゃそれで良い 」


「うん、ニコラありがとう 」


 ニッコリと笑顔になったレオナルドの頭を軽く叩き、ニコラもつられたようにニッと明るい笑顔になった。


「まずは両替だな 」

次回更新

4月29日予定

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