天才魔術師、王立魔術学院に入学する
雲一つ無い青い空。空高く、二羽の鳥が音もなく飛んでいるのが見えた。目的があって飛んでいるのか、ただただ自由気ままに飛んでいるのか。寄り添って飛んでいた二羽の鳥はやがてその姿が見えないほど遠くへと羽ばたいて行ってしまった。
一台の馬車が学院の降車場に停まった。侍従が馬車の扉を開けると中からレオナルドが降りてきた。そのままレオナルドはレティーツィアが馬車から降りるのをエスコートし二人揃って目の前の学院を見上げていた。
とうとう二人が待ちに待った王立魔術学院の入学式がやってきたのだ。
クラス分けの試験で一度訪れてはいたが、今日から毎日通うのだと思うとドキドキと心臓が大きく脈打つのを感じた。入学式が始まる前にクラスを確認して教室に向かわなければならない。使用人が共に居られるのは此処まで。学院まで送ってくれた御者と侍従に行ってきますと声を揃えると行ってらっしゃいませと微笑まれた。
「レティ、行こう! 」
「ええ、そうね。 レオ、行きましょう 」
今日から二人の学院生活が始まる。レオナルドもレティーツィアも笑顔で校舎へと向かって足を踏み出した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
レオナルドとレティーツィアは学院都市ドクトリナでセラフィーニ侯爵家が借りた家に一週間程前に越してきていた。両親は二人と一緒に暮らしたがったが、毎日実家から通うには遠いし、ドクトリナから職場まで出勤するのにも無理があった為学院を卒業するまで別々に暮らすことで落ち着いた。
寮に入ることも考えたが、双子とはいえ寮だと男女で分けられ共に過ごせなくなってしまう為、それは寂しかろうと家を借りてくれた。それにともない二人と共に実家から使用人も何名か一緒に学院都市へと移り住むことになった。
学院都市の借家で双子の世話をする使用人全員を実家から連れ出してしまう訳にはいかず、事前に現地で使用人の募集をかけ、二人よりも先に出発し家を整えてもらっていた。
「今日から此処で暮らすんだね 」
「そうね。 二人で暮らすにしては大きいですわね 」
レオナルドは楽しそうに、レティーツィアは些か呆れ気味に父ベルナルドが用意した家を見上げた。流石に実家とは比べるべくもないが、邸宅の主人が二人だけとは思えないほどの大きさだった。
「それは、ほら、侯爵家の威厳とかじゃない? 」
「そうなのかしら? ただの過保護な気がしますわ 」
「あー……否定は出来ないかな 」
両親に溺愛されている自覚のある二人だった。
到着した翌日を除き入学式までの間、レオナルドとレティーツィアはこれから卒業まで暮らす事になった自宅を探検したり、ドクトリナを観光したり、授業に必要なものを揃えたり、魔術関連のものを見付け衝動買いしたりと楽しく過ごしていた。
到着翌日はクラス分けの試験のために学院へと出向き、同級生たちと共に試験を受けていた。その日は魔術の基礎知識と魔力操作の試験を受け、少しだけ学院内を散策してから自宅へと戻った。
流石に学院内どこでも歩けるわけではなかったので、少しだけしか散策は出来なかったがそれでも心惹かれるものは沢山あった。早く入学式にならないかなとレオナルドもレティーツィアも指折り数えていた。
次回更新
4月14日予定




